第28話「斎藤さん贈りモノです!」
年明けに貰うものと言えば、今はスマホのおめでとうメールや年賀状が多いでしょう。
しかし良哉が紘深からもらったものは、どうやらそれだけではないようで…
テレビの音声「ガッデム!」
1月1日午前0時。年が明けた。
それと同時に、俺のスマホにどんどん連絡が入ってくる。いつものゼミ生はもちろんのこと、高校や中学で一緒だったやつらのうちLINEやメアドを交換済みのやつまで。
テレビを横目に俺がそれに返信・反応していると…
「斎藤くーん!あけましておめでとう!」
俺や黒藤さんたちのグループにかわいらしい門松のスタンプとともにメッセージを送ってきた人。黒藤さんだ。
「あけましておめでとうございます!」
「今年もよろしくな!」
北条さんや藤堂も遅れてメッセージを送ってくる。
「ああ。」
と俺は返信した。
返信を一通り終えると、俺は思い出した。
「そういや黒藤さん、俺に年賀状書くって言ってたっけな。」
実は出発の前日、俺は黒藤さんから住所を聞かれていた。年賀状を送りたいかららしい。
~回想~
「斎藤君に年賀状送りたいから… ちょっと住所…教えて欲しいな…」
その後深夜1時頃から、いつも聴いているオー○ナイ○ニッ○ンのお正月特番を3時まで聴いた(関東は5時までだが、東海地区は3時で終わり)後、俺は寝た。
そして朝7時ごろ。俺は家の前で金華山の初日の出を見た。
その後またしばらく二度寝をした。
しかし朝8時半ごろ、母さんと姉ちゃんが興奮している様子で目が覚めた。
「ん~…? 2人ともどうしたの新年早々?」
「どうしたもこうしたも!」
「紘深ちゃんから年賀状来とるのよ!」
「あまり人の年賀状見るなよな。」とも思いながら、俺は母さんから年賀状を受け取った。
「あけましておめでとうございます」
と、筆ペンで手書きしたような字とともに富士山の絵。富士山のイラストの山の部分にはボールペンの字で
「本年もよろしくお願いいたします。
今年も斎藤君やみんなと楽しく過ごしたいな!
あと兎愛ちゃんのこと、よろしくね!」
と書かれていた。文末にはにっこり笑った顔の顔文字もあった。
それにハガキの周りには黒藤さんが手書きで描いた、愛知・三重・岐阜のテレビ局のマスコットキャラクターの小さなイラストが、散りばめられるように描かれていた。
「んなわざわざ名指しかよ…(苦笑)」と突っ込みつつも、「女子からこれほどしっかりした年賀状をもらったのは初めてだな。」と思った。
そんな俺はとりあえず
「年賀状届いたよー。ありがとう。」
と、俺は黒藤さんにLINEで報告した。しかも宛名は家族全員の連名だ。
ここまでされたら俺も返事を書かないと申し訳ない。朝ごはんを終えて歯磨きを済ませると、俺は部屋で一人パソコンを立ち上げて、返事の手紙を作り始めた。
~東京・紘深の家~
(紘深のスマホからLINEの着信音が鳴る)
「ん?」
(良哉からのメッセージ)「年賀状届いたよー。ありがとう。」
「わぁぁ…」
~岐阜・良哉の家~
(良哉のスマホからLINEの着信音が鳴る)
「ん?」
返事が来たのは、ちょうどその年賀状を作っている途中だった。
「よかった!どういたしまして(笑顔の絵文字)」
と黒藤さん。
俺は
「今返事書いてることだから。明日には着くと思う。」
と返事した。
するとすぐに…
「ホント!?」
「わざわざありがとう!(大喜びしているキャラクターのスタンプ)」
「ああ。」
その後年賀状の返事ができるまで、そう時間はかからなかった。俺は家の近くにあるポストに仕上げた年賀状を投函した。ついでに家の近くをしばらく散歩した。
そして家に帰り、テレビを見ながら昼食におせちとお雑煮を食べる。岐阜のお雑煮は、すまし汁に角餅をそのまま煮込むタイプだ。首都圏と同じようなものだ。
昼食を終えて一人部屋でのんびりしていると…
(ドアのチャイムが鳴る音)
「はーい。」
母さんが応対するのが聞こえた。すると…
「良哉!ちょっと!」
「んー?なに?」
玄関から母さんが俺を呼ぶ声が聞こえた。
俺は玄関に行った。
すると…
「おお斎藤。あけおめ。さっきはLINEありがとうな。」
「中川じゃねーか。ああ。」
宅配便の配達員。その人はなんと高校の同級生の中川だった。
中川は小包を持っていた。
「これお前宛のなんだけど…?」
「俺に…?」
中川に言われるがまま、俺は小包に書かれている宛名を確認した。
「あっ…」
俺はその荷物を受け取った。母さんにハンコの場所を聞いてそれを持ってきて、箱の押印欄に押した。
荷物を送ってきた人。それは瑞寿司だ。字の形からして、どう見ても黒藤さんの書いた字だ。
母さんが見ている脇で箱を開ける。
「これって!」
その中には、いかにも高級そうな茶葉の缶が4つ入っていた。
「新年あけましておめでとうございます。良哉君にはいつも、紘深がお世話になっています。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。」
と手書きで書かれたあいさつ状とともに。
「これ有名なお茶よ!私がお返事書くわ!」
「あ、ああ…」
「あんたもスマホで紘深ちゃんにまずお返事送りんさい。」
俺は母さんに言われるがまま、黒藤さんにLINEで小包が届いたことを報告することにした。
「黒藤さん。」
「お茶ありがとう。小包は無事届いたよ。」
それから2分も経たない間に、黒藤さんが返事を返してきた。
「よかった。どういたしまして!」
「どういたしまして」と言われたが、気になることはたくさんある。
「まさかあれ、黒藤さんが用意したやつ?」
黒藤さんはこう返した。
「実はあれ、父さんに『年賀状出すんならこれも一緒に送ってくれないか』って言われたやつなんだ。」
「ネタばらししたら悪いかなって思って。」
「ごめんね!(謝っている様子のキャラクターのスタンプ)」
贈られたお茶はおじさんが用意したものだった。
LINEのメッセージから年賀状どころか、高級なお茶まで貰ってしまった俺。
なんだか俺と黒藤さんの関係が、家族ぐるみの付き合いまでになる時が近づいている感じがした。そんな年明けだ。
-今回初登場の登場人物-
中川
良哉の高校時代の同級生。名古屋の大学に通う大学1年生。地元岐阜で郵便配達のバイトをしている。
趣味はバイクでのツーリング。