判決
「レジウス、認識阻害の指輪とやらの効果は絶大だな。さすがブラックパイン男爵家出身だな、良い物を持っている。とりあえず先に返しておくぞ。さて先日、レジウスから報告を受けて内密に調査しておったがウィンクル伯爵、おぬし、私の知らぬ裁判をいくつか執り行っておるな?」
そう言いながら傍聴席からレジウスのもとに向かい、指輪を手渡したアームストロング侯爵。
年齢は55歳だが、もう少し若く見えるその顔には威厳が溢れる。
どこかの軍人と言ったほうが納得できそうであるが、サンライト皇国の良心とも言われ、まさしく公平に裁判を執り行う事で定評がある。
また、皇国七家に名を連ねる人物だ。
「いえ、私はそんな裁判など」
そう言い訳するウィンクル司法次官だったが、
「黙れ! 既に調べはついておる! 証拠も押さえた! 帝にも報告済みである!」
「そんな……」
「自分の派閥の者から依頼が有れば、有料で不当裁判を繰り返していたようだが、もはや言い逃れはできんぞ。今この目でも見た事だしな。覚悟しろ」
「くっ、もはやこれまでか……アームストロング侯爵は突然御乱心なされた。者ども不本意ではあるが、暴れまわるアームストロング侯爵を取り押さえろ。お前達もだ! 不慮の事故で床に倒れた時に打ち所が悪かっただけだ!」
傍聴席で未だ唖然とする者達にも、そう言って指示を出すウィンクル司法次官だったが、
「開き直ったか……レジウス、連絡を」
アームストロング侯爵が言うと、
「既に入れてあります」
とレジウスが言った言葉に、
「連絡?」
と疑問を浮かべたウィンクル司法次官。
「私はブラックパイン家出身ですよ? 闇魔法の適性が高くない為家を出ましたが、全く使えない訳ではないんですよね。闇魔法の使い手同士での連絡ぐらい出来ます。闇伝達と言うんですけどね。あ、到着しましたよ、アームストロング侯爵閣下。兄さんいいよ」
レジウスがそう言うが早いかどうかで、法廷のドアが乱暴に開けられ、
「総員そのまま! 近衛騎士団団長、グレハム・レッドパイン・ケースリバーである! 動いた者は有無を言わさず攻撃する!」
と言ったのは、レッドパイン伯爵家の次期当主であり、リーナの兄でもある男だ。
年齢は30歳とリーナとはかなりの年の差があるが。なおグレハムとリーナの間にまだ2人の子がいる。
グレハムの後からも、続々と金属鎧を着込んだ騎士達が入ってくる。
「グレハム兄さん、タイミングバッチリ」
「おうレジウス。当たり前だろ」
「近衛……」
そう言葉を漏らしたウィンクル伯爵は、その場で崩れるように膝を付いた。
その後、すぐにアームストロング司法長官を裁判長とし、他にも裁判官を二人呼び、タッカーとデイルも現れ、レジウスの無実が証明されると、そのまま、この裁判に関わったネビル男爵家とウィンクル伯爵家は、アームストロング侯爵が裁きを下した。
ウィンクル伯爵家は当主交代で前当主は市中引き回しの上、公開斬首となり、家は帝の許可の下、男爵へと格下げとなり、罰金に加えこれまで不当に裁いた者への慰謝料の支払いを課せられ、支払いの為に借金を背負い、領地運営に支障をきたす懸念が有ると認定され、領地の没収を通告された。
ネビル男爵家は、当主は引退で次期当主予定のケニーが当主になった。
爵位は男爵のままだが、親と弟の件で金貨100枚の罰金が課せられたが、ケニーがあの場で中立宣言をしていなければ、爵位の剥奪もあり得たであろう。
そして、魔法が使えぬジェームスは貴族籍から抜かれて平民になり、未成人のため減刑されはしたが、犯罪奴隷として5年の刑が言い渡され、鉱山送りが決定した。
他にもウィンクルに不当裁判を依頼していた貴族達は、格下げや罰金に領地没収、当主交代が相次いだ。
そしてレジウスは……
「めっちゃ儲かった〜」
慰謝料という名目で貰った、大量の金貨を目の前に広げて、高笑いしていたという。




