第8話「なんでここに地方紙が!?」
授業のレポート課題に取り掛かるべく、大学の図書館を訪れた良哉。
そこでバッタリ紘深に遭遇した良哉は、紘深によって図書館のある場所へと連れて行かれます。
(空いてるパソコンの席は…と。)
ここは大学の図書館。普段の勉強に役立つ様々なジャンルの本や小説、資格・就職に関するもの、おまけに全文外国語で翻訳なしの洋書まで、非常に様々な種類の本が揃っている。
しかもそれだけじゃない。全フロア累計およそ500席にも及ぶパソコンの席がある他、ノートパソコンの館内貸し出しを行っている。レポート課題が集中する期末試験シーズンでも、空席待ち知らずで快適にレポートの執筆や普段の調べ物まで様々なことができる。
俺が今この図書館にいる理由。それはさっきの講義でレポート課題が出たからだ。幸い今から2時間分、時間にして約3時間も時間が空いている俺は、早速レポート課題に取り掛かる。
出入口のある4階の階段を下りて、パソコンの席がたくさんある3階へ向かう。
すると、階段を降りたところで…
「!」
「ああ!」
黒藤さんとバッタリ遭遇した。黒藤さんもこの時間空いているのだろう。
「黒藤さん。」
「斎藤君。レポートの課題かなんか?」
「ああそうだけど、黒藤さんも?」
「私はさっき終わったとこ。」
黒藤さんがそれを言い終わると…
「ちょうどよかった。とにかく来て!」
黒藤さんはいきなり俺の手をつかんで、エレベーターに乗せた。
連れていかれた場所は2階。2階にはパソコンの席は少なく、また置いている資料もほとんど理数系のものだから、俺がここに来るのは初めてだ。
「あっちにここにあるの?」
「うん。もうすぐ。」
黒藤さんが俺を連れてきた場所、そこには…
「ここ!」
そこにはたくさんの新聞があった。普段目にする有名な新聞の他にも、農業や工業系などのいわゆる「業界紙」、それにいろんな国の英字新聞までさまざまだ。業界紙や英字新聞もあることは、俺も入学時に渡された図書館利用ガイドで把握している。
「新聞?」
「うん!ねぇ見て見て!」
黒藤さんは隅の方にある、へその高さくらいまである新聞棚の前に俺を連れていく。
「見てこれ!地方の新聞!」
その棚には地方の新聞があった。黒藤さんが棚から取り出して俺に見せてきた北海道の新聞の他にも、ここから目視で確認できる限りでは山梨・京都・広島の新聞がある。
「業界紙や英字新聞があることは聞いてたけど、地方の新聞まであるのか…」
「そう!」
黒藤さんは得意げな顔をしていた。毎日ここに来て一つ新聞を選んで読むのが日課なんだとか。
「ねえ、一緒に読も!」
「え、え…?」
とんだ無茶ぶりだ。課題などのために男女で同じ本を読みあうという光景は俺もこの図書室で何度か見かけたことがあるが、新聞を一緒に読みあうなんて聞いたことがない。
「ほらほら!」
俺が戸惑っていると、黒藤さんはまた別の新聞を見せてきた。
「これは…」
彼女が見せてきたもの。それは岐阜でも手に入る名古屋の新聞だった。
黒藤さん、俺が少しでも食いついてきそうなものを選んでくるとは…
「懐かしい…」
「でしょ?一緒に読もうよ!」
せっかく名古屋の新聞を一緒に読もうと言っているんだ。レポートの期限までまだ余裕もある。付き合ってやることにした。
「そうだな。」
黒藤さんは新聞を読む用の席に俺を連れて行く。俺たちはそこで一緒に新聞を読む。椅子はない。
テレビ欄を見てみると、岐阜にいた頃にはよく見ていた夕方のニュース番組が並んでいる。深夜の方にはこの間最新話を見たばかりのアニメも書いてあった。その時間はなんと3時。なんて遅い時間なんだろう。
「見たことあるやつがいっぱいだ…」
と俺が呟くと…
「…」
黙ってはいるが、目は確かに輝いていた。
(さすがは黒藤さんだな。)
「次いこ次!」
黒藤さんは次々とページをめくる。社会面・文化面・名古屋エリアの地域面などを見る。
そうこうしている間にラジオ欄。
すると黒藤さんは、紙面の左の方にあるAMの放送局の欄の下の方に指をさす。
「ねえ、斎藤君がいつも聴いている深夜のラジオってこれ?」
指さすところを見てみると、間違いない。「○ールナ○トニ○○ン」。まさにその通りだ。
「そうそれ!」
次に彼女は次に隣の放送局の欄の夜10時あたりのところに指をやる。
「でそれのスピンオフがこれでしょ?」
「ああ。MU○IC○0。それ俺もたまに聴いてる。結構懐かしい曲が流れることもあってね。」
「でもさ、同じタイトルが入っている番組が別々の局で流れるなんて…なんか不思議だね。」
「そうだな(苦笑)。俺も岐阜で聴いてた頃、パーソナリティーの人が『このあと深夜1時からですので是非お聴きください』って宣伝した時は『それこっち局が違う!』って突っ込んでたなぁ…(苦笑)」
「そうなんだ(苦笑)他局の宣伝になっちゃってんじゃん(笑)」
この間アンテナショップで一緒に宮崎の新聞を読んだ俺たち。アンテナショップには岐阜の新聞もあって黒藤さんはそれを買っていたが、まさか一緒に俺の地元の新聞を読むときが来ようとは。
図書館の司書の方によると、地方の新聞が置いてあるのは上京して一人暮らしをしている学生に地元の社会情勢を知ってもらうことが主な目的であるという。
「黒藤さんはきっと、俺と一緒に名古屋や岐阜の新聞を読んでみたかったのかもしれない。」
俺がなんだかそんな感じがした。
ちなみに私の通っていた大学には、沖縄の新聞がありました。
次回、紘深の両親初登場!