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家族のおはなし3


「出産を自宅で希望したが、難産になる事が予想さえた。 対応が遅くなると手遅れになる場合もある。 出産は、命懸けだからね…。 おばあちゃん達に陽菜ひな達を頼んで病院で産んだんだ。 私も付き添ってね。」

「…病院では、緊急手術時、本人の意識がない場合は家族の同意が必要だからね。」

母が付け足した。 緊急手術という言葉に、顔が変わったのであろうオレを見て母が「念の為よ。」と優しく笑った。


「生まれてみれば母子共に健康だったから良かったよ。 1日経っても生まれない立派な難産だったがね。」

父はそう言うと、持っていたコーヒーを飲んだ。 父はいつも砂糖を一杯だけ入れたコーヒーだ。

母がコーヒー好きの父の為に引き立てを入れる。 そんな時はコーヒーのいい匂いが、オレの部屋にも充満する。 時々余ったコーヒーでゼリー等のおやつも作ってくれて、それもみんな大好きだ。


一息入れた父が続けた。

「生まれてからも大変なのは変わらなかった。 日々忙しくしていると毎日が本当にあっという間で…気付いたら2年経っていた。 その頃には、養護施設への訪問を定期的にしていてね。 私と母さんは勉強を教えたり、食事を作るのを手伝ったり、陽菜ひな達は、一緒に遊んだりしていた。 養護施設の扱いとしては…ボランティアになっていたんだろうな。 私達は遊びに行っていただけなのだがね。」


「今は?行かないの?」

そう聞くと、父より先にれんが答えた。


「引っ越したんだよ。 この家に。」


 なるほど、オレが知らないはずだ。


 一つうなずいて父が続ける。

「前の家は、結婚当初から住んでいた家だったから、流石に狭くなってね…。 その頃にはドラマ化の話も貰っていたから、いっそ大きな家を購入する事にしたんだ。 母さんの希望で、海のそばのね。 引っ越してからも何度か行ったんだが、子ども達が大きくなるにつれて、疎遠になってしまった…。 今でも手紙は書いているよ? 1年に数回程ね。」


 全然知らなかった…。

職業柄、付き合いもあるのだろう父は、郵便物を出す機会も多い。きっと、その内の一つだったのだろう。


「…じゃあ、帆香ほのかは? いつ来たの?」

疑問に思い帆香ほのかを見ながら言うと、菜乃香なのかが答えた。

「そのボランティアに行ってた時に一華いちかと仲良くなって、家に来たの。 なぜか一華いちかには懐いたのよね…。 あれ、なんで?」

菜乃香なのかが、帆香ほのかを見ながら聞く。 オレも帆香ほのかを見た。

家族に注目されてる中、帆香ほのかはいつもの、あまり変化の無い表情で「………覚えてない。」と言った。

まぁ、そうか。 2歳?3歳?とかだもんね。


一華いちかだけって、みんなには?」

「誰にも懐かなかったんだよ。 私達、家族だけじゃなく、施設の人達にもね。 いる場所も、大体庭か部屋の端に座っていた。 私達どころか職員さんが話しかけても、あまり反応をしなかったんだ。 でも、なぜか一華いちかには自分から話しかけていた。 どうやったのか、みんな気になっていたよ。」

そう言う父の目線の先は一華いちか帆香ほのか


「…一華いちかは? 覚えてないの?」と聞くと、「…さあ。」とどっちつかずな答えが返ってきた。

なんとなく、聞いちゃダメなのか…?と思い、何も言えないでいると、オレの顔を見た一華いちかが少し考えた後、小さなため息を一つして「…秘密の場所が一緒だったの。」とだけ言った。


 聞いた事でさらに謎が深まったが、これ以上聞いても答えてくれなそうだったから、諦めた。

ふふふ、と父が笑い、続けた。


「そして引っ越して…1年ほど経った冬の日に、はやて、君が来たんだ。」

 オレをまっすぐ見ながら、父が、ゆっくりと、話す。


「私が、君を始めて見たのは、学校から帰ってきた一華いちかの腕の中で、泣いてる姿だった。」


「え!?…オレ、一華いちかに拾われたの?」


 母が最初に発見したと思ってた、家の前って言ってたし…懐かしいって話し出すの大体、母だったし。


「それも知らなかったのか…。」心底びっくりした顔で、ぽそっとれんが言う。

「だって…。」と言い淀んでいたら、「正月によく話してたのに。 なぜかすぐ寝ちゃってたもんね。」と陽菜ひなが言ったから、オレは、つい、わざと寝ていたと言った。

()()()()()()って話をしてたと思って、と。




…みんな、そんな微妙な顔で笑わないでくれ。

れんみなとだけは、爆笑してるけど…。


今度からちゃんと起きててね、あなたが家に来てくれた嬉しい話なんだから。と母が言うから、うん…。と返事をした。




UPが遅くなりました。

次回で一旦完結にしたいです。

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