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上京男子と地方局マニアの女子  作者: 白石あみの
~社会人2年目編~
244/247

第237話「絢爛!ふらわーとりっぷ」

~8月2日の回想~

良哉「紘深さんってどこか行きたいところある?」

紘深「あるよ。」

良哉「マジか。どこ?」

紘深「ハーブワールドってところ。岡山で行ったR○Kバラ園みたいなところで、ハーブやお花がいっぱい咲いているんだ。」

~回想終わり~


秋田旅行2日目。今日は紘深さんがリクエストしてくれたハーブワールドに行く。俺はその紘深さんがハーブワールドを提案した時を夢に思い出していた。


今回も紘深さんと同じホテルの部屋。

紘深「あ、おはよう良哉君。」

良哉「紘深さん。もう起きてたんだ。」

紘深さんは朝早く目覚めたようで、俺が起きた頃にはテレビを見ていた。

紘深「―秋田にはTB○の系列局がないんだよ…」

良哉「そうだったね。じゃあいつもの7時のダンスできないじゃん。」

紘深「そうそう… だから毎年5月にやってる仙台のハーフマラソンは、秋○放送が系列を超えて○北放送から同時放送してるんだ。」


俺は紘深さんの後ろで着替えた(俺たち告白してから1年以上が経ったとはいえまだそんな関係性ではない)後、ホテルのコンビニで朝ご飯を買う。俺も紘深さんも秋田で人気のパン屋さんのパンを買った。

良哉「―思えば昨日は昼に蕎麦で夜稲庭うどんだったじゃん。麺類連食だったね。」

紘深「そうそう!どっちも美味しかったからいいよね。」

良哉「そうだな。それで今パン食べてるから、今日の食事はお米系にしようか。」

紘深「良哉君ナイス提案!」


朝ご飯の後は歯磨きやらホテルのチェックアウトやらを済ませた後、秋田駅のコインロッカーにスーツケースを預けて羽越本線に乗る。本数が少ない分ホームでしばらく待った。

駅のアナウンス「―3番線から、各駅停車。酒田行きが発車いたします―」

電車に乗っている間紘深さんは夢中でラジオを聴いており俺も時折イヤホンを片方借りて聴かせてもらった。そして秋田駅から1時間弱。西目駅に着いた。ハーブワールドはその西目駅から車で7分。バスも出ていないようだから、今回もタクシーを捕まえて乗った。

良哉「―ちなみに歩きだと25分かかるね。」

紘深「ハーブワールドも結構駅から距離あるんだね…(苦笑)」


朝9時過ぎに秋田駅を出て、ハーブワールドに着いたのは10時15分頃の事だった。

紘深「ほら良哉君!行くよ行くよ!」

良哉「待ってよ紘深さ~ん!」

ベタなデートっぽいやり取りを交えつつ、ハーブワールドに足を踏み入れる俺たち。園内を見た感じとても広く豪華なところなのだが、入園料が無料なのが凄い。


ハーブモデルガーデンに入る俺たち。とても良い香りがする。

紘深「やっぱりとってもいい香りがするね(笑)」

良哉「そうだねえ。なんか心が落ち着くよ。」

紘深「この香り持って帰りたいよ。」

良哉「確かそんな感じのことが出来る施設あったよ。後で寄ろうよ。」

紘深「うん!」


ハーブガーデンの近くにある鐘のエリアに寄った。その鐘を鳴らすのは紘深さん。思えば紘深さんと鐘。なんだかいつか見たアニメの最終回を思い出す。紘深さんに声が似ているあの声優さんが演じていたキャラクターが鍵となる描写で締めくくられていたっけ。その後俺たちはローズガーデンの区画に来た。その名の通り色とりどりの種類のバラが咲いている。

紘深「これもめっちゃ綺麗だね(笑)」

良哉「ああ(笑)そういやまだ紘深さんには話してなかったね。」

紘深「なになに?どんなこと?」

良哉「バラで思い出したんだけど、今年4月に入った新人さんのうちの中にね、紘深さんに声が似てるあの声優さんの大ファンって人が1人いるんだよ。」

紘深「へーそうなんだ!」

良哉「ファンクラブにも入っててライブもよく参戦してる人でね。4月の新人歓迎会の時にはその声優さんのこと熱く語ってたんだよ。」

紘深「凄い人なんだね(笑)きっと私の声聞いたらびっくりしちゃうかも(笑)」

良哉「俺もそう思う(笑)」


バラと紘深さん。紘深さんの声の影響かそれとも岡山に行った時のR○Kバラ園で似たような光景を見たからか、映える感じもするが既視感も感じる。そういえば例の声優さんは来月アルバムを2つ同時リリースするようだが、片方にはパリのバラ園でもミュージックビデオを撮影した曲もそれに収録されるっけ。それもその新人さんが職場で話していたから得られた情報だ。


ローズガーデンの後はラベンダー畑に寄り、眺望の丘に登る。

紘深「良い景色だね。」

良哉「ああ(笑)」

ガーデンを一望できる景色を楽しんだ後は、ぶどうのビニールハウスや香りのハウスに寄る。香りのハウスはその名の通りとても良い香りがした。同じ香りを楽しんでいる紘深さんの表情はとても可愛かった。


良哉(写真にしたら映えるんだろうなあ…)

なんてことを思っていると…

紘深「ねえ良哉君。」

良哉「紘深さん?」

紘深「せっかくだから、私のことも撮ってよ。」

良哉「いいの?」

紘深「うん!」


見透かされていた感が否めないが、せっかく本人から撮っていいと言われたので、俺は紘深さんの写真を撮った。

良哉「撮るよー。」

(パシャ)


香りのハウス内に咲いている花に囲まれている紘深さんの写真が1枚撮れた。とても可愛い。雑誌の表紙だったら結構な数売れるのではないかと思うクオリティーだと我ながら思う。


実は紘深さんの写真は他にも何枚か撮っていた。花に囲まれる彼女の写真はたくさん撮れた。そうこうしている間にガーデンを一周できた俺たち。時間はすっかり12時を過ぎ、13時に近づこうとしている。


良哉「―そろそろ1時だ。お店の混み具合もひと段落したかな。」

紘深「そうだね。お腹空いた〜。」


レストランに入る俺たち。今朝「お米系の物を食べよう」と紘深さんが言っていたのもあり、同じカツカレーを選んだ。ハーブの香りがとても効いていて、美味しかった。ドリンクも同じハーブコーヒーを選んだ俺たち。

紘深「心が静まるハーブコーヒーだね。」

良哉「うん。…なんかどっかで聞いた言い方だねそれ。」

紘深「そう?(笑)」


レストランでの食事を終えた後は工房で石鹸を作る。さっき俺が紘深さんに言った「香りを持って帰れる施設」がまさにここだ。夏休み真っ只中ということもあって、工房には小さい子どももいる。


良哉「俺石鹸を手作りするなんて初めてだなあ。紘深さんはどう?初めて?」

紘深「私は小4の時以来だな。とっても楽しかったよ。」


かれこれ30分で手作りのハーブ石鹸ができた。俺は石鹸作りがあまりに楽しかったので2つも作った。そのうち1つも紘深さんにあげた。

紘深「できたー!私史上最高の傑作!良哉君が作ってくれたのも含めて、帰ったら使おうかな。」

良哉「俺も。どんな香りがするんだろう。俺が作ったのも楽しみにしててよ。」

紘深「うん!」


石鹸が完成して工房を後にした俺たちはガーデン内のショップに寄る。紘深さんは化粧品を買っているのが見えた。

良哉(ここで買った化粧品を使った紘深さんはどれくらい綺麗になるんだろうな。今もとっても綺麗だけど。)


俺はハーブティーや秋田県内の会社が作った加工食品をいくつか買った。藤堂や職場の人へのお土産も買っておこう。


紘深「良哉君、ここで買ったお土産いくらした?」

良哉「1,800円はしたよ。紘深さんは?」

紘深「2,500円。私が使いたかったり、後は兎愛ちゃんにプレゼントする化粧品とか買ったから。」

良哉「凄いね(笑)」


かれこれ時間は午後2時半を過ぎていた。あいにく由利本荘市にはコミュニティーFM局がないし、由利本荘市のケーブルテレビ局の本社もここからかなり距離があるから、時間的にも行けそうにないのが残念だ。(ちなみに徒歩と電車で合わせて50分弱)


ハーブワールドを後にする俺たち。西目駅からの電車はなんと16時半過ぎまでないと言うことで、ハーブワールドから直接タクシーで秋田駅まで向かうことになった。タクシーに揺られること1時間くらい。その間紘深さんはここぞとばかりにラジオを堪能していた。思えば俺も紘深さんも1時間くらいタクシーに乗ったのは人生で初めてだ。

秋田駅に着いた頃には時間は15時半を過ぎていた。かかった値段も2万円近く。予算、特に交通費には4万円程度余裕を持って組んだ俺だが、これほどタクシー代がかかるとは思わなかった。

紘深「タクシー代、私が払うよ。」

良哉「ありがとう紘深さん…」

すると紘深さんがタクシー代を全額払うと言ってきた。紘深さんが代金を払ってくれた後、タクシーを降りた俺たち。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


紘深「良哉君ばっかりに交通費払わせるのも悪いと思って(笑)」

良哉「なんか… いつもありがとう(笑)」

紘深「えへへ。まだお金下ろそうと思えば手数料かからずに下ろせる時間だし。」


その後は秋田駅で追加のお土産や晩ごはんを買ったり、帰りの新幹線の席を確保する俺たち。13日はまだ若干Uターンラッシュには早いようで、指定席も余裕で(隣同士)確保できた。


良哉「ごめんね。角館の武家屋敷とかも考えてたんだけど。」

紘深「大丈夫大丈夫。今度は秋田市外メインでもう1回秋田行こうよ。」

良哉「そうだな(笑)」

駅のアナウンス「間もなく、12番線から、秋田新幹線、こまち、36号、東京行きが発車します―」


17時過ぎに駅を出る新幹線。紘深さんはそれからしばらくしてラジオをつけた。今日は水曜日だから秋◯放送ではプロ野球のナイター中継がある日。18時20分のナイター中継の始まる時間。


紘深「生で聴くその地域のナイター中継のオープニングもいいよね(笑)」

良哉「そうだな(笑)」


紘深さんからイヤホンを片方借りて、一緒にそのナイター中継のオープニングを聴くことができた。


そして20時半過ぎに大宮に着いて新幹線を降り、上野東京ラインに乗り換えて赤羽に着いた。赤羽に着いたのは21時過ぎのことだった。


紘深「今回もとっても楽しかった!次はどこ行く?」

良哉「1箇所だけなんて選べないよ(苦笑)いっそのこと運転免許でも取ろうかなって、さっき新幹線乗ってる間に思ってた。」

紘深「本当!?楽しみだなあそれだったら車でいろんなとこ行けるじゃん!みんなで大分や福井行った時みたいに!」

良哉「そうだよな(笑)まあ、楽しみにしててよ。」


紘深さんや彼女との旅行のためにも、俺は運転免許を取ろうと決心したのであった。紘深さんが背中を押してくれた感が強い。


良哉(運転免許取るのが、俺の今後の目標かな。)



そして3日後。

(良哉のスマホのLINEの通知音)

俺のスマホに紘深さんからのLINEのメッセージが届いた。

紘深からのLINEメッセージ「良哉君良哉君!良哉君が作ってくれた石鹸!お父さんもお母さんもとても良い香りがするって言ってくれた!」


俺が紘深さんにプレゼントした石鹸は、紘深さんのご両親からもとても評判だった。俺はそれもとても嬉しかった。

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