家の改装と
都を後にし、ウージ領まで戻った三人。
タッカーとデイルの二人と、ウージ領の冒険者ギルドで別れたレジウスは、ボロボロの自宅に帰宅し、買った時から考えていた自宅の改良をする事に決めた。
何せ元はボロ家だったので、所々痛んでいたのだ。今は夏だし良いが隙間風が多くて冬ならば凍えるかもしれない。
という事で、あちこち出掛けては買い物をし、都に再び足を運び役所になども出向き、改築の申請やら用事を済ませ、外も中も板を張り替えた後、大量に購入してきたレンガとモルタルで家の外側に積み上げる。
厩舎も棟続きになり入口を大きめに。
入ってすぐは広めの玄関ホールになっており、そこから居住空間と厩舎へ分ける事にした。
コレで雨の日でもブウドの世話が楽になると、一人満足気に笑ったのだった。
そして出来上がったのは、真上から見ると六角形の建物。
「六角館と名付けよう!」
満足気なレジウスが、腰に手を当て外観を眺めながら微笑む。
レジウスは出来上がった家の中で、早速オークの肉に金串を刺し、釜戸の火で直火で焼き出し、自宅なのにバーベキューを楽しむのだった。
それから数日後、レジウスはまだ寝ているが、時刻は正午過ぎ。
レジウスの自宅を取り囲む兵士達。
ウージ領の兵士では無い。
いや、ウージの兵士達もレジウス宅を取り囲んだ兵士達を監視するように、その周りを取り囲んではいるのだが。
「レジウス・フォン・クローム! ネビル男爵家からの告発により司法庁から呼び出しである。大人しく出廷せよ!」
玄関前で大声で叫ぶ兵士。
玄関から出てきたレジウスの顔は、不機嫌そのもの。
寝ていたところを大声で起こされ、かなりイラついていたレジウスは、
「貴様ら、俺の安眠を妨害した罪は万死に値するが、覚悟できてんだろうな?」
玄関扉から顔だけ出して、兵士を睨みつけながらそう言う。
「我らは職務を遂行しただけである。全ては法廷で話されよ」
と、兵士が毅然とした態度で言い放つ。
「えっと、ネビル男爵家とか言ったか?」
「貴殿は、ネビル男爵家から告発されておる」
「告発内容は?」
「ネビル男爵家次男に不当に危害を加え、ネビル男爵家を侮辱したとの事である」
「ふーん。あの盗っ人め、白々しい告発しやがって。いいだろう。えっとその安物の馬車に乗ればいいのか?」
「そのとおり」
「着替えてくるから、少し待て」
「逃亡などされませんように」
「逃げるわけねーだろ。ネビルのとこのバカガキをとっちめるチャンスなんだし。あと証人として、ウージ領冒険者のデイルとタッカーの二人を申請する」
レジウスは確かにそう言った。
場所は都にある貴族法廷。
貴族を裁くためにある裁判所である。
何故か原告側傍聴席には大勢の人が居るが、被告側には誰もいない。
証人申請したはずのタッカーとデイルの姿もない。
原告席に座るジェームスの横に、ジェームスにそっくりな中年男性の姿がある。
父親のジャック・フォン・ネビル・トウワである。
さらにその横に、レジウスは見覚えのある男の顔を見つけ、
「よう、ケニー」
と手を挙げて声をかけた。
「レジウスという名を聞いてもしやと思ったが、やはりお前か。クローム家など聞いた事無かったが成人したのかって、そりゃそうだよな。私も成人したのだから」
ケニーと呼ばれたレジウスと同年代の男。
貴族学院でレジウスと同級生だった、ケニー・ネビル・トウワだ。
「そういう事。俺を敵に回した事、あとで後悔しろよ」
ニヤッと笑ってレジウスを見て、ケニーは額から汗を流す。
「レジウス、勝てる見込みはあるのか?」
ケニーがレジウスに聞いたのだが、
「ケニー、お前には借りが二つあったっけ?」
と、質問には答えず質問で返したレジウス。
「貸しなどあったか?」
「学院の頃、昼飯代忘れた俺に貸してくれたことがあったろう?」
「アレはすぐに金を返してもらったが?」
「それでも借りは借りだ。なので一つ返しとくわ。勝てる見込みがなければ、大人しくここには来ていない。意味はわかるな?」
レジウスはそう言ってニヤリと笑う。
その顔を見たケニーは、
「裁判長、私、ケニー・ネビル・トウワは、今回の裁判を中立での傍聴とさせていただきたく思います」
法廷の正面、高い位置に座っていた男に声をかけた。
「兄上?」
ジェームスはケニーに顔を向け、何故そんなことを言い出すのかと、不満の声を漏らし、
「ケニー! 何を言い出すんだ!」
と、ジャックはケニーを叱責する。
「いい判断だケニー」
レジウスが小さく呟き、
「ケニー殿、真意は?」
と、正面に座る男がケニーの発言の真意を問う。
「弟の言い分に疑問が出て参りましたので」
「……遺憾ではあるが許可する」
そう言われたケニーは、原告側の席から立ち上がり、中央の傍聴席に移動する。
「兄上は私が嘘を言っているというのですか!」
先を移ったケニーに対して、不満を漏らしたジェームスだったが、
「ジェームスよ、レジウスはな……負ける勝負はしないヤツなんだよ」
ケニーは、そう言ってジェームスの顔に、冷たい視線を送るのだった。




