第十八集 黒猩拳ジーショウ、再び!
「うきょー!」
サル達の集団がこちらへ向かってくる。
どうやら豹猟拳と黒猩拳はあれから定期的に交流をしていて、今日がちょうどその日に当たるようだった。
「タマさんもエノさんも運がいい。
彼らに案内してもらえば、問題なく大猩拳の森まで行けるでしょう」
ルートがそう言って笑う。
確かに、エープを案内してもらうのに彼ら以上の存在はいない。
「止まれーい!」
集団の中程にいた、一際大きいサルが号令をかけると、サルの集団が道場のある丘の下で停止した。
号令をかけたサルは、イスの付いた手押し車に乗っていたが、何故かその上で腕を組んで立っている。
座れよ、とも思ったが、あの速さで移動する車の上で、立っていられるバランスの良さにも驚いた。
流石、武獣家って感じだ。
でもあの立ち姿、見覚えがある……。
「今回はまた随分大勢で来たなー
道場じゃ狭いから下でやるか」
リバが丘を駆け下りていく。
僕らもそれに続いた。
僕らが降りていくと、イスの上で立っていたサルがクルッと前方宙返りで出てきた。
そして、着地と同時に抱拳礼をする。
「リバ様、豹猟拳の皆様、本日も宜しくお願い致す」
「よー、ジーショウ!
今日はお前が大将か。
楽しくやろーぜ!」
でたー! ジーショウだー!
あの忍者みたいな格好、忘れもしない。
タマとジーショウとの激闘は、僕が武獣家の闘いにハマるきっかけにもなった試合だ。
ジーショウはリバへの挨拶に続いて、隣りにいたゲパ達にも抱拳礼をする。
「ゲパ殿、ルート殿、お世話になり……ん?」
「ジーショウ、久しぶりニャ」
タマが声をかけると、ジーショウは抱拳礼のまま固まった。
そうだ、ジーショウといえば虎皇拳のティグ同様、タマの大ファン、タマギークだったんだ。
「タ、タマちゃん……?
タ、タ、タマちゃーん!」
「ちゃん付けはやめるニャ!」
タマが怒ったように言うと、ジーショウはバンザイをしたままバク転をして、タマと距離を取る。
「怒られた!
やったー!
カワイイーー!!」
膝をつき、両手を上げてガッツポーズするジーショウ。
何故かその周りを、数名のサル達が踊りながらグルグルと回る。
「タマちゃん! カワイイ!
タマちゃん! カワイイ!」
もしかして、タマギークが増えたのか?
その様子を見て、リバが驚いていた。
「なんだなんだなんだー!?
ジーショウってあんな奴だったかー?」
困惑するリバにルートが説明をする。
「リバ様、ジーショウさんはタマさんと闘って以来、タマさんの大ファンなのです。
思いがけずタマさんに会い、少し冷静さを欠いているようです」
「大ファンー? タマの?
それにしてもちょっと熱が凄くねーか?」
「リバ様、ああいった者をギークと呼ぶそうです。
リバ様のギークもいずれ、いや、既に現れているかもしれません」
「ええ!
やだなー! マジかよ!」
ルートの説明を受け、リバはさらに困惑した様子だった。
ふと、ジーショウを見ると、額当ての様なものを外していた。
するとその下から、"タ♡マ"と書かれたハチマキが現れた。
流石、ジーショウ。
実行するとは恐るべき男だ。
「何ニャー、それは!
今すぐ外すニャー!」
タマはハチマキを見ると、焦ったように言った。
「タマちゃん、お言葉だが、これはもはや拙者の一部。
外すも何もないのだ」
腕を組み、横向きになってビシッと言い切るジーショウ。
よく見ると、道着の処々にも"タ♡マ"と縫い付けてあった。
「恥ずかしい真似するニャー!」
「恥ずかしくなどないぞ。
いずれこの道着が黒猩拳の正式な道着になる」
ジーショウは誇らしげに言うが、サル達は一部を除き、イヤイヤと首を振っていた。
「やめるニャー!」
〈流石にそれは無いよな……〉
豹猟拳のみんなは、タマとジーショウのやり取りを呆れて見ていた。
「なぁ、さっさとやろーぜ……」
リバがみんなの意見を代表して言ってくれた。
読んでいただきありがとうございます。
ちょっと短めでした。
次回は手合わせです。
これからもよろしくお願いします。




