第206話「黒藤○○部」
7月も半ばを少し過ぎたある休日、俺は瑞寿司を訪れた。
大智「おう!斎藤君いらっしゃい!」
良哉「こんにちはー。」
大智「またここんとこ最近よく来てるね。」
良哉「ああ… 言われてみればそうですね…(笑)」
大智「仕事初めて3カ月か。だいぶお金に余裕もでてきたんじゃない?」
良哉「まあ大学時代のバイトと比べて入ってくるお金は多いですね。社会人になったが故にかかってくるお金もありますが…(苦笑)」
大智「そうだよねえまあ社会人になると大学の頃には使わなかったものにお金かかることもあるからねえ。まあ、紘深が新しく開発したサラダ海鮮丼あるから、食べて行ってよ。」
良哉「サラダ海鮮丼… ですか。そういうのなかったですよね?」
大智「そうなんだよ。おじさんがネットでたまたま見つけて、そのことを紘深に話したら2日くらいで考えてくれたんだ。」
良哉「そうなんですか。じゃあ、今日はそれにします。」
俺はその「サラダ海鮮丼」を頼んだ。メニュー名は「季節のサラダ海鮮丼」だ。
大智「へいお待ち。」
その季節のサラダ海鮮丼は、野菜はトマト・きゅうり・みょうが・なす。魚はアジ・いわし・マグロ・カツオが盛られている。大きさは瑞寿司で出ている
良哉(凄いな。俺サラダ海鮮丼食べるのは初めてだけど、めちゃくちゃ旨いな。)
俺個人的としては、刺身とトマトは結構合うと思う。みょうがのピリッと感がさらに良いアクセントにもなっている。
15分ほどで俺はサラダ海鮮丼を食べ終えた。
良哉「ごちそうさまでした。これ、秋以降も出す予定ですか?」
大智「ああ。『季節の』って書いてあるから、秋は秋で別の野菜や魚を使うつもりでいるよ。
良哉「なんか楽しみです。」
大智「そうかそうか。楽しみにしててよ。そうだ。せっかくだからまた紘深にも会っていかないか?」
良哉「じゃあ、そうします。」
大智「よろしくね。じゃあ、1800円ね。」
1800円を払い、店を出て玄関に移動する俺。
(ドアのチャイムを鳴らす音)
ドアのチャイムを鳴らした俺。そんな俺を出迎えてくれた紘深さんは…
紘深「あ、良哉君。」
何かどこか悩んでいるような顔をしていた。
良哉「こんにちは紘深さん。何か悩んでいるような感じしているけど、何かあったの?」
紘深「いや… 特に何か嫌なこととかがあったって訳じゃないんだけど…」
俺は2階に通される。手洗いうがいを済ませ、リビングへ。夏真っただ中だから、リビングには冷房がかかっている。
そのリビングのテーブルには、何かのリストというか、案かなんかを適当にメモ書きした紙がある。
紘深「これ。」
紘深さんはその紙を俺に見せてきた。
良哉「何?これ?」
紘深「9月の新学期にあるオリジナルの部活的なイベント。それの企画案を会議の日までに考えなくちゃいけなくて…」
良哉「そうなんだ。その会議っていつから始まるの?」
紘深「今度の月曜日。それなのにまだ良い案が出なくて…」
良哉「そういうことか…」
そこで俺は一つ閃いたことがある。紘深さんと言えば地方のテレビ局。きっと紘深さんならではの特色が出て他の案と差がつけられるに違いない。
良哉「紘深さん。」
紘深「良哉君?」
良哉「せっかく紘深さんが出していい案なんだから、『地方のテレビ局についてみんなに教える』なんて部活はどう?」
紘深「それ?最初は私もそんな感じの思いついてたよ。でもそれじゃ『部活』ってよりかは『勉強会』みたいだし、スクールでたまにやってるただの『グループワーク』とさほど変わらない気がするからボツにした…」
良哉「やっぱりそうだったか…(苦笑)」
そんな安直で都合の良い話はないかと俺は思った。紘深さんの個性が出て、他の人は違う特色があるから良いのではないかと思ったのだが。
紘深「9月は今の時代まだまだ暑いから外で遊ぶ系のは避けたいし… 体動かすの苦手な子もいるから…」
良哉「そうだよね…」
紘深「だからやっぱり屋内でやる系がいいかなって思ってる。」
良哉「じゃあ何がいいんだ…」
紘深「屋内スポーツ大会ができるほどうちのスクール広くないし…」
良哉「じゃあどうすればいいんだろうか…」
その後も俺は、紘深さん考案の部活のアイデアを頭の中に浮かべては頭の中でボツにするというのを繰り返した。その間の紘深さんも何か頭の中でいろいろ考えているような表情や様子を見せていた。
紘深「あ!閃いた!」
良哉「紘深さん?」
紘深「みんなでちぎり絵を作るっていうのはどうだろう?」
良哉「ちぎり絵か。教室の中でみんなでやるやつ?」
紘深「うん。小学校の頃やったのをふと思い出して。」
良哉「そうなんだ。涼しい教室でみんなでちぎり絵か。いいね。紘深さんのことだから、地方のテレビ局のマスコットキャラクターをちぎり絵で描く… ってか作るのもありかな?」
紘深「いいけど… キャラクターの権利問題大丈夫かな…?」
良哉「そうだよね。自分で言っといてあれだけど…(苦笑) ってか前そんな感じのことなかった?紘深さん店で絵描いてた子に地方のテレビ局のキャラクターの絵描いて珍しがられてた的なことあったよね?」
紘深「あああったあった!その子この間久しぶりにお店に来てくれたよ。小学校に入学したって。」
良哉「もうそんな経つんだ…」
ひとまず紘深さんが出す案は「ちぎり絵」に決まった。言うなれば「ちぎり絵部」。単発で手作りの部活としては良いのではないかと俺は思っていた。俺はちぎり絵なんて、幼稚園の頃以来だろうか。
それから数日が経ち、月曜日の夜。
(良哉のスマホのLINE通知音)
良哉(おっ、紘深さんからだ。)
紘深さんからのLINEメッセージが入って来た。
紘深のLINEメッセージ「今日の会議で私が出した案、結構手応えあったよ。」
良哉のLINEメッセージ「よかったね。会議に参加した人たち、どんな反応してた?」
紘深「『なんか結構斬新』とか、『器用さが求められるからいいかも』とか。あとは『器用さが求められるから、得意不得意で楽しめる人と楽しめない人が出て来そう』って意見もあったよ。」
良哉「そうだったか。やっぱり手先の器用さ求められると得意不得意でその辺変わってきちゃうよね。」
紘深「そうだね~。でも簡単なやつにすればそのあたりも改善されるだろうから、そこは今後の会議で考えるなり改善するなりする予定。」
良哉「なるほど。まあ、俺も俺で今後それがどうなるか期待しているよ。俺が出した案じゃなかったけどね…」
紘深「そうだね…」
良哉「俺いらなかったかもな(苦笑)でも紘深さんのことだ。地方のテレビ局のキャラクターをちぎり絵で作ろうとか言いそうだよ。」
紘深「だから権利のこととかあるからそこまではやらないよ~。」
まあとにかく、紘深さんのオリジナル部活は彼女がフリースクールの職員の仕事をする上でさらなる良い刺激になったのではないかとも、俺は思った。
ふと思えば、あと数週間で夏休み。それはつまり、紘深さんとの富山旅行が近づいていることを意味している。




