第十九集 タマはもう十六ニャ!
「シャア!」
「うきょ!」
豹猟拳の麓の広場で、チーターとサルの手合わせがそこかしこで行われていた。
素早さが特徴の豹猟拳と、独特な身のこなしの黒猩拳。
各地で白熱の攻防が繰り広げられていて、見てるだけでめちゃくちゃ面白かった。
「参ります」
「おう!」
ジーショウはリバに稽古をつけてもらっていた。
リバの動きは速すぎて、僕には何をしているのかほとんど分からなかったけど。
流石、"神速のリバ"だ。
「もっと感覚を磨けよ、ジーショウ。
アタシの動きを目で追おうたって無理があるぞ」
「はっ! ご指摘ありがとうございます」
タマはルートと手合わせしていた。
「タマさん、こんな短期間で随分腕を上げましたね!」
「アム様に見てもらっていたからニャ!」
タマはルートの大きな爪を自分の小さな爪で受け止めていた。
傍目で見てたら、サイズの違いで一気に持っていかれそうだけど、きっと獣力を使って凌いでいるんだろう。
休憩に入ると、リバがジーショウにタマの頼み事の件を話してくれた。
「なぁ、ジーショウ?
タマがさぁ、ゴウリの処に行きたいんだって。
悪いけどお前、案内してやってくれない?」
突然の依頼にジーショウが珍しく驚いていた。
「なんと!
タマちゃんがゴウリ様の下に?
タマちゃん、なにゆえ?」
「"ちゃん"はやめるニャ。
アム様に言われたニャ。
私が武獣家としてもっと成長するためには、ゴウリ様から指導を受けるのがいいって」
タマが説明すると、ジーショウは少し心配そうな顔をした。
「なるほど……。
案内は吝かではない。
ゴウリ様のいらっしゃる大猩拳の森は、エープの者なら誰でも知っているからな。
ただ、ゴウリ様は極度の面倒臭がり。
タマちゃんが行っても相手にしてもらえるかどうか……」
ジーショウの疑問には僕が答えた。
「アムさんが手紙を書いてくれたんだ。
それに……その……ジーショウさん達の事もあるから、断わらないだろうってアムさんが……」
当事者のジーショウに向かって、直接言うのは気が引けたので少し口籠ってしまった。
ジーショウはそんな僕を見て、軽く微笑みかけてくれた。
「エノ殿、どうかお気遣いなく。
拙者のせいではあるが、確かにエープの国主としてタマちゃんには借りがあるとも言えるな。
それにあのアム様からの助力も……」
ジーショウが顎に手を当てて考え込んでいたが、何かいい案が思いついたのか不意に顔を上げた。
「わかった。
ただ、拙者は案内は出来ない。
タマちゃんと一緒に旅をするなんて、ティグやタマギークの同士に申し訳ない。
代わりに適任の者がいる。
黒猩拳の里に戻ったら紹介しよう。
そこまでは我々と共に参ろう」
「おお! 助かるニャ!
ジーショウ、ありがとニャ!」
「ふっ、お安い御用ニャ」
「お前はサルだろ……」
リバが鋭くツッコミを入れる。
でも、一緒の旅は申し訳ないか……。
だとすると僕って大丈夫なのか?
「あのー、ジーショウさん。
僕、タマとずっと一緒に旅してるんですけど、それってタマギーク的には大丈夫なんですか?」
「エノ、何を真面目に聞いてるニャ……」
タマは呆れたように言うが、これは大事な問題だ。
タマギークと僕は敵対するつもりはないんだ。
「エノ殿は安パイだからな」
ジーショウはそう言ってニヤリと笑った。
確かにタマとは兄妹の様な、または親友の様な関係なので別にいいんだけど、"安パイ"って表現はなんかなー。
「エノとは姉弟みたいなもんニャ。
変な心配はいらニャいニャ」
ため息をつきながらタマが言う。
タマも同じように思っていてくれたみたいで素直に嬉しい。
ところで兄妹といえば、僕とタマってどっちが歳上だ?
この世界の人達は年齢なんか全然気にしないから、僕もすっかりその感覚に慣れてしまっていた。
「タマ、兄妹だったら僕が兄だよね?」
「なーに、寝言言ってるニャ。
私がお姉さんニャ。
私は十六歳ニャよ」
タマがエッヘンと胸を張る。
〈十六だったのか……思ったよりも歳下だった〉
「僕、二十六なんだけど……」
「ニャンとーー!!」
「なにー!!」
タマだけじゃなく、周りで僕らの会話を聞いていた全員が驚きの声を上げた。
そんなに見えないのだろうか……。
「二十六ってアタシより歳上じゃねーか!
アタシは二十四だぞ!」
リバがそう言うと、豹猟拳の人達も驚いていた。
「リバ様が二十四!?」
「いつの間にそんな大きくなられた!」
至るところで年齢論争が巻き起こっていた。
本当に年齢を確認する習慣が無いみたいだ。
「エノ、ホントかニャー?
あやしいニャ……。
記憶が無いのをいい事に適当に言ってニャいか?」
「ホントだって!
自分の年くらい覚えてるよ!」
タマが僕のことを、疑わしいといった目付きでジロジロ見てくる。
「まぁいいニャ。
年齢なんかどーでもいいニャ。
とにかく私がお姉さんニャ」
「そんな横暴な……
まぁ別にいいけどさ」
タマはこうなったら聞かない。
面倒だから僕が弟ということにして話を終わらせた。
そんな僕らの話を隣で聞いていたリバがスッと立ち上がる。
「なんだかもう、よくわかんねー話になってるけどよ。
とりあえずゴウリのとこまでの案内は大丈夫みてーだな!
じゃあ、休憩ももう十分だろ。
さっさと手合わせの続きやろーぜ!」
リバがそう言うと、そこにいた一同全員立ちあがり、リバに向かって抱拳礼をした。
「はっ!」
〈タマちゃんは十六歳。ティグに教えてやらねば……〉
謎の使命感に燃えるジーショウは、空を見上げると自らの拳をグッと握った。
読んでいただいてありがとうございます。
年齢が判明しました。
明日、次話投稿するつもりです。
新しいキャラクターが登場予定です。
よろしくお願いします。




