表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
上京男子と地方局マニアの女子  作者: 白石あみの
〜1年生編 Part2〜
39/249

第36話「染まりすぎてるよ、北条さん」

ある週末のバイトの帰り道、家の最寄駅で紘深にばったり会った良哉。

なんとそこには兎愛も一緒にいて…

黒藤さんと一緒に、ゼミの女子三人組のハガキ書きを手伝ってから数日が経った土曜日のこと。

時刻は夕方の6時半くらい。俺は朝から一日バイト。シフトの時間が全て終わり、家の最寄り駅に着いたところだった。


そこへ…

「あ、斎藤君!」

黒藤さんとバッタリ会った。しかも…

「斎藤さん。お久しぶりです!」

なんと北条さんも一緒だ。

「お久しぶりー。」

北条さんに挨拶を返したとともに俺は思い出した。「そういえば今日は大学のオープンキャンパスの日だったな」ということを。


「今日一日一緒だったんだ。」

「それってオープンキャンパス?」

「そうです。もうすぐ大学に進学するということですので、改めて大学を見て見ようと思ったんです。」

「そうだったな。」

「はい!」

俺たちと同じ大学に受かったということを大晦日に話していた北条さん。「進学を決めた人の目線で大学を見たい」からかどうかは定かではないが、「もうすぐ進学するから」ということで改めてオープンキャンパスという機会でに大学に足を運ぶということに、北条さんの意識の高さを感じた。


「で、2人は今からどこに?」

「瑞寿司です。せっかくだから斎藤さんもどうですか?」

「うーん…」

時間はもうすぐ7時。思えば晩ご飯も特に考えないまま俺はバイトに行った。

「じゃあ俺も行こうかな。」

せっかくだから、俺も行くことにした。

「わーいやったー!」


「こんばんはー。」

「ただいまー。」

瑞寿司に着いた俺たち。夕食時ということだからか、中にはそこそこのお客さんがいる。


「いらっしゃい!お、今日は兎愛ちゃんも一緒か。」

おじさんが出迎えてくれた。北条さんを知っていたおじさん。聞いたところ、どうやら俺が知らないところで北条さんも何度か瑞寿司に来たことがあるという。


俺たちは4人掛けの席に案内された。

俺は1,000円ちょっとのセットを注文する。北条さんはというと…

「いつものと、今回は+であじをお願いします。」

「あいよ。」

(『いつもの』って何?)と思った俺。しばらくして北条さんのもとに運ばれてきた寿司下駄の上に乗っていたものは…

「ありがとうございます!いただきます。」

えび・玉子・いわし・いくら・中トロ・甘エビ・サーモン・鉄火巻き・かつお・いか・たこ・ねぎとろ・あじ

の13貫。俺が食べてきたセットメニューにはなかったラインナップだ。


「黒藤さん、北条さんのそれセットメニューにあったっけ?」

「そうだった斎藤君、兎愛ちゃんと一緒にここは初めてだよね。実は初めて来たときにあじ以外の12貫食べたんだけどそれが特に美味しかったみたいで、お母さんが兎愛ちゃん限定のセットメニュー組んでくれてたんだ。」

「マジか…」


いつの間にか北条さんともつながりができていたようだ。

少し遅れて俺が注文したセットもきた。おじさんは()()()()()()をプラスしてくれた。


俺の目の前の席で、本当に美味しそうに寿司を食べる北条さん。

「そうだ斎藤さん。実は私大学進学を決めてから、紘深さんと地方のテレビについていろんなことを勉強しているんです。」

と、北条さんは思い出したように俺に話しかけてくる。

いきなり同然の状況で話しかけてきたから最初はあまり実感が湧かなかったが、よくよく思えば「黒藤さんと地方のテレビに関するいろんなことを勉強している」ということに、俺は…

「マジでかよ…(笑)」

と思った。

受験が終わったわけだから自分のやりたいことをやりたいのはまあ理解できる。実際俺も大学に受かってからはというと高校の学年末テスト前以外は趣味のことばかりしていたクチだ。でも、「地方のテレビについていろんなことを勉強している」という字面にはインパクトしかない。黒藤さんとネットでもリアルでも一緒な北条さんなら頷けるけど。


「そうなんです。」

と言って、北条さんは地方のテレビについていろいろなことを語り始める。大分県と宮崎県のテレビ編成がカオスであること、昔の長崎県のテレビ事情、地方のAMラジオの編成… とまあとにかけさまざまなものを。


「そうだこれ。」

話が続く中、北条さんはスマホを見せてきた。

「これは…」

そのスマホの画面には、Excelで作った何かカラフルなものが映っていた。

北条さんが見せて来たもの、それはExcelで作った、1991年のテレビ○分の番組表だ。番組名が書かれたマス目はバラエティ・ドラマ・ニュースとジャンルごとに色が塗り分けられていて、非常にカラフルだ。月曜の夜にはテレビの懐かしのドラマ特集で必ずと言っていいほど取り上げられるようなやつがある。主人公がある夜恋人の前で、道路を走ってくるトラックの前に飛び出す場面が有名なあれだ。


「これ…北条さんの自作?」

「はい!」

北条さんは満面の笑みで言う。

「他にもありますよ。一旦返してください。」

と言われ、俺は北条さんに一旦スマホを返す。その後再びスマホを渡されると…

「ちょっとこれ…」

クラウド端末に保存されたたくさんのExcelのデータ。それらはみんな、北条さんがExcelで手作りした各地のテレビ局の番組表だ。47都道府県全てではないけれど北は北海道南は沖縄まで網羅しており、過去当時のものもある。その中には俺が小学生くらいの頃のぎふ○ャンのものもあった。


「北条さんも凄いね…(汗)」

「えへへ。ありがとうございます。」

「ところでさ… 昔の番組編成って、どうやって見つけたの?」

「それですか? 国会図書館に行って取ってきました。昔の新聞とか読むことができて。」

「国会図書館?」

「はい。紘深さんに教えてもらったんです。」

「実は私も持ってるんだ。じゃーん。」

そう言って黒藤さんは、国立国会図書館の会員カードを見せてきた。

「2人ともすげえ…」

紘深「えへへ。」

兎愛「いひひ。」


もともと両親の仕事の都合でいろんなところを転々としていたこともあって地方のテレビ局についてはある程度は知っていた北条さん。そんな彼女は確実に黒藤さんに染まってきている、つまり「地方のテレビ・ラジオ局の沼にはまってきているな」ということを感じた。悪いとは言わないけど。



食事を終えて支払いを済ませ、家に帰る俺。その途中、「国会図書館」というワードから、昨日出たばかりの学年末のレポート課題のことを俺はふと思い出すのだった。

私も国会図書館には大学のレポート書きとかで何度か行ったことがあるんですが、息抜きに地方のテレビ局の社史や地方の新聞を読んでました。


次回は良哉がついに、あの場所に足を踏み入れます!(いかがわしいところではありません)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ