寝言は
その後、都の冒険者ギルドに向かったレジウスは、受付カウンターに依頼を受けていた手紙を二通届けて銅貨10枚を受け取り、手続きを済ませて酒を飲んで待っていたタッカーとデイルに合流し、報酬を分けあった。
そしてギルドから出たところで、冒険者ギルドの厩舎の前でザックの手綱を手に取り、引っ張って行こうとしている輩を発見。
少年が一人と、護衛の部下と思われる男が四人である。
「テメェ、俺のザックに何してやがる」
レジウスがその男を睨みながら声をかける。
「レジウスの使役魔物を盗もうとか、コイツ正気か?」
タッカーが自分の頭を指さしながら、呆れた声を漏らす。
「このブラックウルフドラゴンは貴様の使役魔物か? 私が貰ってやるから有り難く思え平民」
少年は、何故か偉そうな態度で、レジウスにそう言う。
平民は都の中に魔物を連れ込めないという決まりすら、この少年は知らないのだろうか。
「ふざけんな!」
少年にアイアンクローをかますレジウス。
護衛達がレジウスの手から少年を救出しようと、一斉にレジウスを取り囲んだのだが、タッカーとデイルが一瞬で護衛二人に拳を叩き込む形で、意識を刈りとる。
それを見た残り二人の動きが止まる。
「アガガガガッ! 貴様! 手を離せっ! 下郎が! 私はネビル男爵家のジェームス・ネビル・トウワだぞ!」
少年がそう言うとレジウスが、
「ネビル? ああ、貧乏ネビル男爵家か」
「貴様っ! 我が家を愚弄したな! 死罪だぞ平民が!」
「平民平民ってうるせえなぁ。俺は貴族だ」
「なに? 冒険者風情が貴族を騙るのは重罪だぞ!」
「ほれ、貴族の短剣だ! よーく見ろ! だいたい貴族じゃなければ魔物を連れて都に入れねぇだろうが! それにネビルの次期当主予定は、確かケニーだったと記憶しているが、お前、ジェームスっつったか? ケニーの弟かなんかか?」
「ケニーは兄だ! ていうかいい加減手を離せ! 頭が割れるっ!」
レジウスのアイアンクローは、未だ継続中であった。
「ケニーの弟か。兄貴は堅物だが話の通じる男だったが、弟は盗っ人とはなぁ。親の教育が弟に甘いとかロクな家じゃねーな」
「愚弄するな! あんな融通の効かない兄より私の方が領主に相応しいのだ! なのでそのブラックウルフドラゴンで兄を亡き者に……おっと口が滑った。それよりも貴様、名を名乗れ!」
「おいレジウス、コイツ碌でもない事漏らしたぞ?」
タッカーがレジウスの方を見てそう言う。
レジウスは一応、
「レジウス・フォン・クローム」
と名乗った。
「クロームなど聞いたこともないわ!」
「そりゃそうだろうな。今日登録したばかりだからな」
「ふん! どうせ平民上がりの騎士爵かなにかだろうが、領地無しの一代貴族が、我が家に逆らった事を後悔させてやる!」
「ほう? どうやって? てか、ケニーって呼びすてしてる俺を平民上がりとか、頭に蟲でも飼ってそうだな」
「愚弄するな! 父上に頼んで、お前の爵位を取り上げるか取り潰してやる!」
「たかが男爵家ごときが?」
「我が家は、司法庁次席のウィンクル伯爵と懇意にしおるからな!」
「ウィンクル伯爵ね……いいだろう、なんとでも言っておけよ。楽しみが増えた」
「このブラックウルフドラゴンを渡せば、勘弁してやっても良いぞ?」
と馬鹿な事を言ったジェームスに、イラッときたレジウスは、
「寝言は寝てから言えっ!」
と言いながらアイアンクローを解いた瞬間、ジェームスの腹へと回し蹴りを叩き込んだ。
「ゴフッ……」
と息を漏らし吹っ飛ぶジェームス。
そのジェームスを追いかける、ジェームスの部下が一人に、倒れてる仲間を救護する一人。
救護している男の頭にヤクザキックをかましたレジウスは、
「都って怖いねぇ」
とタッカーとデイルに向かって、笑顔で言うと、
「俺は、お前の方が怖いけどな」
「んだ! まあ証人が必要になるなら、言ってけろ」
「そんときゃ頼むわ」
レジウスがニヤニヤしながら笑っている。




