第234話「きままに浦和探訪」
6月中旬くらいからの激しい暑さとそれに疲れる日々が続く、7月になってしばらくが経ったそんなある日の退勤途中のこと。
(LINEの通知音)
紘深さんからのLINEメッセージの通知が来た。
良哉(なんだろう?時期的に夏休みの旅行についてかな?)
と思ってスマホを開ける俺。
紘深のLINEメッセージ「良哉君こんばんは。今度の海の日空いてる?」
というメッセージ。
良哉(海の日に旅行に関して何か説明とか相談とかしたいのか?)
と思って
良哉のLINEメッセージ「うん。大丈夫だよ。」
と返信した。しかし返ってきた内容は…
紘深のLINEメッセージ「ありがとう。じゃあ一緒に浦和行こうよ。」
というものだった。早い話その内容は、夏休みの旅行についてではなかった。ちょっとびっくりしたが、紘深さんとどこか行けるのは嬉しいから、浦和に行くという話は受ける。
良哉のLINEメッセージ「分かった。何時にどこ集合?」
紘深のLINEメッセージ「11時半に赤羽駅の改札口。」
良哉のLINEメッセージ「分かった。」
というやり取りをする俺。「分かった。」まで打ったが、送信する前に俺の指が少し止まった。
良哉(11時半集合ってことは食事も浦和ですることになりそうだな…)
と思った俺。俺は閃いた。
良哉(今まで紘深さんが行きたい店に行ってたんだ。たまには俺が店選ぶってのも悪くないかもな。)
と思い、続けてこう送った。
良哉のLINEメッセージ「今回は俺が店選ぶよ。時間的に昼ご飯も浦和で食べる感じでしょ?」
するとその直後、
紘深のLINEメッセージ「やったあ!ありがとう。良哉君が選んでくれる店今からめっちゃ楽しみ(笑顔の顔文字)」
と返ってきた。
良哉のLINEメッセージ「じゃあ、海の日よろしく。」
紘深のLINEメッセージ「うん!」
紘深さんとどこかに出かけたことは今までたくさんあったが、俺が店を選ぶというのは初めてのことだが、紘深さんはそれがとても嬉しいことはすぐに分かった。
駅のアナウンス「赤羽ー。赤羽ー。」
家に着いて手洗いうがいシャワーを済ませ、晩ご飯を食べた後は、早速店選びだ。
良哉(浦和の店か…)
さいたま市の美味しい店、考えてみたら北条さんと前行ったナポリタンの店と、後は紘深さんに声が似ている声優さんのファンの間で話題になったハンバーガー屋さんくらいしか知らない。しかもその店はどちらも浦和ではなく大宮にある店だ。
良哉(ラーメンは神戸行った時に食べたしなあ… あっ、そうだ!)
俺はあることを閃いた。
そして迎えた海の日。
良哉(やっぱりこの時間は暑いな〜。)
紘深さんに会う以外の目的で休みの日のこの時間に外には出たくないレベルの暑さ。俺は赤羽駅の改札に来ると…
すると…
紘深「あっ。良哉君!」
良哉「紘深さん!」
紘深さんが俺とほぼ同じタイミングで来ていた。
紘深「じゃあ早速行こうよ。」
良哉「だな。ちょっと予定より早いけどね。」
紘深「うん!」
いつもの通り予定より早く出発することになった。
良哉「考えてみたら紘深さん、浦和って定期券内だから交通費実質タダじゃん。」
紘深「へへーん。」
しかも今回は浦和という赤羽から上野東京ラインで1駅という場所。10分足らずで到着した。
駅のアナウンス「浦和ー。浦和ー。ご乗車、ありがとうございます。」
この後すぐに食事をした方が良さそうな時間。俺は早速紘深さんを店に案内する。
良哉「じゃあ食事にでもするか。」
紘深「うん!良哉君がお店決めるって言ってたけどどんな店?」
良哉「お蕎麦屋さん。うどんがいいかなと思って。駅からは3分くらい歩くよ。」
お蕎麦屋さんとは言ったが厳密にはうどんが食べたいと思っている。店を決める際、先月テレビで埼玉のうどんについての特集をやってたのをふと思い出した俺。東京23区には店が1軒もない埼玉が地盤のうどんチェーンの店もある。調べたところそのチェーン店は残念ながら浦和区内にはなかったものの、「浦和 うどん」と検索しただけで浦和駅近くの店が結構な数ヒットした。そのうちの1軒だ。居酒屋っぽい雰囲気の店だが、落ち着いていて良さそうなのが決め手になった。
紘深「ありがとう良哉君(笑)うどんって久々(笑)」
休日の昼食時ということで店はそれなりに混んでいるが、思ったより早く席に座ることができた。食べるのはもちろん同じ武蔵野うどんだ。
紘深・良哉「いただきます。」
おつまみ的な一品料理も1つずつ注文した。冷たい盛りうどんを食べ始める俺たち。初めて味わう埼玉の武蔵野うどんだが、コシがあってとても美味しい。
良哉「ねえ紘深さん。」
紘深「何?」
良哉「前にうどん食べてて、『うどんに天ぷら大量に乗せないの?』って言われたことある?」
紘深「あああるある(笑)高3になる少し前の冬の時、学食でうどん食べててそんな感じのこと言われた(笑)」
良哉「やっぱり声でそう思われたとか?『高3になる少し前の冬』ってまさにあの時期じゃん。岐阜ではまだやってなかったけど。」
紘深「まさにまさに!(笑)」
良哉「そうなんだ(笑)実は俺もね、紘深さんに一番最初に話しかけられた時に少しそう思った。」
紘深「そうなの?(苦笑)」
良哉「ああ(苦笑)『なんかそんな感じの声してるなぁ…』って。」
この店には天ぷらをトッピングする仕組みがなさそうなのが少し残念だ。それを抜きにしても、盛りうどんも一品料理もとても美味しかった。値段もちょうど良く、我ながら良い店を選べたかなと思った。
食事を済ませた後は浦和散歩が本格的に始まる。それにしても暑い。さっきまで冷房の効いていた店にいた反動だからか、なおさら暑く感じる。
良哉「まずはどこ行くの?祝日だからテ○玉やNH○さいたま放送局は行けなそうだけど。」
紘深「R〇〇S W〇〇E。さいたま市のコミュニティーFM局でね、駅から5分くらいのところのホテルの中に本社とスタジオがあるの。」
良哉「なるほど。」
紘深「しかも今生放送の情報番組やってて、その様子を見ることができるんだ。」
良哉「そうなんだ。ラジオの公開生放送ってのはよくあるけど、コミュニティーFMは特によくあるよね。」
紘深「そうそう!」
ということでR〇〇S W〇〇Eに向かっている俺たち。紘深さんとコミュニティーFMの生放送の様子を見に行くのは考えてみたら初めてだ。今まで紘深さんとコミュニティーFM局の本社に行ったことはいっぱいあったが、公開されているスタジオ等から生放送している様子を見たことはなかったっけ。
さっきのお蕎麦屋さんから歩くこと5分ほど。ホテルの1階に入る俺たち。そのホテルの1階にR〇〇S W〇〇Eのスタジオはある。確かに今まさにそのスタジオからお昼の番組を生放送しているところだ。
紘深さんは嬉しそうに生放送の様子を見ている。
良哉(2人で一緒によその街のラジオの生放送の様子を見学か。いかにも俺と紘深さんらしいや。)
なんてことを俺は考えていた。
いつものラジオを持ってきている紘深さん。そんな彼女がラジオを聴きながらスタジオの様子を見ている。俺はその脇でこのホテルについて調べてみると、完全予約制の高級な和食の店が最上階に入っていると書いてあった。
良哉(こんな凄いホテルに俺たちはいるんだ…)
なんてことを俺は思った。
良哉(このクラスの店で紘深さんと食事なりデートなりできるのはいつのことになるんだろうなぁ…)
なんてことを俺は思った。
紘深「ねえ良哉君。浦和○ッズの試合の日はサポーターの人がここにもたくさん来るんだって。」
良哉「なるほど。まあその名の通り『R〇〇S W〇〇E』って言うくらいだもんな。」
紘深「そうそう!」
良哉「もしかしたらここ来るの今日のこの時間にしたのって…」
紘深「生放送の様子が見られるってのもあるけど少しばかりそれもある(苦笑)だって試合ある日はサポーターの人たちいっぱい来るから、私たちの入る余地なくなっちゃうじゃん(苦笑)」
良哉「そうだね(苦笑)」
しばらくして俺たちはR〇〇S W〇〇Eを後にして浦和駅前に戻る。駅の反対側の出入り口に出て、駅近くの大きな商業施設に入った。
良哉「で、パ〇コ入ったけどどうするの?」
紘深「特に考えてないよ。気ままに行こうよ。本屋さんとかもあるから。」
良哉「分かった。涼むにはちょうどいいか。」
紘深「うん!」
フロアガイドを見る俺たち。知っている店がたくさんある。紘深さんが言っていた本屋さんは5階にあるため、とりあえず一緒に向かうことにした。
エスカレーターで5階に向かう俺たち。広い本屋さんがそこにはある。
紘深「あったこれこれ!」
紘深さんは漫画を1冊手に取った。先月までやっていたアニメの原作漫画であることは一発で分かった。アニメの最終回の続きの部分が描かれているのであろうか。
紘深「えへへ。今後の旅行の参考にもしようかと思って。」
良哉「なるほど(笑)ぶっちゃけ俺ね、この間紘深さんから連絡来た時『夏休みの旅行についての話か?』って思ったんだよ最初。」
紘深「そうだったんだ(笑)思えば夏休み来月だもんね。その時も2人でどっか行こうよ。」
良哉「そうだな(笑)せっかくだからさ、今度は新幹線が通っていないところにしようよ。」
紘深「そうしたい気持ちはあるけど、お金めちゃくちゃかかりそうだから…(苦笑)」
良哉「そうだよね…(苦笑)」
紘深「でもやっぱり、関東圏外でしょ!」
良哉「そうそう(笑)」
夏休みに対する楽しみの気持ちが強くなった俺。俺からも何かできることはないかと思って…
良哉「これ買うか。」
俺は東北方面の旅行に関する本を1冊買った。
良哉「山形とか秋田とか、後は青森もいいかなって思って。」
紘深「いいねそれ!今まで私たち西日本方面ばっかり行ってたから。」
良哉「そうそう。新幹線で行けるしね。東北方面って大学の部活の合宿で会津行った時以来かな?」
紘深「そうだと思う。楽しみにしてるね。私も調べておくから。」
良哉「ありがとう(笑)」
紘深さんは漫画を、俺は東北の旅行に関する本をそれぞれ1冊買った。その後は赤羽に帰る。昼間の数時間であったが、数日前に降って湧いた浦和デートは俺もかなり楽しめた。
紘深「じゃあ次リアルで会うのは遅くとも夏休みかなやっぱり?」
良哉「そうだと思うね。まあ俺たち会いに行こうと思えば行けちゃう距離に住んでるけどね…」
紘深「そうだね(笑)夏休み、楽しみにしてるから(笑)」
良哉「ちょっとプレッシャーかけないでよ(苦笑)」
瑞寿司の前で紘深さんと別れ、家に帰った俺。手洗いうがいを済ませてシャワーで汗を流した後は、さっき買った旅行本を開く。
良哉(山形… いや秋田もアリかな…)
夏休みのため、俺もやる気が芽生えるのだった。