はじまりは?
さて、そんなこんなで翌日の早朝。
レジウスはザックに馬車というか荷車というかを引かせている。
何故ならレジウスだけではなくリーナも当事者として呼ばれることになったからだ。
帝からの命令なので断る訳にもいかず、リーナはその場に父親が居ないことを願っていたが、国の重鎮なので居ない訳がない。
都に入ってから真っ直ぐ宮殿に向かった2人は、宮殿の門で見知った顔を見つけた。
「ジン兄久しぶり!」
そう、騎士爵を得て国軍に入隊したレジウスの乳兄弟のジンだ。
「よう! 詳しくは知らないが今日の催しはレジウスがやらかした件らしいな」
「ブタに絡まれてねぇ」
「リーナ様、こんな男ですが手綱をしっかり引いてくださいませ」
ジンがそう言って荷台に座るリーナに深々と頭を下げる。
おそらくレナードから既に聞いたのだろう。
「任せて」
そう言ってリーナが笑う。
「どうせレジウスが勝つんだろうけど、あまり人に迷惑かけないようにな」
そう言いながらジンが門を開けてレジウス達を通す。
「適当に揶揄ってくるよ」
レジウスが笑ってジンにウインクした。
さて時は進んで催しが開催される運びとなる。
場所は宮殿内のダンスホール。
普段なら楽団が演奏して貴族達がダンスをしたり、話に華を咲かせる場所であるはすが、今は正面に玉座が運び込まれ、左右には参列者達のために椅子が並べられている。
既に参列者達は席に座っており、玉座の前には膝を突き頭を下げているレジウスにリーナ、それと馬鹿1人……
「陛下の御成!」
その言葉と同時に参列者達も席から立ち上がり、跪いて頭を下げる。それを確認したかのように扉が開かれ、帝がゆっくり歩いて入室する。
玉座に座った帝が、
「皆の者楽にせよ」
と言葉を発すると、跪いていた参列者が立ち上がってから席に座る。
その時ブタの首が少し動いた。
当事者はまだ動いてはならないのだが、新伯爵なので作法を知らないのかもしれないが、普通ならば教えられているはずなのだが。
隣の2人をチラッと見たからか、顔を上げるような事をしなかったのが救いかもしれない。
「さて、本日、余の提案に集まってもらったのは他でもない。ラーナ国の新伯爵から我が国の者を罰して欲しいと嘆願されたので、当事者を呼び出した。この場で審議をしたいと思う。さて当事者は面を上げよ」
そう言われて3人が顔を上げる。
「レジウス、今はレジウス・フォン・クローム準男爵だったな。久しぶりよのぉ」
「はっ! 陛下の御尊顔を拝見出来て至極恐悦に御座います」
そう言ったレジウスの言葉はまともだが、口調がどうにもオカシイ。どこか笑いを噛み殺してるような雰囲気すらある。
それを気にした様子もなく、
「隣にいるのはリーナか……昨日までお主の父親があちこち探してあったようだが、まさかレジウスの所にいたとはのぅ」
とリーナに声をかける帝。
「陛下、お久しぶりにございます。父に出ていけと言われましたもので、唯一信頼できるレジウスの所に身を寄せておりました」
「なるほどなぁ。で、リーナはこの件にどう絡んでおる?」
「はい。先日、横にウージ領をレジウスと移動中に、とある貴族の方からレジウスの使役しているブラックウルフドラゴンと私の身柄を寄越せと言われまして」
「ほう。このように申しておるが、伯爵の言い分はどうなっておるのかの?」
「陛下、ワタクシはラーナ国の誇り高き伯爵であります。この小娘の戯言は真っ赤な嘘です。私はこの小僧にいきなり襲われたのです。こんな小娘の身柄を欲するような下賎な真似は致しません。信じてください」
そう声を荒げたバカな伯爵。
サンライト皇国ではこのような場では真実の水晶が使われるのは、皇国貴族ならば周知の事実なのだが、他国、それも新伯爵では、その事を知らなかったようだ。
まあ、園遊会で帝に直訴するような愚か者など、前代未聞なので仕方ないのかもしれないが。




