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上京男子と地方局マニアの女子  作者: 白石あみの
〜1年生編 Part2〜
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第31話「帰って来た上京男子」

良哉が東京に帰って来てから一夜が明け、大学の授業が再開。

そんな良哉たちの大学生活が、再び始まります!

「斎藤くーん!」

俺が岐阜から東京に戻って来てから一夜が明けた1月4日。今日からまた大学が始まる。

といっても午前中にとっている講義が大学の先生の正月休みの都合で休講だから、授業は午後からだ。


午前10時過ぎ。いつもの駅の前で待ち合わせだ。

「黒藤さん。あけましておめでとう。」

「おめでとう。」


黒藤さんと面と向かって会うのは久しぶりだが、実家にいる間もLINEとかで連絡したりSkypeで話したりはたまた年賀状ももらっているから、久しぶりに会うという感じがしない。


「これ。岐阜のお土産なんだけど。」

そう言って俺は、黒藤さんに岐阜のお土産を渡した。小倉あんの缶詰め、五平餅、昨日の岐阜と名古屋の新聞、岐阜駅前にあるテレビ局のタイムテーブル…


「待ってこんなに!?ありがとうー!」

黒藤さんは本当に嬉しそうだ。

「ああ。」


俺たちは改札を通って、いつも通りの電車に乗る。


そんな中で、俺はふと口を開いた。

「そういやさー。元日に俺んちに黒藤さんのお父さんがお茶贈られた時ね。ちょっとびっくりしちゃったよ。」

「えっ?」


黒藤さんは少しびっくりしたような感じだった。

(あれ?俺何言ってんだ!?)

俺も内心びっくりしている。黒藤さんと出会って3ヶ月。思えば何の話題もない状態で俺から先に口を開いたのは初めてだ。


「そうだったやっぱり?(笑)あれ実はね、うちにお店のあがりに使っているお茶を売っているお茶屋さんのね、一番高いやつなの。」

「マジで? 失礼かもしれないけど… いくらぐらい…なの?」

「4つ合わせて2万円。しかもそれ伝統本玉露だし。」

「高っ!!しかも玉露だったのあれ!?」

「うん。」


俺はすぐさまスマホで「伝統本玉露」について調べた。

伝統本玉露。簡単に言うなら、福岡の方で栽培されている、農林水産大臣賞を何年か連続で取ったことがあるほどのすごく豪華な茶葉らしい。


「俺もお茶は好きだよ。でも俺それ、昨日の夜家で初めて飲んだ… 黒藤さんは、それ飲んだことあるの?」

「うん。何度かあるよ。斎藤君は伝統本玉露飲んでみてどうだった?」

「なんだろう。一言で言うなら、酔っぱらっちゃいそうなくらい美味しかった。」

「酔っぱらいちゃいそうなくらい(笑)」

「だって…(苦笑)」


俺は思っていた。「初めて瑞寿司に行った後に、急須でのお茶の淹れ方を練習しておいてよかった。」と。


そうこうしているうちに大学だ。

新年初日の大学ということもあって、大学の学食はいつもよりも混んでいる。

「すげぇ…」

俺はいつものようにラーメンの食券を買った後、それを持ってラーメンを受け取るところへ向かう。

しかし、後ろにはなんと黒藤さんが並んでいた。

「黒藤さんも今日ラーメンなの?」

「うん。」

二人で注文が被るのは初めてだなと思いながら、俺は醤油ラーメンを受け取り確保した席へ向かう。

すると…

黒藤さんが持ってきたものも、俺と全く同じ醤油ラーメンだった。


「わーい!斎藤君とお揃いだー!」

黒藤さんは嬉しそうだ。まるで仲の良い友達がお揃いの服を着ていたかのように。

「頼んだものが偶然全く同じだなんて、初めてだな…」

「えへへ。」


食事の間、黒藤さんは年末年始にあったことをいろいろ話してくれた。大晦日に店に来たお客さんが、店の中に飾ってあった黒藤さんお手製のテレビ局のマスコットキャラクターのラミネート飾りを見たところ、その人がその局がある地域出身だったようで、懐かしいと大絶賛だったという。


食事をしていると…

「よお!」

藤堂がやってきた。

「あけおめ。」

「藤堂君。」

「藤堂。昨日はありがとうな。」

「藤堂君どうかしたの昨日?」


不思議そうに聞いてくる黒藤さん。

「藤堂のやつな、わざわざ岐阜まで来て俺の事迎えに来てくれたんだよ。」

「本当!?まさか斎藤君のお出迎えをするために?」

「うん。」

「楽しかったぜ。」


俺はせっかくだから、藤堂に聞いてみることにした。

「昨日聞かなかったんだけどさ、お前何時ごろ岐阜に着いたの?」

「岐阜到着?2時半くらい。」

俺は驚いた。藤堂は俺を待つわずか30分のためだけに、東京→岐阜間の往復交通費1万3千円を使ったということを

「おまちょマジかよ(爆笑) 1万3千円近く使った上で30分ちょいしか岐阜にいなかったってこと?」

「うん。」

「ウソだろ(笑) 一日暇だったなら午前中に来て駅前散策とかしてもよかったのに… 金華山とかもあるし…(笑)」

「だって俺、起きたの10時くらいだったから。」


「まあそうなるよな…」


食事を終えた俺は一旦黒藤さんや藤堂を別れて図書室へ。そこでしばらく時間を潰した後講義へ向かう。実は今日唯一の講義。それも例のレポートが出ている講義だった。

講義の後にレポートを提出する俺たち。年末年始休みの間に時間をかけて作ったレポート。提出する時の達成感はやっぱり気持ちが良い。


昼食にラーメンを食べてはいるものの、やはり久しぶりの大学の授業はお腹がすく。

「レポート提出記念に、3人で寿司でも食いに行くか。 黒藤。店の予約とか大丈夫?」

「うん。実は3が日終わったら予約スッカスカで…(汗)」

「お、じゃあなおさら行かなきゃな!」

「ありがとうー!」

藤堂のこのテンションもいつも通りだった。


瑞寿司に着いた俺たち。

「いらっしゃい!」

「ただいまー。」

「お邪魔しまーす。」

店の中にはおじさんがいた。

「みんな!あけましておめでとう!」

「あけましておめでとうございます。お茶、ありがとうございました。」

「いいってことよ。」


黒藤さんが居住用スペースに戻っていくため彼女と一旦別れた後、俺と藤堂はいつものカウンター席に座る。年明けまもない上にバイト代がまだ入ってきていないしもらったお年玉も家の貯金に入れたこともあって、今千円と少ししか持っていない俺は安めのセットを注文した。400円くらいで済む、5貫くらいしかないやつだ。


「せっかくの新年だ。サービスするよ。」

そう言っておじさんは、俺が頼んだセットの次に高いやつのものを3貫握ってくれた。

「あ、ありがとうございます。」


客は俺たちだけ。

「そうだ。このあがりね、高級な茶葉を使っているんだ。斎藤君の実家にも送ったやつ。」

「マジすか(笑)斎藤よかったな!」

「ああ… とっても美味しいからさ。飲んでみな。酔うぞ。」


俺がそう言うと、

「お茶で酔うって(爆笑) まあ俺玉露は初めてだしな… 昔はお茶で酔っぱらう人もいたそうだし。」

と言いながら、藤堂は一口お茶を飲んだ。

「どう?」

(藤堂が無言で頷く)

「本当だ!マジで酔っぱらいそうなくらいだ!」

「だろ?」


またいつも通りの日々の始まりだ。北条さんが4月には入学してくる今年。今年は一体、どんなことが起きるのだろうか。

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