第60話「兎愛、誕生日プレゼントを貰う。」
8月20日に誕生日を迎えた兎愛。
そんな兎愛は誕生日プレゼントもらったようなのですが…
8月20日。午前0時。
「北条さん。お誕生日おめでとう。」
というのを俺たち4人のグループLINEに送った俺。今日は北条さんの誕生日だ。
「ありがとうございます!」
と北条さんは返して来た。とても嬉しそうだ。
その3日後。俺は黒藤さんに誘われて横浜市歴史博物館に行った。その後立ち寄った博物館の近くにある遺跡公園でのことだ。
「ねえ、あれ兎愛ちゃんじゃない?」
と、黒藤さんはベンチに座って何かをしている女の人の方を指差した。
遠目からではあるが、確かに北条さんっぽい顔つきだ。彼女は何をしているのかというと、ラジオみたいなものをいじっている大きさはそこそこ大きめに見える。
「うーん… 見た感じ確かに北条さんっぽい感じはするけど…」
「行ってみよう。」
「お、おい待ってよ人違いだったらどうするんだよ?」
俺たちはその人の元へと向かう。
(2人の足音)
「あ!斎藤さんに紘深さん!」
足音に反応したその人は、やっぱり北条さんだった。
「兎愛ちゃん。それなに?」
北条さんが持っていたのはやっぱりラジオだった。それもかなり大きい。こんなに大きいのは初めて見る。
兎愛「はい。誕生日プレゼントでもらったラジオです。すっごくアンテナの感度が良くて、ここで試してるんです。」
良哉「ラジオの受信を試す… ってますます黒藤さんっぽいことしてるな。」
兎愛・紘深「えへへ…」
誕生日のプレゼントとして、ご両親からこの大きくてアンテナの感度が良いラジオを貰った北条さん。彼女はこの遺跡公園で、どの放送局が拾えるのか試していたのだ。
「だってこの公園、場所が高い上に開けてるから、期待できると思ったんです。あそこの電気屋さんの駐車場の方が高いところにあるけど、あっちよりかは安全だし。」
はっきり言って北条さんの言う通りでしかなかった。去年の年末、ガソリンスタンドで車のラジオがどこの放送局を拾えるかやってみたところ、AMだけでも東京や石川の放送局の電波が拾えたのだから。
ふと俺は思った。ここは横浜でかつ中心部からはやや離れた場所。性能次第では静岡とかのラジオくらいは受信できそうなものではある。
「ねえ北条さん。やってみてどんなところの局拾えた?静岡とか。」
「はい!静岡の局とかいくつか拾えました!」
そう言って北条さんはスマホのメモを見せてくれた。そこには静岡のラジオ局の名前と周波数が書いてあった。しかも静岡だけじゃない。名古屋・大阪・長野・新潟・石川・福島・広島・宮城のラジオ局の周波数と名前もある。
良哉「すげえ… ここから仙台とかどれだけ性能いいんだ…」
紘深「兎愛ちゃんはさっきどこの局拾おうとしてたの?」
兎愛「北海道のAM局です。札幌の局は出力は大きいから、行けるんじゃないかと思って。」
「送信所の出力」という言葉も黒藤さんと一緒にいる中で覚えた。その出力が大きいほど電波はより遠くまで届くと言うのも、黒藤さんから得た知識だ。
北海道のAM局の周波数と出力に関する話をしている黒藤さんと北条さん。俺はその脇で2人の話をすることしかできない。
「2人の話周りの人には全くわからんだろ…」と俺は思っていた。
ラジオをダイヤルを回す北条さん。周波数はディスプレイに表示されるタイプのやつだ。
「来ました!」
と言う北条さん。北条さんはそのディスプレイを見せてきた。ディスプレイには「1285」と出ている。
蝉の声が鳴り響く中、ラジオに繋がったイヤホンを渡されてそれを耳に入れる俺たち。
ノイズが強めで微かではあるが、ニュースを読んでいるような声が聞こえてくる。
兎愛「よしっ!」
嬉しそうな表情をする北条さん。
紘深「やったぁ!北海道もう一個AM(ラジオ局)あるから、次はそっち?」
兎愛「はい!出力も同じ50kWですから、多分!」
紘深「そうだね。(笑)」」
そしてさらに北条さんはダイヤルを回す。ディスプレイの数字は「1440」になった。
さっきと同じように北条さんから渡されたイヤホンを交代で耳に入れる俺たち。やはりさっきと同じようにノイズが強めで微かではあるが、パーソナリティーがしゃべっているような声が聞こえてきた。
北条さんはすかさずスマホにメモをとる。
紘深「これで北海道もコンプだね!」
兎愛「はい!周波数2桁kWなら拾えるってことが分かりました!」
紘深「福岡の方はやった?」
兎愛「いえ。福岡はまだです。」
紘深「じゃあ今やってみる?出力同じくらいだし。でもかなり遠いから…」
兎愛「やってみます。」
福岡は遠い。兎愛さんはダメもとみたいな感じでダイヤルを回した。
「1314」の表示が出ている。
一人ラジオに耳を澄ませる北条さん。
「どう?何か聞こえる?」
「うーん…」
藤堂さんは20秒ほどしばらくラジオに耳をくっつけ、こう続けた。
兎愛「ダメです。やっぱりかなり遠いからでしょうか?何も聞こえません。」
紘深「私もそうなんじゃないかって思ってた。でも、夜ならワンチャンいけるんじゃない?」
兎愛「そうですね。夜中あたりならいけるかも。斎藤さんがいつも聴いてるラジオ、聞いてみようかな。」
良哉「ほどほどにしておいた方がいいんじゃない?明日部活だし。」
それにしても今日もかなり暑い。俺たちは近くの自販機でイオン飲料を買いに行くことにした。北条さんも大きなラジオをカバンにしまって一緒に行った。
(自販機の音)
そこから戻る最中、北条さんと黒藤さんは『スポラディックE層』というものの話をしていた。
紘深「スポラディックE層発生を教えてくれるアプリとかあればいいのにね~…」
兎愛「はい…」
戻ってきた俺たち。すると黒藤さんはこんなことを言い出した。
「FMもいくつか試してみたんだよね?兎愛ちゃん。」
「はい。よかったら見てみますか?さっき斎藤さんには見せたやつですが。」(紘深にスマホのメモを見せる兎愛)
「ありがとう。」
(しばらく兎愛のスマホのメモを見る)
「そうだ。じゃあ兎愛ちゃん、せっかくだから、神奈川県内のコミュニティーFM全部拾ってみない?」
「いいですねそれ!」
そんな黒藤さんの提案から、暑さからか少々疲れていた北条さんにまたスイッチが入った。
兎愛(スマホの検索欄に「神奈川県 コミュニティーFM」と打ち込み、検索をかける)
北条さんは神奈川県下にあるコミュニティーFM局について検索。すぐに全部分かった。
ちなみにだがこの都筑区にもコミュニティーFM局の構想もあったらしいが、いろいろ混乱があった末に計画が頓挫してしまったという過去があったという。
北条さんはその脇でダイヤルを回す。
まずは横浜市内の局から攻略していこうという北条さん。隣の青葉区から行くことにしたという。
「84.1」と出ているラジオのディスプレイ。蝉の声が鳴り響く中、北条さんのラジオに繋がったイヤホンからはノイズが若干混ざってはいるが音楽が聞こえてくる。
兎愛「やった!やっぱり隣(の町)だから電波拾えてる!」
紘深「よかったね。その調子で他のところもいっちゃおう。」
兎愛「はい!」
北条さんはますます楽しそうになっていく。
兎愛「これも!」(ディスプレイの表示、「86.1」)
(雑音交じりではあるが音楽が聞こえてくる)
兎愛「よし!」
(スマホにメモを取る)
兎愛「!!」(ディスプレイの表示、「83.7」)
(雑音交じりで聞こえてくるパーソナリティーのトーク)
兎愛「やった!」
(スマホにメモを取る)
兎愛「いけるかな…」(ディスプレイの表示、「83.6」)
(雑音しか聞こえてこない)
兎愛「うーん…」
紘深「ちょっと貸して。」
(紘深、兎愛から渡されたイヤホンを耳に入れる)
紘深「やっぱり戸塚の(コミュニティーFM局)と周波数近いのと、あとそこ出力2Wしかないから…」
兎愛「そうですね… たぶん紘深さんが2つ目に言った方の可能性が高そう…」
神奈川県内のコミュニティーFMの電波が入るか試している2人。俺はその様子をただ見ていた。
たまに、音楽かなにかが聞こえるかどうかを聞かれることはあったけど。
兎愛「斎藤さん、音楽か何か聞こえますか?」
良哉「うーん… 雑音しか聞こえねぇな…」
かれこれ神奈川県内で出力が10W~20WのコミュニティーFM局は、辛うじてというところも含めて電波を拾うことができた。神奈川だけでなく、東京のコミュニティーFMもいくつか拾えたようだ。
兎愛「今日はこの辺にしておこうかなって思います。」
紘深「もしこの辺でもっと開けているところがあったら、そっちでも試そうかなって思ってる?」
兎愛「あ、はい!」
良哉「キャンプ場なんかいいんじゃね?」
兎愛「よさそうですけど、できればこの辺近辺で済ませたいですね…(苦笑)」
紘深「だったらさ、みんなでキャンプ行こうよ!藤堂君込みで!」
良哉「俺と藤堂の立場はどうなるよ…」
そして俺たちは北条さんと分かれた。
紘深「じゃあね。」
兎愛「また明日です。」
良哉「じゃあな。」
そして次の日。
良哉「ああおはよう2人とも。」
紘深「おはよう斎藤君。」
兎愛「おはようございます…」
北条さんはとても眠そうだ。
「どうしたの北条さん?」
「実は、夜中にもラジオ試してて… 福岡の方の拾えました…」
「それはよかったね… でも、昨日何時ごろに寝たの北条さん?」
「4時くらい…」
「ちょ… 4時って… この間の黒藤さんかよ…」
話を聞いていて、俺は夏休み最初の月曜日の部活の時の黒藤さんのことを思い出していた。
~回想・夏休み最初の月曜日~
紘深「おはよー…」
紘深「夢中になっちゃってたらついね(苦笑)オープニングも聴けちゃったとこがあって、オープニング聴いてすぐ寝た感じ。」
~回想終わり~
夜中にもラジオを使って、日中拾えなかった局の電波が拾えるか試した北条さん。話題に上がっていた福岡のラジオの他にも、AM・FM・コミュニティーFMとも、結構電波は拾えたようだった。
兎愛「でも私、夜中にラジオをいじるの一度やってみたかったんです。だからとっても満足で…」
紘深「ちょちょちょ…!寝ちゃダメ!寝ちゃダメだよ兎愛ちゃん…!」
良哉「とりあえず、コーヒー買いに行こうか…」
私もBCLラジオ欲しいなあ…




