第54話「兎愛タイム~ひとりの時間?~」
今回は、兎愛が今まで見せたことのない一面が明らかに!
(それにあたり、11話の後書きを一部修正しました。)
夏本番に近づいたある日、黒藤さんがキャラ弁を持ってきてから3日が過ぎたことだった。
「おいおいおいマジかよ…」
俺が大学内の掲示板を見て唖然としていた。俺がとっている授業が全部休講になったのだ。朝家を出る前もそんな連絡は来ていなかったからびっくりだ。
「とりあえず今日一日暇じゃん… でもバイトは夜からだしどうするか…」なんてことを考えていたら…
「おはよう斎藤君。」
黒藤さんだ。
「おはよ。黒藤さんもまさか今日の授業全滅?」
「うん…(苦笑)斎藤君も?」
「ああ… だからこの後どうしようか考えてて…」
「とりあえず図書室行こうかなって私も思ってて… だったら斎藤君も一緒に行く?」
「じゃあ俺もそうするか。」
とりあえず、俺は黒藤さんと一緒に大学の図書館に行くことにした。
大学の図書館で一緒にいろんな地域の地方紙を読む。
「あーこれこの回じゃん!」
沖縄の新聞を読んでいて何かに反応した黒藤さん。あるバラエティー番組で先日人気の声優さんがゲスト出演して話題になった回が今日沖縄で放送されると書いてあったのを見つけたようだ。
一緒に新聞を読むこと1時間と少し。かれこれ1限目は終わるはずの時間になった頃、俺たちは図書館を出た。
これから国会図書館でも行こうかと話していたところだった。
「ねえ斎藤君…」
黒藤さんが急に口を開いた。
「あれ…」
彼女はエレベーターを待っている人の列に指をさす。
「どうしたの?」
「あれ兎愛ちゃんじゃない?」
列の中にどうやら北条さんがいるらしい。
俺は見てみる。たしかに北条さんだ。
「兎愛ちゃんもたしか1限以外全滅になっちゃったんだよねー。」
北条さんもどうやらさっきの授業以外は全部休講になってしまったという。俺に話しかける前に北条さん本人から連絡が来てたという。
「せっかくだから、エレベーターホールで待ち合わせしようよ。」
「まあ。別にいいけど…」
俺たちは階段で1階に先回りし、エレベーターホールで待つ。
エレベーターが1階に着き、乗っている人たちがゾロゾロと降りてくる。
兎愛「あ!斎藤さんに紘深さん!」
紘深「やっほー。」
しばらく3人でいろいろおしゃべりする。突然の休講については北条さんも
「休講になったのみんなテストが帰ってくるはずのだったから、どうなっちゃうのって思ってまして…」
と言った具合で、驚きと困惑を隠せていないという。
兎愛「そうだ。私この後駅前のカフェに行くんですけど、一緒にどうですか?」
紘深「駅前のカフェってあの本屋さんの近くの?兎愛ちゃん1人の時はよくそこ寄ってるけど。」
良哉「そこってあの本屋に併設されてるとことは別の?」
兎愛「はい!せっかくなのでお2人もどうですか?」
良哉「俺あのカフェは初めてだな…」
俺たちは、北条さんが一人で帰る時に寄っているカフェに行くことになった。
7月だからアイスもののメニューが多い。とりあえず俺はアイスコーヒーを頼むことにした。黒藤さんもアイスコーヒーだ。
一方北条さんはというと…
店員「アイスコーヒーとホイップクリームがけティラミスハニートースト、それにミニトーストのプレーン味をお願いします。」
「北条さんどれだけ選んでるんだ…」と思っている俺。黒藤さんは平然な顔をしている。
しばらくして北条さんが頼んだものが運ばれてくる。
「!!」
俺はびっくりした。北条さんが頼んだ「ホイップクリームがけティラミスハニートースト」、そのクリームのボリュームが半端ではないのだ。ソフトクリームかよと思うくらいだ。
黒藤さんはやはり平然な顔をしていた。
「北条さん… すごいクリームだね…」
と俺は言った。
「そうですか?(笑)私のいつものお気に入りメニューなんです。」
という。
北条さんはハニートーストを美味しそうに食べている。10時のおやつにしてはボリュームがデカすぎるが。
そしてハニートーストを食べている間、北条さんと黒藤さんは地方局の話でいろいろと盛り上がっていた。
40分ほどで北条さんはハニートーストとミニトーストを完食し、カフェを後にする。
実は黒藤さんもこのカフェに来たことはあるようだが、北条さんと一緒は今日が初めてだったという。
カフェを出た北条さん。「次はどこ行こうかな」と言う雰囲気だ。俺たちは北条さんに連れられ、近くの本屋に立ち寄った。北条さんはアニメソングコーナーに夢中だった。
そして俺たちは本屋を出た。
「もうすぐお昼だから、大学に戻りましょう。」
と言っていた。その通りに大学に戻る俺たち。行く先は(当然)学食だ。
俺は今日はうどんを選んだ。
北条さんはというと…
俺がいつも頼むカツカレーを選んでいた。
良哉「大丈夫?さっきあれだけ食べたのに。これMサイズでしょ?」
兎愛「大丈夫です。甘い物は別腹ってよく言いますし。」
紘深「Mサイズなら大丈夫だよ。だって兎愛ちゃん、たまにLサイズ頼むこともあるから。」
良哉「え、Lサイズ!?」
俺はびっくりした。北条さんがこのカツカレーのLサイズを選ぶことがあるなんて。カツのボリュームがかなりでかいことで有名なここの学食のカツカレーのLサイズなんて、俺は去年黒藤さんと出会うよりも前、ひどく腹が減っていた時の1回しか食べたことがない。
カツカレーを食べながらいろいろおしゃべりをする2人。俺はその様子を見ながら「北条さんすげえな…」と思って食事をすることしか、俺はできなかった。
20分ほどで食事を終えた俺たち。
「兎愛ちゃんこの後どこ行くの?」
と北条さんに聞く黒藤さん。
「はい。渋谷に行こうかと思ってます。」
北条さんはこの後一人で渋谷に行くという。すると、黒藤さんはこんなことを言った。
紘深「ねえ斎藤君。」
良哉「ん?」
紘深「せっかくだから、ついていっちゃお。暇だし。」
良哉「えっ!?」
北条さんが渋谷に行くのについて行こうと提案した黒藤さん。俺はびっくりしたが、それに対して…
兎愛「いいですよ。」
と、北条さんは言った。俺はさらにびっくりだ。
俺たち3人は電車に乗って渋谷へ。到着後俺たちが行くのは、渋谷のスクランブル交差点とは反対側だった。
良哉「ここ?」
兎愛「はい。」
映画館も併設されている家電量販店。そこの5階だという。
俺たちはエレベーターに乗り、5階へと行く。そこにはガチャガチャやらデータカードダスのゲームがいくつかあった。日曜の朝テレビのCMで必ず目にするやつもある。
北条さんは、まさにその日曜の朝テレビのCMで必ず目にするデータカードダスで遊び始めた。バッグから取り出した名刺入れの中にはそのゲームで使うカードがいくつも入っていた。相当やっているのは事実だ。
「北条さんこういうのも好きなんだ…」と俺は思っていた。北条さんの意外な一面の発見だ。
北条さんはゲームに勝った。
「黒藤さんもここは初めて?」
「ううん。今日が3回目くらいかな。」
黒藤さんはこう続けた。
「2回ともそのゲームの対戦プレイをしたの。」
黒藤さんは過去2回、北条さんがそのゲームの対戦プレイをしたことがあるという。
続いて俺たちは、スクランブル交差点を歩き、渋谷センター街を歩くこと何分かのところにあるアニメショップに寄り、ビルの下にあるタピオカミルクティーの店でタピオカドリンクを飲んだ後、そのビルのすぐ近くにある大きな店に寄った。俺が春に調理器具を見にに行った店だ。
せっかくなので調理器具のフロアを案内した。
兎愛「このお店本当にいろいろあるんですねー。スーツケースのフロアもありますよね。」
良哉「ああ。俺初めてここ来たときは迷っちゃったなー。で北条さん、北条さんはいつもどのフロアに行ってるの?」
兎愛「絵筆とかがあるフロアです。」
俺たちはエレベーターに乗り、画材などを売っているフロアに行った。
兎愛「これとこれ下さい。」
北条さんはぱっと見サインペンのような絵筆をいくつか買った。その後は時計を売っているフロアに行きそこでウィンドーショッピングをした後、そのまま階段で出口まで行った。
何やら北条さんは最近、撮った写真に絵の具やペンなどでいろいろ描き足すというのにハマっているようだ。実際にそのうちの1枚を見せてもらった。
良哉「なんか本当にスマホで加工したみたいだね。」
兎愛「ぶっちゃけ、スマホで加工するより手描きで加えた方が確実なんですよね(苦笑)」
良哉「俺も若干分かるかもそれ(苦笑)」
家に帰るという北条さん。俺たちも帰ることにした。
駅のアナウンス「間もなく、4番線に、湘南新宿ライン、快速、小田原行きが参ります。」
紘深「また明日ね。」
北条「はーい!」
駅のアナウンス「4番線、ドアが閉まります。ご注意ください。」
北条さんはというと、本当に楽しそうな表情だった。「これが、私の一人の時間です。」とも伝わらんばかりの雰囲気を感じていた。
翌日、学食。
兎愛「あ、こんにちは斎藤さーん!」
北条さんは、カツカレーのLサイズを食べていた。




