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第75話「ぬいぐるみと兎愛」

紘深「これ知ってるー!私も見てたよ。」

兎愛「そうなんですね!私あのクールで一番好きだったんです!」


ある日のこと。北条さんは、過去に放送されていたあるアニメのキャラクターのぬいぐるみを買ったという。彼女は黒藤さんにそのぬいぐるみを撮った写真を見せていた。フリーイラストを合成しているものもある。


その数日後。俺たちは北条さんの家に行くことになった。

(玄関のチャイムを鳴らす紘深)


「あ、斎藤さんに紘深さんこんにちはー!」

玄関のチャイムを鳴らして大体1分くらいで北条さんが出てきた。


北条さんはというと、そのぬいぐるみを持ってきていた。


良哉「これがそれか…」

兎愛「はい!」

北条さんは自信満々の表情だ。すると、

兎愛「はじめまして。」

北条さんは持っているぬいぐるみを、頭を下げて挨拶をするかのように動かした。


紘深「はい。はじめまして。」

良哉「は…はじめまして。」

俺たちもぬいぐるみに挨拶を返した。


良哉「おじゃまします。」


手洗いうがいを済ませて、北条さんの部屋に向かう俺たち。

「ちなみに、兎愛ちゃんさっきまで何してたの?」

「課題レポートを進めていました。さっきちょうど一つ終わったところです。」


レポート課題を一つ終えたばかりの北条さん。北条さんは部屋に着くや否や、ベッドでぬいぐるみと遊んでいる。


それから20分くらい過ぎた時の事。

良哉「俺ちょっとトイレ行ってくるわ。」

紘深「分かった。」

兎愛「了解でーす。」


俺はトイレへ行く… のだが、その間に部屋では何かが起きていたことに、俺は気づかなかった。


トイレから戻った俺。すると…

「どうしたのこれ?」

部屋の中では、北条さんはiPadを持って、床に置いてあるぬいぐるみと床に座っている黒藤さんの前に立っていた。まるで先生のようだ。


「あ。斎藤君斎藤君、授業始まるよ。」

「授業?」

「うん!」

北条さんは、どうやらぬいぐるみと黒藤さん、それに俺相手に地方のテレビ局に関する授業を始めるという。


兎愛「オホン。それでは授業を始めます。」

紘深「よろしくお願いします。」

良哉「よろしく… お願いします…」

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「よろしくお願いします。」


「では今日は、関西のいわゆる『独立局』についてです。」

関西の独立局とかいう、どこの系列にも所属していないテレビ局に関することを授業したい…もとい語りたいという。


関西2府4県には大阪以外の府県に独立のテレビ局があるのだが、大きな2つの特徴に分かれる。

その2つの特徴は、テ○東から番組を同時放送含めてたくさん購入しているのと、そうでない独自路線というところだ。独自路線なテレビ局はというと、京都と兵庫にある、ざっくり言うならアニメとプロ野球に大きな力を入れているところだ。


紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「先生。」

すると、ぬいぐるみが質問する(という体で黒藤さんが)口を開いた。

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「オリンピックとか放送権が厳しいスポーツ中継が入りそうなときはどうするんですか?」

兎愛「そういう時は、最初っからその番組をお休みにして他の番組を流します。」

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「例えばどういうものが流れますか?」

兎愛「主にその地域で放送されなかった過去の単発番組とか、映画とかですね。」


北条さんは、テ○東から番組を同時放送含めてたくさん購入しているタイプのテレビ局が、オリンピックをはじめとしたその局が放送しない(というより放送権の都合で放送できない)スポーツ中継で、テ○東発の番組がそれらの影響を受けそうな場合はどうするのかについて語った。実際ぎふ○ャンのそのパターンで、W○Sが最初から別の番組になっていたことが何度かある。


兎愛「斎藤さんのところも、そういうことありましたよね。」

良哉「う、あ、はい。」

兎愛「斎藤さんの住んでいた岐阜県にも、そういうテレビ局があるんですよ。」

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「そうなんだ~。」

紘深「でもその局、通販番組がいっぱいなんだよ。」

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「え、そうなの?」


俺は思った。「またそのことを言われるのか…」と。


その後も、関西の独立テレビ局に関する"授業"は続く。

その"授業"を聴きながら、俺は一つ改めて確信したことがある。


「北条さんも、地方のテレビ局が好きなんだな。」ということを。


すると、関西の独立テレビ局のプロ野球中継事情に関する話をしていた時だった。

兎愛「斎藤さん。」

「は、はい。」

兎愛「ある時、夜中の0時半くらいまで長引いた試合があったのですが、中継をしていたそのテレビ局は予定していた番組を全部放送し終えるのに何時まで時間がかかったでしょう?」


それは俺に振られた突然の問題だった。(黒藤さんが教えてくれたことだが)サ○テ○ビは必ず試合が終わるまでプロ野球中継をやっている。その局のことだから0時半まで野球中継をしていたに違いない。でも3時間以上の中継延長ということだから、放送を取りやめた番組もあったに違いない。


俺はこう考えて、

「3時…くらい?」

と答えた。


兎愛「それがそれよりももっと遅いんです。」

良哉「もっと遅いの?」

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「もっと遅いってどういうこと?」

良哉(黒藤さんは知ってるだろ…)


良哉「もっと遅いって、一体何時頃に終わったんですか?」

兎愛「それが… 朝の5時半過ぎなんです!」

良哉「朝の5時半過ぎ!?」

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「えーすごい!」

良哉(だから黒藤さん知ってるだろその話…)

兎愛「サ○テ○ビは中継が終わった後、律儀に予定した番組を朝までかけて放送し終えたって話なんです!」

良哉「ちょっと待って。それって、放送なしにした番組は一つもなかったってことですか?」

兎愛「そこまで詳しいことについて、まだ確定?したことは分かっていませんが、おそらくその通り途中の番組を休みにはしなかったのではないかと思います。」

良哉「凄い話だな… 俺てっきり途中の番組をいくつか休みにしたのかと思ってた…」

紘深(ぬいぐるみを動かしながらちょっと変えた声で)「そうなんだ… 凄いテレビ局があるんだね…」

良哉(だからそれ知ってるだろ黒藤さん…)


"授業"が終わった後の北条さんは、とても満足そうな表情をしていた。

兎愛「こういうの一度やってみたかったんです!」

紘深「よかったね兎愛ちゃん。」

兎愛「はい!本当に楽しかったです!」


それからその後はレポート課題の資料になりそうなものを見せてもらうなど、大体1時間半ほどを北条さんの家で過ごした後、俺たちは家に帰った。


家に帰った後のこと。

(LINEの通知音)

それは北条さんからのLINEだった。


「…(笑)」

北条さんがLINEで送ってきたもの。それは、北条さんのぬいぐるみに鉛筆のイラストを合成し、あたかもぬいぐるみが鉛筆を持っているかのような写真だった。


ちなみに兎愛がしていた話は、(当然ながら)紘深は全部知っています。


この話を2024年夏に改稿するまでの間に、2023年の阪神タイガースのリーグ優勝の際に、サンテレビはその日一番最後に控えていた番組(アニメ「スパイ教室」、当初放送予定は深夜1時。)が終わった時間が朝の5時40分という、これを書いた当時を超える記録を打ち立てました。

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