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第223話「タガイのチョコ(当日編)」

良哉「―お疲れ様です。」

他の社員たち「お疲れ様です。」


2月14日。ついにバレンタインデーがやってきた。

紘深さんに渡すチョコ。俺は一旦家に帰ってチョコを取り、その後紘深さんの家に行く計画だ。


駅のアナウンス「赤羽―。赤羽ー。ご乗車、ありがとうございます。」

赤羽駅を出て、日もすっかり暮れた寒い道を進む。しかし俺の今の気持ちは、ワクワクと緊張が混じったようなものだ。

良哉(紘深さんちゃんと家にいるかな?そもそもチョコちゃんと渡せるかな…?)

チョコを選んでいた前後の俺は、確証もなしに「紘深さんは当日夜家にいると思う」という考えがあった。しかし今になって思えば、それは他でもなくただの単なる思い込みでしかなかったと言えるだろう。


一旦家に帰りカバンを置く。インフルエンザとかが流行る季節だから手洗いうがいだけでなく、スーツの消毒も忘れない。その後は買ったチョコが入っている箱の入った袋を冷蔵庫から取り出してショルダーバッグに入れ、冬用の私服に着替えて、紘深さんの家に行く。夕食はその流れで瑞寿司で済ませるか。


良哉(う〜厚い上着着ててもめっちゃ寒いな…)


紘深さんの家の前に着いた。1回深呼吸をして、玄関のドアのチャイムを押す。

(ドアチャイムの音)


紘深「はーい。」

(玄関のドアが開く音)

紘深「良哉君。いらっしゃい。」

良哉「ああ。ちょっと… 紘深さんに渡したいものがあってね…」

紘深「ホント!?」

良哉「ああ。」


その「ホント!?」と言った時の紘深さんの表情から俺は察した。「もしかしたら紘深さんも何か俺に渡したいものがあるのではないのか?」ということを。


紘深「そうなんだ。寒かったよね。お茶とか入れるから。」

良哉「ありがとう。」


いつものように手洗いうがいをした後、リビングに移動する。紘深さんが暖かい緑茶を持ってきた。その緑茶はなんだか、紘深さんに声がそっくりな水色顔の異世界のお姫様が飲んだら酔っ払ってしまいそうなくらい高級そうなものに見える。


良哉「このお茶なんだか高級そうに見えるけど、どこの?」

紘深「これ?いつもお店で出してるやつだよ。ほら、前に何度か良哉君の実家にも贈った。」

良哉「マジか。なんか言っちゃ悪いけどお店で飲む時よりも高級そうに見えるなぁ…」

紘深「そうかな?(苦笑)」


紘深さんもこのお茶が普段よりも高級そうに見えるのは想定していなかったようだ。湯呑みが普段使いのものだから俺にはそう見えたのかもしれないだろう。


雑談もそこそこに俺は本題に入る。やはり紘深さん相手に何か渡すのは緊張する。

良哉「紘深さん。」

紘深「何?」

良哉「実は俺今日、渡したいものがあってね…」

紘深「本当!?なになに?」

良哉「これなんだけど…」

俺は紘深さんに渡すチョコの袋を見せる。


紘深「ねえ、これってもしかしてチョコ!?」

良哉「そうだよ。」

紘深「袋や箱のデザイン的に私の知ってるお店のだよ!それを、私に?」

良哉「うん。」

紘深「ありがとう。実は私もね…」

良哉「な、何?」


すると紘深さんはキッチンに行って冷蔵庫を開け、何かを持ってきた。


紘深「これ。」

そう言って紘深さんが持ってきて見せたもの、それは袋に入った手作りチョコであることが俺には一回で分かった。岐阜にいた頃、姉ちゃんが何度か作ってたのを見たことがある。なんならチョコの味見をしたことだってある。


良哉「これを、俺に?」

紘深「うん。私の手作り。」


驚くべきことに、紘深さんは俺に渡すチョコを()()()いたのだ。


紘深「早速食べてよ(笑)」

良哉「ああ。じゃ、いただきます。」


俺は袋を開けてアルミカップからチョコを取り出し、口の中に入れる。


良哉「甘くて美味しい!苦味はあまり感じないな。もしかして生クリーム使った?」

紘深「うん。」

良哉「やっぱり(笑)ネット見てたら手作りでこういうチョコ出ててね。美味しいよマジで(笑)」

紘深「ありがとう!高校の頃部活でこんな感じのチョコはよく作ってたから自信あったんだ(笑)良哉君のチョコも食べていい?」

良哉「うん。せっかく俺が紘深さんのチョコ食べてるんだから。」

紘深「分かった。じゃあ、私もいただきます。」


紘深さんはそう言うと袋と箱を開け、チョコを取り出す。


紘深「やっぱり私が知ってるところのだ(笑)」

チョコを口を入れる紘深さん。


紘深「やっぱりめっちゃ美味しい!」

良哉「ありがとう紘深さん(笑)店の前で時間かけて選んだ甲斐があったよ。」

紘深「他にはどんなのあったの?」

良哉「1万円はいくチョコの詰め合わせとか、ハート型の箱に入ったチョコの詰め合わせとかがあったよ。1万円のには俺も手が出せなかったなあ…(苦笑)」

紘深「そうだったんだね(苦笑)」


チョコをあげるはずが、図らずしてチョコを「交換」することになった。でも紘深さん喜んでくれたし、紘深さん手作りのチョコも美味しかった。こんなに俺としても嬉しいことはない。


紘深「実はね… 私チョコ作り終わった時なんだか『良哉君は今日絶対うちに来る』って思ってたんだ。」

良哉「ああ… 実は俺も『紘深さんは今日この時間確実に家にいるかも』なんてこと思ってたんだ。なんか謎に自信あったんだよね(苦笑)」

紘深「そうだったんだ(笑)『以心伝心』みたいな?」

良哉「なんだか俺もそう思う(笑)」


結果はかなりの大成功だった。俺はかなりの達成感を感じているが、紘深さんもかなりの達成感を感じているのが表情から読み取れる。もしかしたら俺以上かもしれないくらいには。

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