第218話「募金にいこうぜ!(提案編)」
12月。紘深さんに声が似ているっぽい声優さんの誕生日も過ぎ、今年もあと3週間ほどになった。職場の帰りの電車から見える景色は、クリスマスのイルミネーションをはじめ、とにかくクリスマスに関するものがより一層増えている。
〜数日前・良哉と紘深のLINE通話〜
紘深「―やっぱりクリスマスと年末年始が近いだから、うちもそんな感じの準備してるよ。」
良哉「準備となると今からになるのか。クリスマスとなるとやっぱりサーモン?」
紘深「当たり(笑)」
良哉「やっぱりね(笑)もうあれから5…6年経った訳だけど、今でもウケいい?」
紘深「だってネットでは毎年のように見るもんそういう書き込み(笑)近くに住んでるとか働いているとかっていう特撮ファンの人からは評判いいよ。」
良哉「そうなんだ(笑)当時ル◯パ◯見てた幼稚園くらいの子ももう小学校中学年くらいかな?」
紘深「小5小6って子もいるんじゃないかな?」
とまあ紘深さんの家は今年もサーモンに力を入れているようだ。あれから6年。あの番組はクリスマスの食事にとんでもないムーブメントを起こしたんだなと俺は感じている。
それからさらにしばらくが経った、クリスマスまであと1週間を切り、某紘深さんに声が似ているっぽい声優さんともライブやアニメでちょくちょく共演している、ロシア語が堪能な声優さんの誕生日を迎えネットが盛り上がっているある日の退勤時のこと。
良哉「では、お疲れ様です。」
良哉の同僚たち「お疲れ様です。」
俺がスマホを開くと…
良哉(あれ。紘深さんからのLINEだ。)
紘深さんからLINEの通知が入っていた。
紘深のLINEメッセージ「良哉君お疲れ。良哉君今日うちの店来れる?」
俺はそのメッセージに返信する。
良哉のLINEメッセージ「うん。大丈夫だけど。」
紘深のLINEメッセージ「マジ?何時くらいに着きそう?」
良哉のLINEメッセージ「今からだから、6時くらいかな。」
紘深のLINEメッセージ「分かった!楽しみにしてる!」
ということで俺は瑞寿司に寄ることが決まった。
駅のアナウンス「赤羽ー。赤羽ー。ご乗車、ありがとうございます。」
瑞寿司に着いたのは6時よりも前のことだった。瑞寿司に来るのは例の声優さんの誕生日以来。紘深さんも店にいたのだが、
〜回想〜
瑞寿司の常連客A「―それにしてもおたくの娘さんの声がなんか息子がファンだっていう人の声にそっくりで。」大智「へーどんな人なんですか?」
瑞寿司の常連客A「E◯レの朝の番組のウサギのキャラクターの声とかやってる声優で… 下の名前がひらがな3文字だったかな?」
紘深「もしかして◯◯◯◯りさんのことですよね?私もよくそんなこと言われたことありますし、今日も勤め先の生徒の何人かから言われました(苦笑)」
大智「確か今なんとかトリップとかいうのに出てますよね。」
瑞寿司の常連客A「それそれ(笑)実は今日その人の誕生日なもので、息子がそのことで朝から元気いっぱいなんですよ。」
大智「そうなんですか(笑)」
紘深「そうそう(笑)まさに今日それで(笑)」
〜回想終わり〜
なんてやりとりがあったっけそういえば。
大智「いらっしゃい。」
紘深「あー良哉くーん!」
紘深さんは俺よりも早く店に着いていた。
良哉「紘深さんもう着いてたんだ。ごめん待った?」
紘深「ちょっとだけ(笑)」
2人席の片側に座っている紘深さん。俺はその紘深さんの向かい側の席に着く。
大智「とりあえずリーズナブルセット・松でいい?」
良哉「はい。」
リーズナブルセット・松が握られている間、紘深さんはこの後言うことを楽しみにしているような表情をしていた。
良哉「紘深さん、何か言いたいことあるの?」
紘深「そうだけど、お寿司が出てくるまで待つよ(笑)」
良哉「ああありがとう。」
それからしばらくして、
大智「へい。『リーズナブルセット・松』お待ち。」
良哉「ありがとうございます。いただきます。」
リーズナブルセット・松が出来上がり、俺の元に運ばれてきた。
いつものように食べ始める俺。それと同時に、俺は話を始める。
良哉「でさ紘深さん、言いたいことって何?」
紘深「これのこと!」
そう言うと紘深さんはスマホの画面を見せてきた。
良哉「ああもうそんな時期か…」
紘深さんが見せてきたスマホの画面には、ミ○ー○ック○ンというニッ○ン○送他全国11のラジオ局が参加しているクリスマス恒例のチャリティー番組のホームページが映し出されていた。紘深さんも俺に話したことのあるその番組。東海地方で参加しているラジオ局はなかったため、俺が(オ○ル○○トニ○○ンの特別版以外の部分を)初めて聴いたのは上京後に紘深さんにそれを勧められてからだ。各局で内容が異なるミ○ー○ック○ン。紘深さんはクリスマスが近づく度、各局の放送内容を調べては俺にそのことを教えたりしている。
紘深「そう!ミ○ー○ック○ン!もうあと5日だから!」
良哉「今年ももうあと2週間くらいしかないんじゃん… で、そのミ○ー○ック○ンがどうかしたの?」
俺がそう聴くと、紘深さんはこう返してきた。
紘深「24日に仕事が終わったら、一緒に有楽町行って募金しに行こうよ!」
良哉「仕事終わったら?」
紘深「うん!」
良哉「マ… マジで…!?」
紘深「うん!」
紘深さんは自信満々な顔をしている。しかしクリスマスにどこかに出かけたことなんてせいぜい小さい頃に家族で数回岐阜駅前のレストランでクリスマスパーティーをしたことと、おととし北条さんの家でのクリスマスパーティーに加わったことくらいな俺。そんな俺が5日前、つまり1週間を切っているタイミングで、紘深さんから一緒に有楽町に出かけないかという提案を受けた。
紘深さん的にはニッ○ン○送の本社に行って募金をするのが主目的なんだろうけど、これは紛れもないクリスマスデートだ。
生まれて23年、クリスマスデートとは無縁の人生を送ってきた俺。いまいち頭の整理が追いつかない。
良哉「まあ正式に付き合い始めたからこういうこともあるんじゃないかって思ったけど、1週間前に言われるとびっくりするよ… まだ頭の整理追いついてない…」
紘深「ごめんごめん(苦笑)仕事的に当日私の予定が合うか分からないから。お互い残業は基本的にないとはいえ…」
良哉「まあそうだけど…」
紘深「しかも代々木から有楽町と、さいたま新都心から有楽町とでは距離も全然違うし。」
良哉「まあ路線図見ても確かにそうだよなあ。ありがとう。その辺まで気にしてくれて。まあ、俺は24日大丈夫だから、いいよ。」
紘深「やったあ!」
改めて調べてみたところ、代々木から有楽町は最短でも20分ほどで着くのに対し、さいたま新都心から有楽町までは最短でも40分くらいはかかる。
紘深「えへへ。どういたしまして。で私この間の日曜日、有楽町実際に行ってみたんだ。」
良哉「なるほど事前チェックね。」
紘深「うん。良哉君の方が私よりも20分も早く着くのは確実だから、私が着くまでの間に良哉君が時間潰せそうな場所ないかリサーチしたんだ。」
良哉「そ、そういうこと!?」
紘深「うん!」
良哉「いやなんかありがたいわ… ありがとう。」
俺の方が20分早く有楽町に着くことを見越して、俺が紘深さんが着くまでの20分を潰せそうな場所をリサーチしてくれていた紘深さん。そこまで考えてくれてありがたいというか、気を遣わせてしまって申し訳ないという気持ちが俺の中にあった。
良哉「どの辺?ビッ○メなら知ってるけど。ニッ○ン○送ってそっちの方じゃん。」
紘深「うん。それもあるけど、私的にはここをお勧めしたいな。」
良哉「へー。どこどこ?」
俺がそう聞くと紘深さんはスマホを見せてきた。
良哉「本屋さん?」
紘深「そう!2フロアもあるからいいかなって思って。本とか雑誌とかいっぱいあるよ。洋書や海外文学も充実してるって。さくらに聞いたところ、さくらもこの本屋さん行ったことあるって。」
良哉「なるほど。2フロアもある上にいろんなジャンルの本があるなら20分あっという間に過ぎそうだな。ビルの中にあるのね。」
紘深「そう!エスカレーターから地下通ってそのビルに入れるから、雨の日でも傘ささないでも大丈夫。」
良哉「なるほど便利なところなんだね(笑)興味出てきたよ。」
紘深「他には食べ物のお店もいっぱいあるし、6階に献血ルームもあるよ。」
良哉「そうなんだ(笑)姉ちゃんが喜びそう。ところでさ紘深さん。」
紘深「ん?何?」
良哉「食事はどうするの?」
紘深「有楽町あたりでする予定!お父さんお母さんからのOKも出てるよ。」
良哉「もうこれ完全にデートじゃん!」
という訳で、クリスマスイブのわずか5日前にして、俺は紘深さんとのクリスマスデートが決まったのだった。
紘深「じゃあ、24日の夕方… 6時10分に本屋さんの1階でいい?」
良哉「いいよ。当日の流れは紘深さんに任せるよ。」
紘深「了解!」




