第一集 異世界転移
初連載作品です。
よろしくお願いします。
気が付くと見覚えの無い場所に立っていた。
少し離れた所に、猿のような格好をした人達が大勢集まっている。
クリクリの目がかわいい。
何がなんだか分からないけど、とりあえず挨拶してみるか……。
「何だ〜」
「急に現れやがったぞ〜」
「変な格好〜」
猿っぽい人達はそう言って、こちらに迫ってきた。
「な?!」
反射的に逃げだす。
幸いなのは、その見た目に反して動きがスローな事だ。
スピードで負ける事は無さそう。
体力が尽きなければ。
「体力に自信は無いんだけど……」
息が少し苦しくなってきた。
でも待てよ、何も取って食おうとしている訳じゃないかもしれない。
「もしかして友好関係を……」
そう思って走るスピードを緩めたところに、すかさず何やら透明な液体が飛んできた
足元に生えていた草が、ジュ~っと音をたてて溶けた。
「毒ー!」
再びスピードを上げる。
すると、前方に森のようなものが見えたきた。
あそこに入れば身を隠す場所があるかもしれない。
少しだけ気が楽になる。
でも、僕は何故こんな目にあっているんだ?
〈もしかして、ここが動物だけの世界なのか?!
確かに僕は望んだ。望んだけど……〉
「思ってたのと違ーーう!!」
そう叫んで森に飛び込んだ。
■
人間関係に疲れていた。
後輩からはナメられ、同期にはマウントを取られる。
先輩からは的外れなアドバイス。
上司からはプレッシャーだ。
「はー、しんどい……」
お酒も飲めない。
友だちも彼女も当然いない。
家族とも疎遠。
ストレスは溜まる一方だった。
唯一の救いは猫カフェだった。
「はぁ〜、癒やされる……」
「お疲れの様ですね」
膝に乗ってきた猫をモフモフしていると、不意に店員に話しかけられた。
見たことのない店員だった。
「はぁ、仕事が上手くいかず……。
この子達だけが味方です」
店員は柔らかな笑顔で頷く。
「猫、お好きなんですね。
他の動物もお好きですか?」
「大好きです!
もしも動物だけの世界があったらって、いつも妄想しています。
はは……バカですよね」
自虐的に苦笑いで言うと、それを打ち消すように店員はニッコリと微笑んだ。
「ありますよ。動物だけの世界。
行きたいですか?
本当に心の底から望むなら、連れて行ってあげますよ」
からかっているのかと思ったが、真剣な声のトーンにつられて、つい熱っぽく答えてしまった。
「行きたいです! ホントにホントです!
今すぐにでも飛んで行きたいです!」
「どうやら本気の様ですね」
店員がそう言った瞬間、猫カフェの中から二人の人間が姿を消した。
大勢の客と猫で賑わう店内で、その事に気がついた人は誰もいなかった。
■
森へ入り少し行くと、剥き出しの大木の根が庇の様になっている場所があった。
そこへ隠れる。
しばらくすると、猿のような生き物がノロノロと通り過ぎていった。
「ふぅ~。何なんだ、一体……」
見つからないように、出来るだけ小さくなりながら一息つく。
そういえばあの店員は何処に行った?
「あの人、何者だったんだ?」
動物だけの世界に連れて行くと言い、是非にとお願いしたら、次の瞬間には猫カフェに居たはずが謎の大地。
そして謎の生物。
おとぎ話の世界だ。
〈夢でも見ているのかな……?〉
流石に頬は抓らない。
その代わりという訳ではないが、自分の体をまじまじと見てみる。
見慣れない白い布がマントの様に体に巻き付けてある。
頭にこそ何も巻いていないが、まるで砂漠の旅人のようだ。
「あの頭に巻くやつ何だっけ?
あれ? 何だ? 上手く思い出せないな……」
あの猫カフェでの出来事ははっきりと覚えているが、それ以前の事が全然思い出せない。
〈もしかして記憶が無くなってる?〉
ショックを受け肩を落とすと、その拍子に肩からカバンがずり落ちた。
その時初めてカバンを掛けていたことに気がついた。
早速、中を見てみる。
最初に目についたのは手紙だった。
差出人は……神?!
開いてみるとまっさらな紙面に一言だけ書いてあった。
『ファイト!』
「中○みゆきか!!」
破りそうになったけど何とか留まった。
〈いま、一瞬だけ記憶が?!〉
しかし、それ以外は思い出せない。
刺激を受けると、それに関連するものが単発的に思い出されるのか?
新たな可能性に気がつき、少しホッとする。
落ち着いたからか、手紙が二枚重なっていた事に気がついた。
二枚目も読んでみる。
『あなたはこの動物だけの世界で唯一のヒトです。
猫カフェは無いですが、頑張って生き抜いてください。
必要なもの、便利なもの、色々カバンの中に詰め込んでおきました。
言葉も分かるようにしておきました。ご安心を』
やはりここが動物だけの世界なのか。
となると、あの猫カフェの店員がこの世界の神様?!
今度は頬を抓っておいた。
「痛い……」
それにしても、神様はなぜ僕などをこの世界に連れてきたのか?
確かに僕は望んだけど……。
神様側に何かメリットは有るのか?
ただの道楽か?
考え込むが一向に答えは出ないので、とりあえずカバンの中を漁ってみる事にした。
次に見つけたのは、硬貨がたくさん入っている袋だった。
着替えも一式見つかった。
それらに続いて出てきたのは、細長い小さな袋だった。
なんとなく見覚えの有る形だ。
「獣総栄食?」
よく見ると"獣用総合栄養食"だった。
カバンの中にはそれが大量に入っていた。
総合栄養食か。
住人たちにあげると喜ばれるだろうか?
「もし会ったら、お近づきの印に渡してみよう」
カバン漁りを続ける。
次に出てきたのは、『武獣流派大全』と書かれた分厚い本だ。
パラパラと捲ると白紙のページが多かった。
とりあえず目についたページを読む。
『超獣拳
超獣拳は他に類を見ない、身体の特徴を活かして闘う流派です……』
これは拳法の流派をまとめた本みたいだ。
でも武術ならぬ武獣?!
「そういえば、さっき追いかけてきた猿っぽい人達も、道着みたいなのを着てたような……」
動物だけの世界って。
もしかして、動物たちが武で大陸の覇を競い合う世界!?
「やっぱり、思ってたのと違ーーーう!!」
思わずその場に突っ伏して泣いた。
読んでいただきありがとうございます。
出来るだけ毎日更新したいと思っています。
よろしくお願いします。




