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第222話 B面「タガイのチョコ(紘深編)」

紘深に贈るチョコを買いに行った良哉。

しかしバレンタインデーを目前に控え、動いているのはどうやら紘深も同じようで…

2月に入ってしばらくが経ったある日曜日のこと。

紘深(良哉君に告白してから今度の土曜日で一年かあ…)

私はこんなことを考えていた。去年の大分旅行の3日目、前日に良哉君とケンカしたのを引きずって夜一人海岸にいた私のところに良哉君がやってきて、私の過去のいろいろな話をした後、泊まり先だった藤堂君の友達のおじさんが管理している別荘に戻ろうとしたら、良哉君が突然告白してきた。流れ的には急だったかもしれないけれど、私はそんなことは抜きにしてとても嬉しかった。私も良哉君に「私も好き」みたいなことを言ったことは今でもはっきり覚えている。


それからもうすぐ1年。その良哉君とケンカをした日はバレンタインデーだった。そしてそのケンカの原因は私が良哉君にサプライズで一緒にチョコを買いに行こうとしていたことだ。今になって思えば「良哉君この後ちょっといい?」的な一言をLINEで言っておくべきだったと思っている。

紘深(あの時のリベンジしたいなあ… そうだ!)


すると私は閃いた。去年のリベンジをしたいなら…


紘深(今年は手作りチョコを渡そう!)

チョコを手作りすることにした。バレンタインデーに手作りチョコを渡したことは過去一度もないけれど、高校時代料理部だった私。チョコもバレンタインデーの時期を中心に何度か作ったことがあるから、心得はある。


紘深「お母さーん。」

侑梨「紘深?」

紘深「急にごめんだけど、あさってチョコ作りたいんだ。だから材料とかある?」

侑梨「チョコとかならあるわよ。」

紘深「やった!ありがとう(笑)」

侑梨「もしかして斎藤君に手作りチョコでも渡そうって考えてるの?」

紘深「えへへ… 当たり(笑)」


それから2日が経った11日。建国記念日。


紘深(よし!)

朝9時半過ぎ、家のキッチン。チョコレートと生クリーム、トッピング用の砂糖とアラザン、それにアルミカップを用意する。一口に「手作りチョコ」と言ってもいろいろ種類があるのでどれにしようか迷っていたのでネットで調べたところカップチョコを見つけた。カップチョコはまさに高校時代部活で作ったことがあるから、日曜日の夕方時点でそれにすると決めていたのである。


さあ、チョコ作りの始まりだ。


まずは板チョコを半分に割った後、さらにそれを包丁で細かく刻む。過去作ったことはあるとはいえ手作りチョコを作るのは久しぶり。こうしてみると、案外腕が少し疲れる。


紘深(ふう…)

チョコを刻み終わった。次は小鍋に生クリームを入れて弱火で熱する。次は少し沸騰してきたら刻んだチョコを入れるのだが、少し沸騰するまでには思っていたよりも少し時間がかかった。


少し沸騰してきたら火を止めて、刻んだチョコを一気に入れる。その後はチョコを溶かす。


その後はチョコとクリームを混ぜて溶かす。勤め先のフリースクールに通っている子から「私に声が似ている」と言われたことのあるアニメのキャラクターは「夢と希望をかき混ぜる」みたいなことを言っていたが、そんな私は今はチョコとクリームをゆっくりとかき混ぜている。(そのキャラクターのモチーフはチョコではなくパフェだったが)


チョコをゆっくりかき混ぜる。なんだかちょっと楽しい。


それからしばらくが経って、チョコもすっかり溶けた。その見た目や色味はなんだか、しばらく前に行った店で食べたことのあるブラックカレーみたいだ。もし本当にカレーだったら4年前に古田さんから「私に声がそっくり」と言われたことのある、とあるアニメに出てきた姉妹の末っ子みたいにおかわりしたくもなってくる。


その生クリームと混ざったチョコの分量は私が思っていた以上のものだった。一般的な板チョコ一枚分でもそれなりの数作れそうだ。


あとはアルミカップに溶けたチョコを入れて、砂糖やアラザンをトッピングするだけ。

しかし、そのチョコをアルミカップに注ぐのが少し難しそうだ。


紘深(待って意外に難しい… ミトンしておいてよかったけど…)

弱火とはいえ小鍋の熱さがミトン越しに伝わってくる。そのミトンをしているため火傷の心配はないのだが、手指のコントロールが難しい。


紘深(気を付けないと…)

せっかくのチョコが零れてしまってはもったいない。慎重にアルミカップに注ぐ。腕も疲れる。

アルミカップも家に意外とストックがあったから、チョコの分量がある限り作ろうと思っていた。その結果、数はなんと11個になった。ハート形や星型、ギザギザのついた丸型という形は3種類。100均とかでよく見るサイズのアルミカップでも11個も作れたのは想定しておらず、私も少しびっくりしている。


チョコを注いだ後は形を整えてチョコを平らで滑らかにする。

紘深(だって良哉君に贈るものなんだもん。完璧にしたいよ。)


その形を滑らかにする工程にも私は気を遣った。何せ良哉君に贈る初めての手作りチョコ。見た目も完璧にしなくては。


チョコを滑らかにした後は、最後の工程。トッピングシュガーやアラザンをチョコにトッピングして可愛くする。


トッピングシュガーとアラザンが乗っかった手作りチョコ。見た目もとても美味しそうで可愛くなった。味見は最終的に完成した時にしようと思う。

紘深「完璧!」

我ながらこの感じ、完全に私に声が似ているアニメのキャラクターだ。そういえば「完璧」はフランス語では「parfait」って言って、さらにそれがお菓子のパフェの語源でもあったっけ。


最後は出来上がったチョコを冷蔵庫にしまって、1時間近く冷やす。


~およそ1時間後~

出来上がったチョコのうちの1個を味見する。11個できた甲斐があった。


紘深「うん!めっちゃ甘くて美味しい!」


味もとても完璧。我ながら最高傑作の手作りチョコができたと思う。


残りの10個をラッピング用の袋に詰め、冷蔵庫にしまう。

そういえば高校の頃、友達の女子が付き合っている男子にこんな感じのラッピング袋に詰められた手作りチョコを渡していたのを見たことがある。その子はチョコを渡せたのがとても嬉しかったようで、泣いてすらいたっけ。なんだか懐かしい。


後は2月14日を待つだけ。なんだか今からドキドキする。

(スマホを手に取ろうとする紘深)

私は一瞬スマホに手が伸びた。良哉君に一瞬連絡しようかと思ったのだが、なんだかその日は、良哉君がうちの店に来そうな気がする。


紘深(良哉君、絶対14日は家に来るよね。もし来なかったらその時に連絡しよっ。)

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