謎の
さて一行はオーグラ沼のほとりに移動した。
「先ずは川からの流入口を止めないとな」
と言ってレジウスは亜空間から山頂にあった大岩を、川と沼を分断するように、ドシンと放り出した。
「で、これだけだとまだまだ水が流れ込むからその周りに大きめの石を出して……で、小石で石の隙間を埋めるようにして……沼側に土をドンっと。こんなもんか?」
そう言って一仕事終えたレジウスが爽やかな笑顔で後ろを振り向くと、
「……」
皆が唖然としていた。
「ん?」
と声を漏らしたレジウスに、
「こうもアッサリ水口を止められるものなのか?」
と、レナードが聞くと、
「材料さえあれば」
「この後、山の土を沼に放り込むのか?」
「それだと時間かかるでしょうし、水竜をぶっ殺すのにもやりにくいでしょうに」
「ではどうするのだ?」
「水を収納して川に流すんですよ。ですから水竜が水中を逃げ回ることはないから、狩放題ですよ! 儲かりますね!」
「まて! この沼の水全部収納できるのか?」
「土が亜空間に大量にあるので、どれくらい収納できるかわかりませんけど、何回かに分ければ余裕ですよ」
「なんかお前、何でもありだな」
「水竜を狩る兵士を呼んで来てくださいね」
「分かった」
レナードが慌てて指示を出している中、レジウスは水抜き作業を開始する。
ある程度水が抜かれると、急ぎ連れてこられた領兵を交えて水竜狩りが始まる。
タッカーとデイルはレジウスと三人で嬉々として水竜を殺していくが、領兵たちは十人一組で鬼気迫る表情で水竜退治に挑んでいる。
温度差がやばいがいつもの事だ。
数日で水竜を退治し終えると、あちこちに残る水溜まりには大量の魚がぴちぴちと飛沫を上げていた。
「魚やエビが取り放題だってよ!」
「マジ?」
「デカイのは漁師達がひたすら銛で獲ってるけど、小さいやつなら俺たちも獲っていいってよ」
「桶持っていこうぜ!」
領兵には良い小遣い稼ぎになったようだ。
さらに2日後。
「あらかたの魚やエビなんかは獲り終わったようですね」
レジウスは水竜が居なくなった元沼を眺めていた。
「これで埋立開始か?」
レナードの問いかけに、
「いえ、先に用水路の位置を決めて、板でもブッ刺して作ってください。そのあと埋めたほうが用水路掘る手間が省けるでしょう?」
「なるほど! 水を抜いた時に板を用意しておけと言ってたのはこのためか! 急ぎ用意させる!」
哀れな領軍は、沼の跡地に板を打ち付ける作業を強いられた。
3日後。
「では、続きを頼む」
レナードの指示により、レジウスが仕事を開始する。
「では石を出しますので、領兵や漁師達に運ばせて下さい」
と言って、大量の石の山が現れた。
「おい! コレを沼地に撒いてくれ」
「次は砂を。これも真ん中で出した方が良いのかな?」
レジウスの問いに、
「いや、端から整えていくからココでよい」
と答えたレナード。
「分かりました父上」
「一気に出すなよ? 小分けに数ヵ所に出してくれ」
「分かってますよ」
と言って砂の小山を何箇所か作るレジウス。
「レジウス、多分数日かかるから今日はもういいぞ」
「分かりました。土が必要になったら呼んでください」
そう言ってレジウスが帰ろうとした時、とある人物を見つけた。
「お前何やってんの?」
と声をかけるレジウスに、
「謎の皇太子だ」
と言ったイケメン。
「皇太子って言う時点で謎じゃねーじゃん」
そう、この国の皇太子にして、レジウスの同級生でもある、レオナルド皇太子である。
白い頭髪に赤い瞳は紛れもない帝の血筋である。
「うるさいレジウス! 沼の干拓事業などそうそうないから、見学に来たのだ」
「相変わらず真面目だねぇ」
「私にそんな口聞くのはお前だけだぞ?」
「同級生なんだし別にいいじゃん」
「他の貴族の前ではちゃんとしろよ?」
「他の貴族が居る場所なんて行かねえよ」
「いや、春の園遊会があるだろ」
春の園遊会とは、サンライト皇国貴族当主が全員集まるのが原則であり、騎士爵や準男爵も出席する事になっている。
園遊会は秋もあるが、これはウエストサンライト帝国の国王や上級貴族が集まる園遊会である。
「欠席で!」
「お前、準男爵とはいえ貴族当主になったのだろう! 無理だ!」
「ちぇっ」
レジウスが残念そうな顔をして、
「じゃあな」
と去っていくのを、皇太子は呆れて見送るのだった。




