褒賞
さてシーチキンを二人で乱獲してから、暫くたったある日。
レジウスの下に帝からの使者が訪れた。
小さな家があるだけのクローム子爵邸に戸惑った使者。
普通騎士爵だったとしても、もっと大きな家に住んでいるはずなのだが、これでは少し裕福な農民と変わらない。
そして普通ならば、応接室などで帝からの御言葉を片膝突いて聞き入れるものだが、レジウスの家に応接室など無い。
仕方なく子爵家の玄関で行われる事になった。
要件はと言うと、
「レジウス・フォン・クローム子爵へ褒賞としてラーナ国金山の権利を与える。金山の管理運営をしていた元伯爵家の人員は全て退去済みなので、管理するように」
とのお言葉であった。
レジウスはリーナとデイルにタッカーを連れてラーナ国入りするハメになる。
ザックに馬車を引かせ、一応従士のタッカーとデイルも使役魔物の背に乗り、ラーナ国の元バカ伯爵の領地に向かい三日後に到着した。
ここで、元バカ伯爵家の生き残りと出くわすことになる。
バカ伯爵家の者達は成人していた人は全て死罪。
まあ、帝の命を公の場で狙ったので当然だろう。
そして未成年者たちは、貴族籍から抹消した上で1人金貨1枚だけ渡されて平民落ちとなったのだ。
金貨1枚有れば農民なら4ヶ月は暮らせるし、その間に生活基盤を整えれば生きていけるだろうとの判断なのだが、この者達は生活基盤を整える事より、レジウスを亡き者にするために金貨を使った。
つまり待ち伏せによる襲撃だ。
おそらく元貴族だったであろう、13歳くらいの男子を筆頭に、その後ろに年端もいかない男児や女児、そしてその後ろに金で雇われたのか、ゴロツキが十数人。
「何故俺がここを渡されたと知った?」
レジウスの言葉に、
「さる高貴なお方が教えて下さったのだ。しかもお前を殺せば新たに爵位も下さるとな!」
そう言ったバカ伯爵家の生き残りは、やはりバカなのだろう。
爵位を云々となると、ラーナ国の王族以外にあり得ないのだが。
「へぇ。殺すって言うって事は、やり返される覚悟はあるんだよな?」
「この人数を相手にか? たった四人、しかも一人は女。こちらは20人だぞ? 勝負は目に見えているだろう! その女を奴隷としてこちらに渡して金山の権利をこちらに渡せば命は助けてやるぞ?」
「寝言は寝てから言え! タッカー、デイル、人を殺す事に忌避は?」
「さすがに10にも満たない女子を殺すのは、少し嫌だなぁ」
「んだなぁ」
「じゃあゴロツキだけ頼む」
「レジウス、私は?」
「リーナは手を出すな。万が一にも俺たちの間を抜けてゴロツキがリーナの前まで辿り着く事はないから」
「はーい」
「さて……死ね!」
その言葉と同時にレジウスが元貴族の少年に迫ると、瞬く間に少年の首を刎ねた。
首から吹き出る血潮が、その背後に居た子供達の体を血の色で染めた。
悲鳴をあげる女児達は無視して、武器を持っている少年だけにレジウスは攻撃した。
武器を持つその手首から先を斬り飛ばしたのだ。
恐れをなして地面に倒れた男児達は、さすがにレジウスも見逃したが。
そうこうしている間にタッカーとデイルはゴロツキを倒していく。
レジウスもそれに加わる。
わずか五分。
レジウス達が襲撃者達を無効化するまでの時間だった。
「まだやるなら次は命は無いぞ?」
レジウスが殺気を放ちながら、まだ生きている子供に向かって言い放つと、子供達は脱兎の如く逃げていった。
ようやく金山の事に意識を向けたレジウス。
「タッカーとデイルはこの入り口で誰も入らないように見張ってて」
「レジウスはどうするだ?」
「俺一人で金を取り尽くしてくるよ」
「一人でか?」
「俺の収納があれば余裕だぜ?」
そう言ってレジウスは見えている山を丸ごと収納した。
「ある意味裏技よねぇ」
と、リーナは呆れるか、タッカーとデイルは苦笑いだ。
レジウスは収納した山から金属だけを亜空間の中で選別して、他の岩や土に木などは、別の場所に排出する。
それを繰り返して、収納魔法で金をどんどん取り尽くしていくレジウス。
およそ2日で金山の金を取り尽くした。
何せ山を掘るのも金を選り分けるのも山やその地下ごと全部収納してしまえばあとは自動で分けられるので、あとは要らない土や岩を元山の跡地に捨てるだけなのだから。
つまり長年かけて掘る必要がないのだ。




