第213話「兎愛ちゃんの付き合わせてゴメン(大宮編)」
紘深さんに恋をした生徒さんの話を聞いてからしばらくが経ち、シルバーウィークが迫っている。
良哉(3連休にどこか行ける余地は、スケジュール的にも金銭的にもなさそうかな…)
なんてことを考えていたある夜の寝る前。
(LINEの着信音)
突然俺のスマホにLINEの着信が来た。
良哉(紘深さんか?どこかシルバーウィークに行きたい場所でもできたのかな?)
なんてことを一瞬思ってスマホを見ると…
良哉(マジかよ北条さんじゃん。)
その着信の相手は北条さんだった。
良哉「北条さん?直接話すのは久しぶりだね。」
兎愛「斎藤さん!そうですね。久しぶりです。紘深さんとの富山旅行はどうでした?」
良哉「楽しかったよ。鐘釣の飲める湧水がまだあったのは感動だったよ。」
兎愛「そういうのあるんですね。湧水を直で飲めるとかとっても美味しそう。2日目の紘深さんとのテレビ局巡りはどうでした?」
良哉「なんというか、そこが紘深さん一番楽しそうだったよ。休日だったから局舎に入れな買ったのが残念だったよ。」
兎愛「そうですかまだ有休取れるようになる前ですからね… 斎藤さんの会社も有休は10月から取れるようになる感じですか?」
良哉「ああ。(苦笑)」
兎愛「じゃあ来月になったら紘深さんとまたどこか行きたい感じですか?」
良哉「そこは紘深さん次第かな。あまり有休を無駄に消費したくはないしね。」
兎愛「そうなんですね。そうだ。」
北条さんは話題を変えてきた。
兎愛「斎藤さん、今度の三連休のどこか空いてますか?」
良哉「ああ。俺は3日とも空いてるけど…」
兎愛「じゃあ2人で一緒に出かけませんか?」
良哉「そういえばこれもいつぶりだろう。じゃあ場所によってはいいかな。場所は?」
兎愛「ありがとうございます。大宮です。」
良哉「大宮か…」
兎愛「はい(笑)紘深さんの勤め先の街の一つ先にはどんなのがあるか知りたくて。私大宮駅は使ったことあるけど駅の外に出たことはないので…」
良哉「俺も大宮駅の外に出るのは卒業式の時以来だなぁ… 何日の何時にどこ集合?」
兎愛「23日の12時に、東口の階段下あたりでどうですか?お食事とかしようと思ってまして。」
良哉「分かった。じゃあそこで。」
兎愛「はーい。」
(LINE通話を切る兎愛)
23日に大宮で北条さんと会うことになった俺。大宮の駅の外に出るのは大学の卒業式以来のことにはなるが、その時は西口で、二次会で入った居酒屋も西口の方にある店だった。思えば大宮駅の東口を使ったことは今までない。
俺はスマホで大宮駅の東口について調べ、北条さんとどこらへんで集合になるかを調べた。
良哉(『階段下』って言ってたからこの辺かな…?)
そして迎えた23日。
電車の車内アナウンス「まもなく、大宮、大宮です―」
俺は湘南新宿ラインに乗って大宮駅へ。大宮駅に着いたのは11時50分のことだった。
駅のアナウンス「大宮ー。大宮ー。ご乗車、ありがとうございます。」
電車を降りて改札口へ向かう俺。その改札口の近くで…
兎愛「あっ!」
良哉「北条さん!」
なんと北条さんとバッタリ会った。
兎愛「斎藤さん!どの電車に乗ってました?」
良哉「さっきの湘南新宿ラインの高崎行きだけど…」
兎愛「偶然です!私も同じ電車乗ってました!」
良哉「凄い偶然だね。まあ、待つ手間が省けてよかったよ。」
兎愛「そうですね。じゃあ、早速行きましょう。」
良哉「そうだな。」
俺たちはそのまま東口へ向かう。大宮駅東口。いつか見たアニメにも出てきたような気がする風景だ。
それから俺たちは大通りをしばらく歩いた後路地に入る。その路地を入った間もないところの店に俺たちはたどり着いた。
良哉「北条さん、食事をするってこの店?」
なんだかいつか見たアニメで見たような外観の店だ。大宮駅東口が描かれていたのと同じ作品だった気がする。
兎愛「はい、大宮ナポリタンを食べようと思ってまして。」
良哉「ああ聞いたことあるわそれ。北条さんはどこで知ったの?」
兎愛「同じゼミの友達が大宮出身で、その人から教えてもらいました。友達がこの店の常連で。いつか来てみたかったんです。」
良哉「なるほど。結構並んでるね。」
兎愛「はい…(苦笑)結構この辺じゃ有名な店ですので。」
良哉「そうなんだ(苦笑)俺この辺は初めてだからなあ…」
列に並ぶことしばらくして、店に入る俺たち。
店員A「ご注文は?」
兎愛「大宮ナポリタンと、コーヒーフロートをお願いします。」
良哉「俺は大宮ナポリタンと… じゃあストロベリーフロートで。」
店員A「かしこまりました。大宮ナポリタン2つと、コーヒーフロート1つ、ストロベリーフロート1つですね。」
昼食時ということもあって、注文した料理が来るのにはやや時間がかかりそうだ。
兎愛「斎藤さんがストロベリーフロートってなんかちょっと可愛いというか…(苦笑)」
良哉「いやあなんか最近いちご関係のもの食べたくなっててね(苦笑)」
兎愛「紘深さんを思い出すんですか?」
良哉「よく分かったね(苦笑)先月紘深さんに勧められて見たミュージックビデオのせいかな(苦笑)歌ってる声優さんの声がマジで紘深さんそっくりで(苦笑)」
兎愛「そうそうそうですよね!うどんに天ぷら凄い数乗っけてそうな声ですよね(笑)」
良哉「そうそう(笑)先月藤堂に富山のお土産渡した時にもまあまあそんな感じの話した記憶があるんだよ。いちごに関してもね、この間紘深さんと五反田のカフェ行った時に紘深さんいちごタルト頼んだんだけど、なんか凄い様になってた。」
兎愛「そうなんですね(笑)」
しばらくして、
店員A「ご注文の大宮ナポリタン2つと、コーヒーフロート、ストロベリーフロートです。」
良哉「ありがとうございます。いただきます。」
兎愛「いただきます。」
ナポリタンは長く愛されている味というだけあって、初めての俺でも分かる安定感のある美味しさだ。そんな俺はふと北条さんの方に目をやる。
良哉(すっごく美味そうに食べてるなー。)
北条さんはとても美味しそうに大宮ナポリタンを食べている。どれくらい美味しそうかが見ているこっちにも伝わってくるほどだ。
その後20分ほどで俺たちは食事を終えて、店を後にする。
兎愛「とっても美味しかったです!また来ます!」
店員B「ありがとうございます。またお越しください。」
大宮ナポリタンとドリンクでちょうどいい値段だった。食事をした後はしばらく歩く。店の周りには他にも食べ物屋さんがいっぱいあるのだが、北条さんは目を輝かせながらあたりを見回していた。
良哉(さっきあれだけナポリタン食ったってのにまだ食えそうな雰囲気だな(苦笑)家出して上がり込んだ家庭教師の家のカレーをおかわりしそうな勢いだよ。…まあそれは声的は若干紘深さん的なんだけどね…(苦笑))
そう思った俺は北条さんに話しかけてみた。
良哉「北条さん。」
兎愛「何ですか?」
良哉「まさかまだ食えるやつ?」
兎愛「はい!まあでも、下手に食べ過ぎたら就活に響いちゃうから…(苦笑)」
良哉「それもそうだね。俺も去年就活してた時は、結構こういうところも気遣ってたよ。」
兎愛「そうですよね(苦笑)」
良哉「でも紘深さんある時一度、夜8時近くにスパカツ食べたことがあったんだよね。」
兎愛「ありましたありました!面接はしごした時ですよね?」
良哉「それそれ!電車が止まったとかで凄くお腹空いてたって言ってた覚えがあるよ。」
兎愛「そのスパカツのくだり紘深さんから聞いた時びっくりしました!スパカツ食べた後晩ご飯も食べたって。改めて思うにめちゃくちゃお腹空いてたんでしょうね… 面接ってただでさえ頭とかエネルギーとかいっぱい使いますから。」
良哉「言ってた言ってた。そうだよねえ… 俺も面接した後は必ずお腹空いてたよ。」
兎愛「私もです~。私一度集団面接の後に特盛のカレー食べたことがあって。」
良哉「そうそう集団面接ってかなり疲れるよね。…って特盛のカレーを(笑)まあ北条さんのことだからその程度のことはありそうかなって想像はついてたけど…(苦笑)」
兎愛「はい… もう本当に死ぬほどお腹空いちゃってて…(苦笑)」
良哉「そうだったのね…(苦笑)」
その後は駅ビルで北条さんが服を買うのに付き合う。前みたいに俺のかなり場違いな感じが否めない。周りの目を気にしながらだから、疲れる。
~試着室の前~
兎愛「覗かないで下さいね(笑)」
良哉「当たり前だわ!ってか前にもそんな感じのやりとりしなかったか俺たち?」
兎愛「覚えているような覚えていないような(苦笑)」
北条さんが服を試着する間、俺は試着室の方は見ないようにした。
~回想~
兎愛「絶対に覗かないで下さいね。」
良哉「当たり前だわ!鶴の恩返しみたいに言うなよ!」
~回想終わり~
スマホをいじりながら、初めて北条さんのショッピング(とか)に付き合った時のことを思い出す。あんな感じのやりとりはあったことを含めて。
それからしばらく経って…
(試着室のカーテンが開く音)
兎愛「どうですか?斎藤さん?」
北条さんの服は、夏と秋の中間っぽい感じのミニスカートを履いている。はっきり言って、可愛い。
良哉「ああ、いいんじゃないかな?」
兎愛「ありがとうございます!でも斎藤さん?」
良哉「何?」
兎愛「頭の中で紘深さんと比べてませんでした?」
良哉「い… いや… そんなことは…」
兎愛「あ~さてはこれは比べてましたね~(ニヤニヤ)」
良哉「いや仮にそうであっても言う訳ないでしょ!」
なんだかんだありながらも、北条さんは新しいスカートを買って満足したようだ。
しかし他にも目的地はあるという。そんな俺たちが出たのは駅の反対側、大宮駅西口だ。大学の卒業式以来となる大宮駅西口。俺たちは西口から右に行ったところにあるショッピングセンターに入った。
エレベーターに乗る俺たち。目的地は6階。北条さんはルンルンした様子だ。
良哉「この後も何か買うの?」
兎愛「はい。ぬいぐるみを買おうと思ってまして。」
良哉「なるほど。どんなのが欲しいの?」
兎愛「寝そべってるようなの。私まだそういうのは持ってなくて。中古でもいいから欲しいなって思ってたんです。」
良哉「なるほど。寝そべってるぬいぐるみって、たまにネットで見るやつ?ほら、あの目が白い。」
兎愛「まあそんな感じのです(笑)」
エレベーターのアナウンス「6階です。」
そうこうしている間にエレベーターは6階に着き、北条さんと一緒にアニメショップのぬいぐるみコーナーへ。確かにXでたまに見かけるぬいぐるみが並んでいる。
良哉「へーこうして生で見ると可愛いもんなんだなー。」
兎愛「そうでしょ?白目ってのがいいんですよ!」
北条さんはその後はぬいぐるみを吟味するようにして選ぶ。
それから5分以上が経ち、北条さんはお目当てのぬいぐるみを見つけた。
兎愛「この子にしました!」
良哉「へー可愛くていいじゃん。」
兎愛「ありがとうございます(笑)」
北条さんはそれからさらにクリアファイルを2枚選んで、レジに持って行った。
店員「以上で3,450円になります。」
(お金を払う兎愛)
ショッピングセンターを後にした俺たちは、西口をしばらく歩いて、大宮駅からはやや離れた場所へ。そこにはアニメショップが2軒並んでいる。
良哉「どっちに入るの?」
兎愛「左の建物です。」
左のビルに入る俺たち。その3階にはさっきの店と似たような感じで様々なアニメグッズが売られている。
店の中を探す北条さん。俺も側でいろいろ見る。アニメは今もまあまあ見ている俺だが、こんなにグッズがあるのは知らなかった。
兎愛「あ!」
北条さんはお目当てのものを見つけた。それはまたぬいぐるみで、値札が偶然見えたので分かったのだが、値段はなんと120円だった。
北条さんはそれを持ってレジに行き、またルンルンしたような感じで俺の元に戻って来た。
良哉「北条さん。今のぬいぐるみ俺も値札見えたんだけど、120円だったんだね。いやめっちゃ安くね?」
兎愛「はい!しかもあの作品で一番欲しい物だったので、とっても嬉しいです!」
良哉「よかったね。それはそうと、今日行くのはここがラスト?」
兎愛「はい。今回も付き合って頂いてありがとうございました。」
良哉「別にいいよそれくらい。北条さんからの誘いがなかったら、シルバーウィークは家でダラダラしているだけで終わっただろうから。」
兎愛「なんだかこっちとしても嬉しいです。今度は紘深さんも一緒に秋葉原行きませんか?」
良哉「今秋葉原人すっごいよ?(苦笑)外国からも人いっぱい来てるみたいだし。」
こうして、今回も北条さんの買い物のお付き合いは幕を閉じたのだった。
兎愛「また会いましょう。」
良哉「ああ。就活の良い結果、楽しみにしてるよ。頑張ってね。」
兎愛「はい!」
北条さんは湘南新宿ライン、俺は埼京線に乗ってそれぞれ家に帰る。
やっぱりたまにはこういう後輩の買い物に付き合うってのも悪くないと、俺は帰りの埼京線の車内で思っていた。
良哉(それにしても、紘深さんの普段の買い物に付き合ったことってないなあ…)
なんてことも、俺はふと思ったのだった。




