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家を出る


「では父上! レイン! そして義母上ははうえ、お世話になりました。もし私に依頼があれば格安でお受け致しますので、ご連絡ください」


 ザックに跨ったレジウスがそう言うと、


「ああ」


 とレナードが微笑み、


「了解、兄さん」


 とレインも笑ったのだが、


「レ、レジウス、わ、私に気を使ってでで出ていくなら、そそそそんな必要ないののよ?」


 震えながらそう言ったのは、レインの母である。

 レジウスの前に姿を見せるのは珍しいゆえ、この日はそれなりに特別な思いと、覚悟なのだろう。


「義母上に気を使って出ていく訳ではありませんよ。昼まで寝ても誰からも文句を言われない生活をするためです」


「それならここでも」


「いえ、レインが起きて父上の手伝いをしているのに、兄の私が寝ていては我が家で働く者達の心証が良くないでしょう。それにもう決めた事ですから」


「そう……たまにはレインにかかか顔を見せに来なさい。約束よ?」


「分かりました。では!」


 そう言って後ろを振り返る事なくレジウスが行く。


「そう複雑そうな顔をするな。レジウスが住むのはここから1時間も歩けば到着するような近所だ」

 

 と、妻に優しく声をかけたレナード。


「でも、毎日チラッとでも見ていた顔が見えなくなるのは寂しいわ。たとえ怖くて直視出来なかったとはいえ、一応小さな頃から見ていたのですから。小さい頃は怖くなかったのに……」


 その言葉は、決して嫌いだったから避けていた訳ではないのだと分かる。


「お館様」


 と家令がレナードに声をかける。


「なんだ?」


「レジウス様の部屋、本当にあのままでよろしいのですか?」


「ああ、まさかベッドや机だけでなく、魔力照明やカーペットまで持っていくとは思わなかったが、あの部屋は暫くそのままにしておけ。あの部屋を見れば、レジウスが我が家に住んでいたという思い出になるだろう」


「承知致しました」


 スッと頭を下げた家令。

 その頃レジウスは、


「冒険者ギルドに行くか」


 と言ってウージ領の繁華街を目指していた。

 まあ、すぐ近くなのだが。


 ウージ領の繁華街、そこにそれなりに立派な建物がある。

 冒険者ギルドウージ支部だ。


「邪魔するぜ」

 

 とドアを開けたレジウスに、


「邪魔するなら帰ってください!」


 受付に座っている女性がそう言う。


「はい、出直しまーすって、そうじゃねぇ!」


「レジウス様は相変わらずノリが良いね」


 そう言ってケラケラ笑うのは、レジウスと普通に会話が出来る数少ない女性のうちの一人、冒険者ギルド受付嬢のアリアだ。


 年齢は25歳で、黄色い頭髪をした豹の獣人の元冒険者だ。

 獣人の女性は普人種の女性に比べてレジウスを怖がらないことが多い。

 ただ、この女性は美人なのには違いないがどこかネジが抜け落ちていて、強い男性ならば種族構わず襲っていると噂だ。


「ついついノっちまった」


「先日は私にもノリましたしね。用事は?」


 噂は本当のようだ。


 ちなみに普人種と獣人の間に子供は出来ない。行為はできるが。


「それをここで言うなよ。オークの買い取りを頼む」


「オークなら今は銀貨25枚です」


「値下がりしたか?」


「誰かさんがこの間大量に持ち込んだからですよ」


「あー、なるほど」


「レジウス様、気をつけて下さいよ。相場を崩すと他の冒険者から嫌われますから」


「俺みたいないたいけな少年を虐めて楽しむ輩が居るのか?」


「はて? 少年? どっちの意味でももう成人でしょう?」


「まあそうだけど下ネタ絡めるなよ。それに俺の顔知らない冒険者がこの領に居るのか?」


「冒険者なら、他国から依頼でウージに来ていてもおかしくありませんから」


「ああ、なるほどな。まあなんとかなるだろ」


「揉め事だけは勘弁してくださいよ」


「やけに注意してくるな」


「頼まれたので」


「誰に?」


「ここのギルドマスターにです」


「マスターだって、俺の人柄は知ってるだろうに」


「知ってるからこそ、心配してるのです!」


「俺の事、なんだと思ってんだろ?」


「歯向かう者には容赦しない、人格破綻者と言ってましたね」


「よし! 殺そう!」


「ダメですって! そんな事ばかり言うから、人格破綻者って言われるんですよ!」


 ちなみにギルドマスターは文官上がりで、めちゃくちゃ弱い。


「俺は自分から喧嘩ふっかけたりしないし、人畜無害だと思うぞ?」


「レジウス様、それ本気で言ってます?」


「本気も本気」


「こないだ、冒険者同士の揉め事の仲裁で、両方とも治療院送りにしたの覚えてます?」


「いつ?」


「私に乗った日! 3日前ですよ!」


「覚えてないなぁ〜3日前の昼食に横の食堂で野ウサギの丸焼きを依頼して食べたのは覚えてるけど」


「そのあと、デザートを奢る約束をしていた私を肩に担いで、腹ごなしにってウージ川まで走ったのは?」


「覚えてる」


「ウージ橋の西詰の茶店で、紅茶大福食べたのは?」


「覚えてる」


「その茶店で冒険者が喧嘩してたでしょう?」


「あれは喧嘩だったのか?」


「どう見ても喧嘩だったでしょう!」


「てっきり模擬戦で遊んでるのかと」


「模擬戦に本物の剣を持ち出さないでしょ……その時冒険者に何したか覚えてます?」


「うるさいって注意したかな?」


「飛び蹴りしながらね」


「そうだっけ?」


「飛び蹴られた男は肋骨が折れ、もう一人、回し蹴りした男は内臓が腫れたらしいです」


「死んでないんだろ?」


「治療院で低級ポーションを処方してもらって回復したそうです」


「じゃあ問題ねぇな」


「ポーションの代金も安くはありませんよ?」


 ポーションは低級でも銀貨10枚という高価なものなのだ。


「冒険者は全て自己責任だろ? まあ、俺にポーション代を要求してくるようなら、さらに高い金を払う事になるだろうなぁ」


「レジウス様って本当に自己中ですよね」


「アリアがソレ言うか?」


 アリアと寝てどハマりして、貢がされて捨てられた男は星の数ほど居ると噂だ。


「で、用事は?」


「都に行くからついでに荷運びかなんかの仕事ねーか?」


「手紙の配達が二件あるわよ? 一通あたり銅貨5枚だけど」


 安く思えるかもしれないが、こういう依頼はついでに受けるものなのが主な理由なのと、高いと平民が手紙を出す事が出来なくなるからだ。紙だってそれなりに高級品であるから。


「合計銅貨10枚か。昼飯代にはなるし受けるとするか」


「じゃあコレを都のギルドまでお願い」


 そう言われて、レジウスが手紙を預かった時、


「いよっ! レジウス!」


「おーすっ!」


 と、レジウスに声をかける声が二つ。



お昼に別の新作を投稿します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ、大人よね(笑) あとは、何が周囲に恐怖を齎したのか? この辺りが一つの鍵ですな。
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