表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/247

第59話「黒藤LIVE!?」

ある日バイト帰りに瑞寿司を訪れた良哉。

そこで良哉は店主にして紘深の父親の大智から、紘深に関するあることを告げられます。

ある日のバイト帰りの電車の中、俺は適当にスマホでラジオのプロ野球中継を聴いていた。

「へー今こういうのもあるんだー」と思っている俺。それは検索サイトにあった音声ライブ配信アプリの広告だった。自分でできる配信といえば前はYouTubeだけという印象があったが、いろいろ増えたんだなと俺は思っていた。


時間は夜8時。簡単に瑞寿司で済ませるか。昨日サイドメニューに野菜の天ぷらセットが追加されたようで(黒藤さんがLINEで教えてくれた)、それが楽しみというのもある。


大智「いらっしゃい。お、斎藤君か!」

良哉「こんばんは。」


いつものセットと野菜の天ぷらセットを頼んだ俺。

大智「いやー新しい天ぷらセット斎藤君が頼んでくれるなんて嬉しいよ。」

さつまいも・ししとう・なす・カボチャの天ぷらが2つずつ。サクサクしていて美味しい。



大智「そういえばね斎藤君。」

食事を続けていると、おじさんが俺に話しかけてきた。

良哉「ん。おじさん?」

大智「ああ。最近良哉がね、なんかラジオ的なライブ配信やりたいとか言ってるんだよ…」

良哉「配信…ですか?」

大智「ああ。なんかいろんなラジオ聴いててやってみたくなったとか言っててね…」

良哉「音声のみのライブ配信ってやつか… それってなんかのアプリですか?」

大智「いや。普通にYouTubeなんだけど…」


黒藤さんはどうやら、最近YouTubeで音声配信をやりたいと思っているようだ。ラジオ番組を聴いていてやりたくなったというのも、黒藤さんらしい。


大智「まあおじさんは止めなかったよ。顔は出さないということだし、なにせ良哉のことだ。きっと地方のテレビ局の面白そうな話とかだろうからね。(苦笑)」


おじさんも黒藤さんがどんなテーマでやるのかは、大体読めていたようだ。俺も別に驚きはしなかった。



次の日。大学の夏休みの課題の資料を渡すべく、黒藤さんの家にお邪魔した。


(何かを喋っている良哉)

リビングのドアの向こうから、黒藤さんが一人で何かを喋っている声が聞こえてくる。きっと配信のリハーサルだろう。俺は気を遣って、終わるまで待つことにした。


黒藤さんの喋りが止まったのは俺が2階に着いてからおよそ3分後のことだった。


(ドアが開く音)

すると、黒藤さんがドアを開けて黒藤さんがこっちに来た。

紘深「あ斎藤君!来てたの?」

良哉「ああ。課題の資料の件でね。そうだ。配信のことおじさんから聞いたよ。」

紘深「本当?ありがとうお父さん!」

良哉「さっきなんかいろいろしゃべってたのって、それの練習?」

紘深「うん!どうせならさ、明日練習に付き合ってよ。」

良哉「明日?」

紘深「うん。連続で練習したら喉痛めちゃうだろうから。」


黒藤さんには配信に相当な自信があるようだ。


次の日。俺は黒藤さんの配信の練習に付き合わされた。PowerPointのプレゼンテーションを動画に変換して保存し、それをネットに上げる予定であるという。

内容は大分県のテレビ局に関する話がポンポン飛び出す、そんな感じだ。途中つっかえたり澱んだりというところはなかった。


紘深「ふぅ〜… 練習終わり。」

良哉「うん。特に噛んだりとかはなかったね。スライド切り替えのタイミングも適切だったし。大丈夫かも。」

紘深「ありがとう斎藤君。私も最初はね、スライド切り替えのタイミングとか結構苦戦してたんだ…」

良哉「いつぐらいからそういうのやりたいって思うようになったの?」

紘深「6月くらいからだよ。」

良哉「6月?おじさんは最近って言ってたけど。」

紘深「あああれはお父さんお母さんに『動画配信やりたい』って言い出したタイミングのこと。それまでは2人には黙ってたから。」

良哉「ライブ配信じゃないの?」

紘深「うん。ライブはもうちょっと経験積んでからにしたいな。」


黒藤さんが動画配信を志したのは、なんと2ヶ月ほど前からのことだったようだ。


さらにその次の日。部活の帰り道でのこと。

幸太郎「なあ斎藤。」

良哉「ん?どうした藤堂?」

幸太郎「聞いた?黒藤がYouTuberになるとか言う話。」

良哉「ああ俺も聞いた。俺はおじさんから聞いたんだけど。お前は?」

幸太郎「俺は北条から聞いた。何やらあさってにも動画上げるっぽいんだ。ソースは北条。」

良哉「北条さんも結構動いてる的な感じなのか…」


俺は黙っている中であることを思いついた。


良哉「どうせならさ。動画一緒に見てみる?俺実は昨日課題渡したついでに練習に付き合わされてね。」

幸太郎「ああいいぜ。2人で突っ込む的なやつ?(笑)黒藤が知ってる関西の番組にそんな感じのがあった気がするけど。(笑)」

良哉「まあそんなもんかもな(苦笑)」

幸太郎「だな(笑)ああそうだ。これ見てみ?」


藤堂はおもむろにスマホを見せてきた。黒藤さんのTwitterだ。「「MahiroChannel」近日始動!」とかいうツイートが固定ツイートに貼られていた。


良哉「俺これは初めて見る…」

幸太郎「俺もちょっとびっくりしたよ… 本人的にも相当な力の入れようなのかな…」



そしてその2日後の夜7時45分くらい。

幸太郎「おーっす。」

家に藤堂がやってきた。藤堂は北条さんからの情報で、夜8時に動画を上げることを把握していたという。その藤堂は、コンビニで買ったパンを4つ持ってきている。


幸太郎「せっかくだからこれ食いながら見ようぜ。」

良哉「まあそうだな。」


プレミア公開のカウントダウンをドキドキしながら見守る。見ているこっちも少し緊張する。

夜8時頃。プレミア公開のカウントダウンが0になり、動画が始まった。


良哉のアバター「はいどうもー!皆さんはじめまして!MahiroChannelついに始動ですー!」

幸太郎「始まったか…」


黒藤さんとほぼそっくりの女性のアバターが黒藤さんの声でしゃべっている。黒藤さんはまず自分の自己紹介から始めた。家が寿司屋であることにも触れていた。(瑞寿司の名前は出さなかったけど)


紘深「私が大好きなものはなんと… じゃん!地方のテレビ局!」

ということを、スライドつきで話す黒藤さん。藤堂はその脇で

幸太郎「本題が来たか…」

と呟いていた。俺も同じことを考えていた。


そして黒藤さんはこんなことを言った。

紘深「皆さん、大分県ってありますよね?」

ここから先は俺も練習に付き合ったゆえに知っていることだ。


紘深「今回は地方のテレビ局を好きになってもらうための第1弾として、大分県のテレビ局の面白いところをお話ししたいと思いまーす!」


そこからは大分県にあるテレビ局の編成に関する話がいろいろ続く。黒藤さんの話している声は、練習の時以上にとても楽しそうだ。


藤堂はというと…

幸太郎「俺たちは黒藤からよく聞いてたから知ってる話になるわけだが… 初めてこれを聞く人たちにとっては斬新に感じるんじゃないかそのテレビ局の編成は。」

良哉「そうかもな。てかそもそも黒藤さんのTwitterのフォロワーの人たちが多く見てそうな気もするよ。」

幸太郎「じゃあ知ってる人が多く見てる可能性も高いって訳だな(笑)」


動画は10分くらいで終わった。


そしてその次の日の午後3時前、黒藤さんの家。実は俺は今日、3時に家に来てくれと言われている。

良哉「こんにちはー… ってあれ?藤堂に北条さん!」

幸太郎「よお。」

良哉「藤堂に、北条さん?」

幸太郎「ああ。なんかさ、黒藤の配信デビュー記念のパーティーやるとかいう話っぽくて…」

良哉「俺今それ初めて知った…」

幸太郎「ああ。実は俺も、お前や北条が来るってのはここで初めて知ってね…」

北条「私は知ってました(満面の笑み)」


ただ普通に「家に来て」とだけ言われていた俺。動画関係のことかというのはある程度察せていたがまさかの配信デビュー記念のパーティー。ドッキリ企画にはめられたかのような気分だ。


黒藤さんがやってきた。

紘深「お待たせー。」

兎愛「良哉さん、配信デビューおめでとうございます!」

紘深「ありがとう兎愛ちゃん。」


そうしてパーティーが始まった。黒藤さんに振り回されたのは久しぶりだ。


紘深「ねえ見てこれ。」

黒藤さんがスマホを見せてきた。それは昨日上げた動画だ。


再生数はおよそ4000回というところ。低評価0で高評価20。悪くない出だしかもしれない。


良哉「黒藤さん、そのままVTuberとか狙ってる感じ?」

紘深「そこまでは狙ってはいないかな今のところは。」

と言う黒藤さん。そういうことなら、上出来な出だしだろうと思う。


紘深「でもやっぱり、いつかはライブ配信もやってみたいな。」

とも言う黒藤さん。

幸太郎「やっぱり黒藤のことだから、地方のテレビ局についての生講義的なやつなんじゃないの?(笑)」

紘深「分かっちゃった?(笑)」

兎愛「そうだ!昔の番組表とか紹介するなんてのはどうでしょう?」

紘深「いいねそれ!ありがとう兎愛ちゃん!」

兎愛「いえいえ!私も協力します!」



黒藤さんの動画の今後について大盛り上がりな彼女と北条さん。それを見ているだけの俺と藤堂。並々ならぬ温度差が、そこにはあった。


(俺は現状見てやることしかできないけどな…。近いうちにまた国会図書館行くか…)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ