盗賊
さて、茶屋を後にし街道を進む3人だったのだが、
「腹いてぇだ」
「俺も少し」
と、タッカーとデイルが体調不良を口にする。
「そうか? 俺はなんともねぇーけど?」
レジウスが首をひねるが、
「定食のハーブが強すぎたのは、肉の古さを誤魔化すためだったのかも」
と、タッカーが腹を押さえながら振り返るが、今更どうすることもできない。
「ヤバイ……」
「漏れそうだで……」
「てめえら漏らすなよ。その辺でしてこいよ」
レジウスがそう言うと、
「すまんドーム見ててくれ」
「オラのグッフォも」
二人がそう言い、草むらの中に入っていく。
ちなみにタッカーの走竜がドームという名で、デイルの熊がグッフォだ。
「はいよ」
と、レジウスがシッシッと手を払うように振る。
が、
「ん? 何か来る?」
レジウスの耳には、レジウス達の方に向かってくる何かの足音が聞こえた。
後の方に眼を凝らすレジウス。
そして、音の正体を理解する。
「こんな時に盗賊共かよ! タッカー! デイル! まだか?!」
レジウスの叫びに、
「無理」
「オラも尻から水が出てるだ」
と、情けない声が返ってくる。
「ちっ、ザック、ドームとグッフォを守りつつ適当に暴れるぞ」
レジウスがザックから降りて、亜空間から剣を取り出して構えた。
{ギャッ!!}
と、ザックが短く鳴いた。
レジウスは眼を細めて向かってくる者達を見つめていたが、
「ん? あのオヤジ、茶屋のオヤジじゃねーか? 間違いねぇ! あのオッサン! 薬盛りやがったな!」
そう、先頭を走っていたのは茶屋の主人だった。
その背後には20人弱の男達が続いている。
「ヒッヒッヒ。飲めば30分で滝のように腹が下る特別製定食の味はどっだった? お仲間は既にピーピーみたいだが、オメェの尻も我慢の限界だろう?」
茶屋の主人が笑いながらレジウスに話しかけてくる。
「有り金と装備を差し出せば命は助けてやるぜ」
別の男が、そう言って剣を抜く。
「生憎、俺の尻はなんともねえし、金なんか1ダラスも払う気はねぇ!」
レジウスがそう答えると、
「ふん! 野郎共、ぶっ殺せ!」
茶屋の主人の声と共に、盗賊達がレジウスに襲いかかってきた。
が!
「てめえらが死にさらせ!」
レジウスがそう言って剣を振るたびに、盗賊の首が飛び、別の場所ではザックに蹴り飛ばされて人の身体が宙を舞う。
数分後には、
「はぁ、終わった終わった、てか二人ともまだか?」
レジウスがそう言ったときには、盗賊達の骸が辺りの地面を血に染めていたのだった。
「もう何も出ない……」
「オラも……」
よろよろと草むらから出てきた二人。
その二人を見てレジウスは、
「お前らこの一瞬で痩せたか? とりあえず毒だったみたいだし、この毒消し草飲みこめよ」
と言いながら、亜空間から取り出した薬草を二人に渡す。
「まずい……」
タッカーの呟きに、
「あたりめーだろ」
と呆れるレジウス。
「おい、コイツの持ってる槍、ミフシ領兵の槍だで?」
デイルが薬草を噛みながら言う。
「え?」
「本当だ」
二人もそれを確認すると、
「ちょっとコイツらの装備全部調べろ」
レジウスが辺りの死体を見ながら言う。
「ミフシ領兵のナイフとかもあるぞ」
「これなんか、ミフシ領兵の身分証だで」
「おい、いったん茶屋まで戻るぞ」
レジウスはそう言いながら証拠となる死体を、亜空間に納めていくのだった。
そうして茶屋まで戻った3人を出迎えたのは、先ほどとは違う年寄りの男だった。
「ジジイも仲間か?」
レジウスは睨みながら老人に言うと、
「いえ、めっそうもない。私は脅されて」
と、手を大きく振って否定する老人。
「アイツらミフシ領兵か?」
「へい、近くの詰所の兵士なんですが、定期的に来ては、私を奥に閉じ込めて悪さを。告げ口すれば殺すと言われてどうしようもなく」
「いつも同じメンバーか?」
「いえ、その時によって変わりますだで、詰所ぐるみかと」
「なるほどな、爺さん近くに身寄りは居るか?」
「近くの町に息子夫婦がおりますが?」
「とりあえずそこまで避難しておけ」
「でも店が」
「なら、店閉めて中から鍵かけて閉じこもっておけ」
「どうなさるので?」
「詰所の兵士、全員ふん縛る!」
「ええ?」
「タッカー、デイル、腹はもう大丈夫か?」
レジウスが二人の方に顔を向けて聞くと、
「ああ! 薬草が効いてきた!」
タッカーが右手の親指を立てて、レジウスに見せる。
「オラも」
デイルは両腕を使って○を作り、レジウスに微笑む。
「なら詰所にカチコミかけるぞ!」
「腹の痛みの仕返しだーよ!」
「屈辱を味合わせてやる!」
3人はそう言ってザック達の背に乗るのだった。




