第二集 猫爪拳のタマ
泣くとスッキリしたのか、気持ちが前向きになってきた。
という事でカバン漁りを止め、少し森の中を歩いてみることにした。
サルが通っていった道は避け、別の道が続いていたのでそちらへ行ってみる。
「綺麗な森だなー。
そうだよ!
こんな森でかわいい動物達とお茶会をしたりしたかったんだ!
パンケーキなんか焼いちゃって、くまさんがはちみつをかけてくれちゃったりしてさー」
最早叶いそうに無い夢を、ボソボソと呟きながら歩く。
しばらく歩いたところで、道の真ん中に転がっている何やら白い物体に気がついた。
近づいてよく見てみるとそれは猫? いや、人?
簡単に言うと猫人間だった。
これまた道着を着て、うつ伏せに寝ている。
「サルの次はネコか」
さっきのサルはかなりサル感が強めだったが、このネコはヒト感が強い。
手とか足先は猫で肉球もちゃんとある。
所々もふもふだ。猫耳もだ。
でも腕とか太ももなんかはスラリとしている。
髪の毛も人間のものっぽい。
「う〜ん……」
ネコが寝返りをうつ。
仰向けになった顔を覗いてみると目がグルグルだ。
そして、肉球のついた大きな手でお腹を押さえている。
「これはもしやお腹が空いているのか?」
ちょうどよいと思い、カバンから獣総栄食を出す。
封を切って鼻先に近づけてみると目がカッと見開いた。
「ニャ!」
ネコは僕の手から獣総栄食を取ると、一心不乱に食べ続けた。
食べ終わったネコは驚いた表情をしている。
「何ニャこれは?
力が湧いてくるようだニャ。
ほんの少し食べただけニャのに……」
ネコは立ち上がり、自身の体をまじまじと眺めていたが、不意に我に帰ったようにハッした。
そしてこちらを向くと、握った拳と掌を顔の前で合わせて礼をした。
「助けていただき感謝するニャ。
お腹が減って死にそうだったニャ。
私は猫爪拳のタマ。
あなたは誰ニャ?
見たことの無い種族だニャ」
「僕はエノ。
種族は……えーと、ヒトです。
よろしく。
この辺には初めて来ました」
右手を差し出し握手を交わす。
肉球ともふもふの毛が気持ちいい。
「よろしくニャ、エノ! いい名前ニャ。
私は武獣家としての道を極めるために、修行の旅をしているニャ。
エノは旅人かニャ?
武獣家には見えないニャ」
どう答えれば良いのだろう?
神様と思わしき方に連れてこられたと正直に言う?
いや……多分だけどそれはマズそうな気がする。
「実は記憶がほとんど無くて……。
気がついたらこの森の近くにいたんだ」
旅人だなんて言っても、どうせ色々聞かれたらボロが出てしまう。
これなら嘘じゃ無いし大丈夫だ。
「記憶がニャい!
それは大変だニャ〜」
タマが心配そうな表情で見てくる。
疑ってるといった感じは無い。
とても優しい目をしている。
「それで戸惑っていたら大勢のサルに襲われて……」
「ニャンと!」
タマが今度は怪訝な顔をした。
「それは見間違いじゃニャいか?
ここはフェリダエ。ネコ科の国ニャ。
でもサルとネコを間違えるなんてニャいか……」
「うん。間違いなくサルだった。
タマのとは少し違うけど、似たような服を着てたよ」
そう言うとタマは考え込んで俯いていたが、何か思いついたのかパッと顔を上げた。
「フェリダエの隣、エープの国のサルたちは基本的には温和だと聞くニャ。
エープの国主が無駄な争いを嫌うかららしいニャ。
もし大勢のサルたちが入ってきてるとするニャら、エープで内乱があったか、それとも一部の流派が暴走してるかだニャ。
でも内乱ニャんて話は聞いて無……」
その時、僕らの前にあった草むらが不自然にガサガサと揺れた。
「見つけた〜」
そう言って草むらから現れたのは、さっきのサルたちだった。
読んでいただきありがとうございます。
もう一人の主人公、タマの登場でした。
次回はサルとの対決です。
よろしくお願いします。




