第7話「黒藤紘深の無敵のラジオアプリ」
良哉と紘深がアンテナショップを楽しんでから2日。
良哉は紘深が聴いていたあるものに衝撃を受けます。
【おことわり】
この作品に特定の商品を宣伝する目的・意図は一切ありません。
大学の授業は教授の都合で休講になることがある。大学内ではメールやポータルサイトで随時それが伝えられるが、休講を決めたタイミングによってはそれらに反映されず、大学内のモニターで初めて知らされるパターンということもある。そのモニターをチェックして自分が取っている科目の休講をチェックするというのが、大学に着いてからの俺の日課だ。
俺たちがアンテナショップを満喫して2日。今日は月曜日。大学に着いて休講情報のモニターを見て俺は驚いた。
(マジか1限目と2限目が一気に休講かよ…4限目まで予定ががら空きだ…)
月曜日早々、朝から午前中にかけての科目が一気に休講になった。こんなのは初めてだ。かといってレポート課題もないし写真部の部室も空いていないから、俺はこの後午後3時ごろまで、時間にしてなんと6時間近くヒマだ。
(さあどうするか…)
俺はかねてから行きたいと思っていた、大学のタワーの最上階にある展望台カフェに行ってみることにした。眠気覚ましにも丁度いいだろう。
カフェでコーヒーを楽しんだ後、窓から広がる眺めを写真に収めること約1時間半。
展望台カフェを後にした俺は、図書室のある棟へ向かう。あそこの最上階のテラスの景色も良い眺めだと聞いたことがある。
そこへ行く最中、休憩スペースのオープンカフェで黒藤さんを見かけた。スマホで音楽か何かを聴いていて、やや離れたところから見てもとても楽しそうな様子だ。
せっかくだ。ちょっと話しかけてみることにした。
「黒藤さん。」
「あ、斎藤君!」
「おう。黒藤さん何聴いてるの?なんかとても楽しそうな感じだったけど。」
「ラジオだよ。聴いてみる?」
そう言って黒藤さんは、ワイヤレスイヤホンの右を俺に渡してきた。
それを右耳に入れると…
「第二阪奈道路の下り線が一部区間で通行止めとなっています。国道163号第二阪奈道路下り線、壱分ICから中町ICの間は、事故のため…」
ラジオの交通情報であることは理解した。その後に続けて「阪神高速」という名前が出てきた。間違いなくこれは関西のラジオだ。
黒藤さんが地方のラジオを聴きそうなことは想像がつくが、一体どのようにして地方のラジオを聴けるのだろうか。
「うん。関西の方のラジオだね…」
「でしょ?」
「これ、どうやって聴いているの?」
「ああ。こういうアプリ使ってるんだ!」
黒藤さんはスマホの画面を見せてきた。見慣れた画面ではあるが、そこには深夜ラジオを聴くのが好きな俺でも聞いたことがないラジオ局の名前がたくさん書いてあった。
「これ一つで、日本中のラジオが聴けるの?」
「そうだよ!本当に便利で聴いてて楽しい!」
黒藤さんは満面の笑みだ。その後彼女はスマホを操作する。
「えいっ!」
音が切り替わる。すると…
「県内ニュースです。可児市愛岐ケ丘で昨夜…」
「可児市」という地名。これは岐阜のラジオだ。アナウンサーの声も聞き覚えがある。
「岐阜のラジオ!」
「ふふーん。懐かしい気持ちになれた?」
「ああ。岐阜にいた頃ニュースとかでよく聞いていたアナウンサーの声がしたよ。」
その後黒藤さんは、秋田→北海道→新潟→愛媛→福岡と、いろいろなところのラジオを立て続けに聴かせてきた。
「俺もいつも聴いている深夜のラジオで名前だけは聞いたことあるけど、こんなに便利なやつなんだ…」
「そう!
「そうだな(苦笑)。でも、お金かからないの?」
お金の問題。そりゃそうだ。日本全国のAM・FMラジオが聴き放題というこんな便利な機能をタダで使えるなんて考え難い。俺の好きなリズムゲームにあるお得なアイテムやレアリティの高いキャラを使うには課金が必要なのと同じ話だ。
「月額で500円もかからないんだよ。ね?凄いでしょ?」
「凄っ!」
これだけの便利な機能で月額500円もかからない。なんて便利なやつなんだ。俺が好きなゲームの一番便利なセットだって、1回で使うには3000円くらいかかる。
「ちなみにこれさ、俺が深夜にラジオ聴くのに使っているのと同じやつ?」
「そうだよ。このプランに入るだけで使えるよ!」
俺がいつも深夜ラジオを聴くのに使っているアプリにこんな隠された機能があったとは。今までそういうのに興味が無かった俺にはびっくりなことだ。
「私が責任を持って断言するよ!斎藤君も使っているこのアプリは実は『無敵のラジオアプリ』だってことを!」
「お、おう…」
俺がいつも聴いている深夜のラジオ。岐阜にいた頃はCMと本編の間に洋楽が少し流れることがあったが、東京に来てからはCMの後直接本編に戻っている。
もしかしたらその違いも楽しめるのかもしれない。なんだか俺はそんな感じがした。
実は関東在住の私。これ書くにあたって、関西の高速道路とか岐阜の市町村内の町名とかたくさん調べました…
俺もそのプラン入りてー…