茶屋
すいません、昨日は気分がすぐれなかったので書けませんでした。
「お、タッカーとデイルじゃん」
レジウスがそう返す先にいたのは、二人の男性。
タッカーと呼ばれたのは、色白で背が高くて細い男のエルフであり、男から見てもその気が無くても惚れそうになるくらいの美形である。
銀髪の長いストレートヘアーは、後ろで一つに束ねられており、青い瞳はキラキラと輝いているのではと錯覚してしまう。
一方、デイルと呼ばれたのは、小柄でムキムキの筋肉の塊のような体躯で茶色い頭髪は短く刈られているのに、顎には長いフワフワカーブ調の顎髭のある男ドワーフである。
愛嬌のある顔つきと、開いてるのか閉じてるのか分からない細い眼で、瞳の色は分からない。
この凸凹コンビは、ウージ領の冒険者の中では、実力でいえば上位五指に入る内の二人で、レジウスを入れてウージ領三馬鹿冒険者とも呼ばれている。
「どこ行くんだ?」
と尋ねたタッカーに、
「都」
と簡潔に答えたレジウス。
「お、じゃあ俺らと道中で盗賊狩りしようぜ!」
タッカーがそう言ってレジウスを誘う。
「お、面白そうだな。混ざるよ」
「レジウスと遊ぶのも久しぶりだで」
デイルが大きな声で嬉しそうに笑った。
「じゃあザック、ひとっ走りしようか」
レジウスが外に出てザックの頭を撫でながら言うと、タッカーとデイルも自分達の移動手段を連れてくる。
タッカーは走竜と呼ばれる、二足歩行する小型の地竜で、人によく慣れる種類であるため、既に家畜化されている竜種である。
一方デイルは、レッドベアと呼ばれる大型の熊の魔物で、人慣れしなくもないが、普通の人にはまず無理な魔物だ。
だが、デイルは魔物使い、テイマーとも言うが魔物を使役する才能があるので、上手く手懐けたのだ。
というわけで、3人と3匹はウージ領から都を目指す。
「てか、盗賊共はどこらへんで出るんだ?」
レジウスがもっともな疑問を口にすると、
「ピーチ山付近の街道だとよ」
と、タッカーがレジウスの右側から答えた。
「都への主要な街道だけど、魔物に乗ってる俺たちを襲ってくれるのか?」
「あ……」
「お前ら少しは考えろよ」
「どうするだ?」
レジウスの左側にいたデイルが、レジウス越しにタッカーに聞く。
「ピーチ山に登って、潜伏出来そうなところをしらみ潰しに探しゃいいんだよ」
タッカーがお気楽にそう言うと、
「んだな」
デイルがウンウンと頷いた。
「まあ、それしかねーか。何人くらいの盗賊なんだ?」
「20人くらいらしいぜ」
「楽勝だーよ」
「ピーチ山に20人も隠れられそうな場所あったか?」
「そう言われれば」
「穴でも掘れば隠れられるべ」
「オメーじゃあるまいし。それに、ピーチ山に居ない可能性もあるぜ?」
「とりあえず山行って、居なけりゃその辺探しゃいいさ」
「まあ、それしかねーだな」
計画性の無い3人は、行き当たりばったりでいくようだ。
そうしてピーチ山に分け入った3人。
「おいタッカー! やっぱ盗賊居ないじゃん。」
「居たのはゴブリンとオークばっかりだっただよ」
「てか雑魚ども多すぎじゃね? ミフシ領の兵士は何してんだ?」
「オラ、誰かさんへの支払いで、金がねぇってきいただど?」
「月に金貨1枚だけだぜ?」
「なら違うだか」
「たったそれだけで領兵に賃金払えないとかないだろ」
「んだなぁ」
「とりあえず街道周辺を当たろうぜ」
「タッカー、山から下りるだーよ!」
デイルが少し離れた場所にいるタッカーへ、大声で呼びかけた。
そして街道まで降りてきた3人だったが、
「街道近辺も何もねーなあ。てか、茶屋と兵士の詰所しかないじゃん」
「オラ、腹減っただよ。茶屋でなんか食わねか?」
「賛成!」
「まあ俺も減ったしな、よしタッカー、デイル、行こうぜ」
3人は見つけた茶屋へと向かうのだった。
茶屋に着いた3人は、店の前の木々に、魔物を繋いで店の外にある机と椅子に陣取る。
「いらっしゃいませ」
店の主人だろうか、50代の男が3人の前に現れる。
他に客の姿はない。
「食い物は何がある?」
とレジウスが男に聞くと、
「日替わり定食とスープパスタしかないんです」
「んじゃ日替わり3つな」
と、勝手に決めたレジウス。
「レジウスの奢りだよな?」
とタッカーが横からレジウスに聞く。
「なんでだよ」
「お前金持ってんじゃん」
「お前ら俺より年上だろうが!」
「年は関係ねーよ」
「年上が奢るのでもオラは構わねーよ?」
「デイルって何歳だっけ?」
「まだ50だ」
「タッカーは?」
「145……」
「タッカーってジジイじゃん」
「普人種でいえば30くらいだよ!」
「エルフって400年くらい生きるもんな」
「ドワーフの倍も生きるだでな」
「そのドワーフでも普人種の倍だけどな」
レジウスがそう口を挟むと、
「普人種はその代わりボコスカ子供増やすだよ」
「そりゃ繁殖期が毎月くるからな。てか話戻すけど割り勘だかんな?」
「ちぇ」
と、タッカーが残念そうに言う。
「お待ちどうさまです、日替わり3つです」
運ばれてきたのは、何かの肉の香草炒めと豆のスープにパンだった。
「お、食おうぜ」
「なんか香草キツくねーか?」
「エルフは香草ヘーキだろ?」
「平気だが、それでも使い過ぎだと思うぞ。香草の匂いで何の肉かわからねぇもん」
「肉ならなんでもいいだ」
そんな感じで3人は飯を平らげた。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
笑顔でそう言った茶屋の主人の口もとが、少し歪に歪んでいたのだった。




