第27話「大晦日東岐接続TALK!? 紘深全開Skype」
今日はついに大晦日。岐阜の実家で一人レポート課題を進めている良哉のもとに、紘深からSkypeでおしゃべりをする誘いが届くのですが、話をする相手はどうやら紘深と良哉の2人だけではないようで…
今日はいよいよ大晦日。俺は年末年始休みの課題レポートのうち、岐阜の昔のお正月の特徴のくだりをまとめていた。
それが一区切り着いたところで…
(LINEの着信音)
「ん?」
俺のスマホにLINEの着信が入って来た。
(また黒藤さんか?)
そう思って俺はスマホを開いた。
それには…
「今日大晦日だから、4人でSkypeで話そ。」
というメッセージが、なんと俺と黒藤さん、藤堂、それに北条さん4人のグループLINEに入っていた。
俺たちはゼミでSkypeを使う機会があったからアカウントを持っていて使い方も知っている。北条さんも高校の授業で使う機会があったようだ。
俺は後の2人と共に自分のSkype連絡先を黒藤さんに伝える。続けて黒藤さんが指定してきた時間は今日の夕方4時。俺はその時間は暇だ。そのことを伝えると、後の2人もその時間が大丈夫なことを伝えた。
それが全て済むと、黒藤さんはこんな返事を返してきた。
「分かった。じゃあ夕方の4時待ってるねー!」
と送ってきた。俺はそれに「ああ。」と、黒藤さんに勧められてダウンロードしたスタンプもつけてそれに返事をした。
そのことを母さんに話すと、
「あらみんなでおしゃべりするの?楽しそうね。ええわ。」
と言われた。
そして約束の時間、夕方の4時くらい。
俺は部屋で一人、Skypeを立ち上げて待っていた。すると…
(Skypeの着信音)
着信音とともに、パソコンの画面の上に「黒藤 紘深」「着信」という表示が出てくる。俺は右端一番左のカメラのようなアイコンをクリックする。
するとバラエティー番組のワイプで区切られているかのように、俺、黒藤さん、藤堂、北条さんの4人の顔が画面に映し出された。
「みんなー。」
「久しぶりだな。」
「紘深さんお久しぶりでーす。」
「よお。」
こうして、4人でのSkypeでのおしゃべりが始まった。みんな今年1年のいろんな思い出を話し始める。
しばらく話が続く中、藤堂が口を開いた。
「俺はやっぱり、黒藤が写真部に入ったことが一番びっくりしたな。」
俺は一瞬ドキッとした。黒藤さんと藤堂との3人で、神社で一緒に写真を撮りに行った日の夜。斎藤から
~回想~
「実はさ俺、黒藤が写真部に入るって話、LINEで知ってたんだよね。」
~回想終わり~
とLINEで言われたことを。
「まさか部活まで一緒になるとは思わなかったからさ、その話LINEでされた時はびっくりしたよ。『マジか!』って思ったよ…」
「そりゃそうだろうな。」
と俺は返す。黒藤さんはちょっと恥ずかしそうに笑っていた。
「紘深さんと藤堂さんって中学から同じだったんでしたよね。」
と北条さんが言う。
「うん。でも中1・中3・高1の3回クラス同じだった程度なんだけどね。部活も全く違かったし。」
「そうだったんですね。」
「おまけに一緒に遊園地とかに行ってさ。黒藤とこんなに一緒に行動する機会が増えるとは思わなかったぜ。」
「えへへ(苦笑)」
と、藤堂の話に黒藤さんはまた恥ずかしそうに苦笑いする。
すると藤堂は突然…
「ありがとうよ!斎藤!」
と俺に言ってきた。
「え、な、なんだよ急に!?」
「急にもなにも、お前が黒藤と出会ったからこそのことだよ!中学から一緒だった黒藤が、大学でも一緒になって改めて『こんなに明るいやつだった』なんて知れたのはお前のおかげだよ。礼を言うぜ!」
「あ、ありがとう… でもそれ本人の前で言う…?」
「いいよそんなこと気にしないで!」
俺が戸惑っている脇で黒藤さんは喜んでいる様子だった。その様子を見て俺は「俺は知らぬ間に人をつないでいたのか…」と感じていた。
ここからはみんなそれぞれ思い思いのことを話す。黒藤さんは年末年始のテレビのことを話していた。
藤堂がそれに反応する。
「俺も気になって調べてみたんだが、結構凄いことになってるみたいだな。例えば、こっちがドラマの再放送やっている間、地域によっては前にやったバラエティー流してるところもあるんだよね?斎藤はまあ知ってると思うけど…」
「そうそう!」
黒藤さんは嬉しそうに返してきた。俺は藤堂の呼びかけに無言で頷く。
「私も知ってます!」
と反応したのは北条さん。
「それで昨日と今日、山口では朝から私が本当に大好きだったドラマの一挙再放送やってるんですよね!あの詐欺師の3人組が活躍するやつ!」
「そうそう!」
「私本当に大好きだったんです~!それが朝早くから見られるなんて!」
北条さんはなんだか、山口の人が羨ましい様子だった。
「私も山口行きたかった~!それ知ったのおとといで…!」
俺もいろんなことを話した。そのほとんどは黒藤さんとのことだ。
「そうだ。このことはまだ北条さんには話してなかったけね。」
俺は先月、藤堂に誘われて黒藤さんのバイト先のパスタ屋で食事をしたことを話した。
「普通に行けばいいのに藤堂のやつがスーツで来いって言うからさ、そのためだけに俺あの日大学でもスーツで過ごしたんだよね…(苦笑)」
藤堂も北条さんも爆笑していた。
「藤堂、お前ずるいぞ集合時間前のコマ空いてたからスーツに着替えに一旦家に帰れてよぉ…」
「えへへ(笑) 悪りぃな(笑)」
「まあでも、黒藤さんが焼いたフォカッチャめっちゃ旨かったし、いいかなって思ってるよ。」
「えへへ。ありがと(笑)」
黒藤さんは話を聞いていて楽しそうな様子だった。
すると、
「そのお店どこにあるんですか?」
と北条さんが聞いてきた。
「お!斎藤、北条さんに教えてやれ。」
「ああ。分かった。」
「斎藤さんすいません。」
藤堂に言われた俺は北条さんにお店を教えるべく、「Delizioso」のホームぺージにアクセスした。そこから店舗情報のページに飛び、黒藤さんがバイトしている店を選択する。
その店のリンクを北条さんとのLINEのトーク画面に貼り、送信した。
そして画面から、スマホのLINEの着信音が鳴った音が聞こえる。
「届きました!」
と北条さんは言い、スマホを開いた。
「ここなんですね!このお店私も知ってます!」
と画面を見た北条さんはそう言って、画面をカメラに向けてきた。たしかに俺がさっき送った店のページだ。
「入学したら絶対に行きます!」
「ありがとうとあちゃん!待ってるよ!」
黒藤さんは嬉しそうな様子だ。
「お寿司とパスタで食べ物のお店2つ掛け持ちとか、紘深さんなんかすごい…」
と北条さんは言う。
「そうかもね。えへへ(笑)」
と黒藤さんは言った。
しばらくまた話は続く。ほとんど黒藤さんは本気全開ともいえるレベルの無双ぶりだった。
すると黒藤さんは、こんなことを言ってきた。
「とあちゃんそう言えば、みんなに言いたいことあるんだよね。」
「はい…実は私…」
北条さんは何かを発表する様子だ。
「何なんだ急に?」
と藤堂が不思議がった直後…
「皆さんと同じ大学に合格しましたー!」
良哉・幸太郎「ええー!マジか!!」
俺と藤堂は驚いた。
実はうちの大学は12月にも推薦の入試があって、実際黒藤さんの家でテレビ雑誌を読んだ数日後に2日間の入試休みがあった。そのタイミングで受けたという。
「おめでとう北条さん!入学したらぜひ写真部に来てくれよ!」
と藤堂は喜んでいた。
「おめでとう北条さん。にしても大晦日にこんなサプライズ発表があるとは…」
「えへへ(笑)ありがとうございます斎藤さん。」
「改めておめでとう。兎愛ちゃん!」
「ありがとうございます。4月から紘深さんと一緒ー!」
来年の春…もとい後数ヶ月で北条さんとも大学で一緒になる俺たち。
「俺の周り、もっと賑やかになりそうだな。」と俺は感じていた。そんな大晦日の夕方だった。