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第20話「一面を知る前と後」

良哉の誕生日パーティーから数日。今日は()()も含めた4人で都内のどこかにある遊園地に遊びに行きます。

良哉が知らなかった紘深の新しい一面が、今回ついに明かされます!

兎愛「とうちゃーく!」

誕生日パーティーから数日が経ったある日曜日。俺たちは姉ちゃんからもらった遊園地の割引券を持って都内のどこかにある遊園地にやって来た。ラジオの公開収録も行われている場所で、藤堂も何度か来たことがあるという。

しかも今回北条さんも一緒だ。2日前に学校の期末テストを終えたばかりということらしい。


遊園地に行くのなんていつぶりだろうかと思いながら藤堂がトイレから戻ってくるのを待っている最中、黒藤さんが俺のところに駆け寄ってきた。

「斎藤君!」

「なぁに?」

「斎藤君はどんなのが楽しみ?」

「ああ… バンジージャンプに興味があるな… 黒藤さんは?」

「屋内コースターかな私は。私ジェットコースターは何度か乗ったことあるんだけど、屋内型のはなくて。」


姉ちゃんがくれた割引券のおかげで、大学生で5,000円強、高校生なら4,500円近くかかる入園料をなんと2,000円台に抑えることができた。

トイレから戻ってきた藤堂。彼は最初に行きたいところがあるという。

「ここ。」

そこはお化け屋敷だった。

「斎藤君、お化け屋敷は初めて?」

黒藤さんが聞いてくる。俺も遊園地は何度か行ったことがあるが、お化け屋敷は初めてだ。

「初めてだな俺は。黒藤さんは?」

「私は3回目かな。高校1年の頃友達と他の遊園地に行った時以来。」

というそんな黒藤さんの雰囲気は、何だかビクビクしているようにも思えた。よくしゃべる積極的で明るい印象を持ついつもの黒藤さんとは、少し違う感じすらする。

「まさか」とは思っていたが、お化け屋敷に入った後…


「キャー!」

「うわあああああああああああ!」

お化けが出てくる度に、黒藤さんは大きな声を上げながら俺にしがみついてくる。

1回目の黒藤さんの悲鳴の瞬間、さっきの「まさか」は確信に変わっていた。

俺にとってはお化けよりも、いつもの黒藤さんらしくない悲鳴や叫び声の方がびっくりする。

「斎藤君…後ろからもお化け来ないよね…?」

「うーん。ただでさえ暗いから俺には分からんな… 後ろも怖いなら俺が後ろ行こうか?」

「待って!待って!前はマジで怖いからやめて…!」


「ウァァー!」

「キャーッ!」

10分が経っただろうか。お化け屋敷を出た黒藤さんの息は荒い。

念のため俺は黒藤さんに聞いてみた。

「黒藤さんもしかして、お化け屋敷苦手とか…?」

「え…あ…な、なんでもない… トイレ行ってくる!」

黒藤さんはそう言って一人トイレへと走っていった。「やっぱりか」と俺は思った。

俺は一人、藤堂と北条さんを待つ。どうやら一人ずつで入ったようで、出てきたタイミングはややバラバラだ。北条さんがお化け屋敷から出てきた頃にはさすがに黒藤さんもトイレから戻ってきている。

お化け屋敷の出口付近に一人でいる最中、俺はこんなことを考えていた。


「俺にしがみついてビクビクしている時の黒藤さんの顔、なんか可愛かったな。」って。


次に俺たちはフリーフォールに乗る。フリーフォールは俺も岐阜にいた頃、愛知県にある遊園地で何度か乗ったことがある。

フリーフォールも一応絶叫系ではあるが、ジェットコースターほどではない。俺はこれなら黒藤さんも大丈夫かなと思っていた。

のだが…

「さ、斎藤君… 本当に良い景色だね…」

フリーフォールが上がっていって、60mの高さに来て落下する直前の黒藤さんの声は、完全に震えていた。

そして…

「キャー!」

60mの高さから急に落下する時、黒藤さんはさっきのお化け屋敷と同じくらいの悲鳴を上げたのだ。

黒藤さんはどうやら、急に落下する系のも苦手なようだ。


次に俺と藤堂はバンジージャンプをする。

「斎藤君… 頑張ってね…」

声が震えている黒藤さん。足がすくんでいるようにも見える。黒藤さんはきっと高いところも苦手なのだろう。自分が飛ぶわけでもないのに。


「ひゃっほー!」

藤堂が飛んだ後、俺もバンジージャンプを飛ぶ。

「斎藤さん頑張ってー!」

北条さんの声が聞こえてくる。その隣の黒藤さんはというと…

俺の方を見上げてはいるが、震えている様子だった。

そして戻ってきたときの黒藤さんは、どうやら俺が飛んでいるのを見ているだけで怖かったように思えた。

「黒藤さんは高いところも苦手なんだな。」俺はそう確信した。


「じゃあここらでなんか食おうか。クレープおすすめだぜ。」

藤堂に呼びかけられた俺は店に向かおうとする。その前に一人でベンチに座っている黒藤さんのところに行く。

「黒藤さん。藤堂がクレープ屋行こうぜって言ってるんだけど、一緒に店行く?」

「うん…」

黒藤さんはまだ少し震えているような様子だった。息遣いもまるで持久走の後みたいな様子だ。2つ続けて怖いものだったんで無理もないだろうが、はっきり言っていつもの黒藤さんらしくない。


「黒藤さんもう決まった?」

「ああ… 斎藤君と同じのでいいよ。」

俺はいちごクリームのクレープを注文した。

「私も同じので。」

店の外に出て、俺たちはさっき黒藤さんが座っていたベンチに座って4人でクレープを味わう。

その最中、黒藤さんがなんだか俺に体を寄せてくるような感じがした。俺に甘えてきているのではないかと思えてくる。

「これ、本当に美味しい!」

その時の黒藤さんの様子は、とても安心していたようにも思える。


その後も俺たちは、黒藤さんが楽しみにしている屋内コースターをはじめ、絶叫系ではない様々なアトラクションを回った。


そして昼が過ぎレストランへ入る。

「へーカツカレーあるのか。めっちゃ旨そう。」

俺は迷うことなくカツカレーを選んだ。黒藤さんと北条さんはオムレツ入りのカレー、藤堂は味噌ラーメンをそれぞれ頼んだ。

しかし、藤堂のミートソーススパゲッティが運ばれてきたと同時に…

「こちらのモンブランのお客様…」

「はい。」

黒藤さんはオムレツ入りのカレーと一緒にモンブランまで頼んでいた。この中でスイーツを選んだのは黒藤さんだけだ。


食事を終えた俺たちが次に訪れたのは、様々な花が見られる場所だ。美術館のようなスペースもあれば、春になれば桜が咲き誇る桜並木。それに日本庭園もある。

「母さんに『綺麗な花の写真いっぱい撮ってきて』って頼まれてるんでね。」

と言う藤堂。俺たちは花の写真を撮る。黒藤さんは今は北条さんと一緒で、なんだかとても楽しそうだ。

すると、北条さんとの会話が聞こえてきた。

「紘深さん、お花好きなんですか?」

「うん。どれもみんな綺麗でいいよね。かわいいのもあるし、素敵なのもあるし。」

黒藤さんは綺麗な花も好きなようだ。


桜並木の道を回って、

「次はジェットコースターで決まりでしょ!」

というのは藤堂。またまた黒藤さんが苦手である絶叫系だ。でもお化け屋敷の前よりかは怖がっているような感じはしない。「もう斎藤君と一緒なら大丈夫。」黒藤さんはそう思っているような気がした。

「くるよくるよくるよ…」

「キャー!」

ジェットコースターに乗っている最中の黒藤さんの悲鳴は、心なしかお化け屋敷やフリーフォールの時のそれと比べると楽しそうに思えた。


そして夕方、園内のイルミネーションが点灯する時間だ。12月の頭だから、4時半でももう真っ暗だ。

俺たちはイルミネーションの写真を撮る脇で、黒藤さんも写真を撮っている。

そんな黒藤さんの目はイルミネーションに負けないくらいキラキラ輝いていた。


駅の改札口。

「お前の姉さんにも感謝しなくちゃな。ありがとうよ。斎藤!」

「はい!斎藤さん。今日はありがとうございました。」

「おお。俺も今日はとても楽しかったよ。」


帰りの電車の中で黒藤さんは俺の肩で寝てしまっていた。

黒藤さんは地方のテレビ局が大好きでおしゃべり好きで明るく積極的なだけでなく、お化けや絶叫系、高いところが苦手で、甘いものや綺麗な花、イルミネーションも好き。


今日は黒藤さんの意外だったり新しい一面を見ることができた。そんな一日だった。新しい一面を知れたことで黒藤さんとの距離がまたさらに縮まった。そんな気がする。


「斎藤君!また明日ね!」

「ああ!」

私は絶叫系、乗るまでもなく苦手です。


ちなみに私の思い出の遊園地は茨城県にある「ひたち海浜公園」。

私はその中で特に「おもしろチューブ」という遊具が一番好きだったんですが、2019年5月に老朽化で撤去されたようで、本当に残念です。

他にもシーサイドトレインやサイクリングコース、それにネモフィラの丘が印象に残っています。

かれこれもう10年近く行ってないわけで、また行きたいなー…

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