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第173話「藤堂だけがいない群馬合宿(後編)」

合宿2日目。今日の行き先は草津温泉だ。


朝6時に起き、事前に買っておいた朝食を部屋で食べる俺。本山は「上州牛肉弁当」という、高崎駅の駅弁を食べていた。

「駅で見て旨そうって思ってね。」


その後は身支度を済ませて朝7時にホテルのロビーに集合し、みんなで高崎駅に向かう。黒藤さんはいつもの朝7時のダンスが見られなかったせいか心なしか不機嫌に思えた。


高崎駅に入線してくる電車の入り方は、3番線にのみ入ってくる八高線と、8番線に入ってくる高崎線の一部列車はどのホームに入ってくるかはその時になってみないと分からないものだという。それについて電車好きの1年生の石母田いしもだは「前々から思っていたがまるで千葉駅みたいだな。」と言っていた。千葉駅は博物館に行く時に一度通ったことがあるから、「言われてみればそうだなぁ…」と俺は思った。


「2番線から、電車が発車します―」

俺は黒藤さん北条さんと同じ席に固まった。いつもの3人と言った具合だ。男子が俺だけ、つまり黒一点だから、やや緊張する。


紘深「吾妻線沿線のコミュニティーFMはラ○オ高崎とまえばしC○T○○フエムだけなんだよ…」

兎愛「昨日乗った両毛線の沿線には伊勢崎にもう1つありましたよね。い○さ○FMっていう。」

紘深「そうそう!あと岩宿の隣桐生にもあるよ。F○桐生。」

兎愛「そうそう!コミュニティーFM、みどり市にもあればいいのにって思いました。小○○さんを応援して曲をいっぱいかけるラジオ番組とかあったら亘理君も聴きそうな気がします。インターネットでのサイマル放送もあるんだし。」

紘深「そうだよねwww せっかく地元出身なんだから。」


「サイマル放送」なんていう言葉を平気で使えているあたり、北条さんの黒藤さんからの染まりっぷりは前以上だと思った。あの高性能ラジオを買ってもらった時以上な気がする。

(亘理のくしゃみ)


電車に乗ること1時間半弱。長野原草津口駅に着いた。その途中にも温泉街がいくつかあった。長野原草津口駅からはさらに30分ほどバスに乗る。


紘深「着いたー!」

草津温泉のバスターミナルに着いたのは、朝9時半頃のことだった。あの朝のバラエティー番組もさすがに本編に突入してしばらく経っている頃だろう。


鍋島「これから皆さんには自由に行動して頂きます。しかし、写真部の活動として来ていることを忘れず、節度を守って行動すること。」

一同「はい。」


集合時間は午後2時15分。およそ4時間俺たちは自由に行動できる。

紘深「私高校の頃草津温泉について前調べたことがあるよ。歴史の授業のレポート課題で。『上州草津温泉往来』も使ったよ。」

良哉「ああその本俺も知ってる!とか言われてみればさ、滋賀の方の草津も行ったよね。」

紘深「そうそう!滋賀の方の草津行ったよね。」

兎愛「ダブル草津コンプリートですね。ちなみに私小学生の頃一度草津温泉には来たことがあるんですよ。」

良哉「そうなんだ。」

兎愛「はい。実は私熊谷に住んでいた時期があって。」


バスターミナルのから歩いて少ししたところには小学校や中学校もある。温泉街にある学校。通っている人たちは当たり前なことかもしれないが俺たちからしたら羨ましさも感じる。


まず俺たちが撮るのは湯畑だ。バスターミナルからは歩いて5分ほどのところにある。

草津温泉といえばやっぱりこれだ。他の部員たちも同じことを思っていたようで、こぞって湯畑の写真を撮っている。

良哉「すげー…!」

紘深「やっぱり生で見ると違うね。」

良哉「ああ。(写真を撮りながら)岐阜にいた頃もテレビで何度か見たことあるよ。」


次の場所に移動しようとする俺。すると…

紘深「あ!」


黒藤さんが声を上げた。

良哉「どうしたの?」

紘深「湯もみもうすぐだよ!」

良哉「湯もみってあの?」

紘深「そうそう!」

兎愛「湯もみ懐かしい…!私あの時一度見たことや湯もみ体験をしたことがあって、それ以来なんですよ。」


という訳で、俺たちは湯もみショーを見に行った。全国的にも有名な草津温泉の湯もみ。やはりと言うべきか他の部員以外の人たちも集まっている。


(湯もみショーを見る良哉たち)


本音を言うと写真を撮りたいところだったが、ショーに出ている人たちの肖像権のこともあるだろうし、結構後ろの方だったので他のお客さんの顔も映り込んでしまいそうだったから、やめておいた。


紘深「次見る時は前の方がいいね。」

良哉「だな。リベンジしたいよ。」

湯もみ体験もできるそうだが、それができるのは日曜と月曜だけだという。


紘深「私もやってみたかったなあ。ねえ斎藤君、もし今度2人で草津温泉行くなら絶対日曜か月曜に行って湯もみ体験やろうね。」

良哉「だな。」


もしここに藤堂がいたら、「一緒に行こう」と言った黒藤さんの言葉に藤堂が乗っかって、俺のことをイジってたかもしれないだろう。


「西の河原通り」に出る俺たち。ちょうどいろんなお店が開き始めるタイミングで、北条さんが特にいろいろ食べ歩きしまくっていて、合宿で来ていることを忘れているかのようだった。


「北条さん… 俺たちこれでも合宿で来てるんだからね…(苦笑)」


続いて俺たちは「鬼の相撲場碑」なるものを見に行った。湯畑からは歩いて5分ほどのところにある「西の河原公園」という、至る所から温泉が湧いていてこれまた至ることに露天風呂がある公園の中にある。

「鬼」。そう聞くと俺はたまに独特な歌い方がネットで話題になることがあるあの番組を思い浮かべる。今年7月、久しぶりに復活したあの長時間特番ではご本人とも共演してたっけ。碑の写真も撮ったが、見れば見るほど描かれている鬼のデザインが完全にそれっぽい。


紘深「夏になるとか歌いたくなる見た目だね。」

良哉「だな…w デザインも完全にそれっぽいし。太鼓あったらまさにあれじゃんwww」

紘深「モデルこれだったりしてねw」

兎愛「私この写真文化祭の展示に出そうかなって思います。」

紘深「タイトルどうするの?」

兎愛「『カラダが草津の歴史になる』みたいな?」

良哉「そうなんじゃないかと思ったよ…w」


その番組は毎回見ているという藤堂。例の長時間特番が放送された少し後に高校時代の同級生とカラオケに行ってふざけてあの歌い方をしたところ、同級生たちの笑いを取ったこともあったという。

きっと一緒にいたら、北条さんが繰り出した写真のタイトルに藤堂も爆笑していたに違いない。


公園から見える草津白根山も、しっかり写真に収めた。


その後は俺たちは湯畑付近まで戻り、その辺にある店で食事をした。そういえば北条さん、西の河原通りでいろいろ食べ歩きをした後なのに、3人前近くある蕎麦を平らげていた。


食事をした後、俺たちは「草津熱帯圏」という場所を訪れた。熱帯地域の植物や動物が見られるそこは温泉の熱のおかげで、言うなれば一年中温度はサマーなところだという。俺たちは展示されている植物や動物をいろいろ写真に収めた。

(これだけ標高が高いのに熱帯の動植物が見られるとか、不思議なものだな。)

と俺は思った。


(フラミンゴの写真を撮る紘深)

紘深「ねえ斎藤君。このフラミンゴの写真よく撮れてると思わない?」

良哉「おおよく撮れてるじゃん。文化祭に出しても問題なさそうなやつだよ。動物の写真出してた人いたし。タイトルどうする?」

紘深「うーん…」


20秒ほど考える黒藤さん。


紘深「そうだ!『草津の町で発見!こんなところにフラミンゴ』なんてのはどうかな?」

良哉「なんかそんな感じのタイトルの番組あったような…(苦笑)小中学校の頃○ステからの流れでよく見てたなあ。」


時間的にもう草津熱帯圏が最後だ。その後は道を歩いていろいろ見たり撮ったりした後、2時少し過ぎに集合場所のバスターミナルに着いた。黒藤さんはラジオを聴いていたが、F○ぐんまであることは容易に察せる。


そんな中で続々と部員が集まってくる。この4時間の間にちゃっかり温泉に入っていた奴がいたという噂を聞いて俺は笑った。そういえば無料で温泉に入れる「共同浴場」なるものがあったっけ。

良哉「完全観光気分じゃねえかwww」

今川「あくまで写真部の活動でここで来たってのにwww」


その後俺たちは午後2時半過ぎにバスで草津温泉を後にした。吾妻線で高崎まで戻ってホテルに荷物を取りに行った後ホテルのロビーに集合し、高崎駅で岐阜の家族と藤堂にあげるお土産を買い。そこから高崎線に乗って東京駅へ。

その東京駅に着いたのは、夜8時頃のことだった。


鍋島による合宿終了の挨拶の後、解散する俺たち。北条さんは同じホームに残り一人電車に乗って帰って行った。俺たちは7番線に入って来た電車に乗り、赤羽の家に帰る。さっき通ってきた駅を引き返すも同然な形で帰る。しかも高崎線の高崎行き。なんとも不思議な限りだ。


「なんだかちょっと不思議だね。」

「そうだな(笑)」


その間黒藤さんは、元日に群馬で行われている駅伝大会の中継体制について語った。T○Sと群○テ○ビで同じ中継が同時放送されるという。群○テ○ビはうちのテレビでも映るが、そんなことは知らなかった。だって正月はいつも岐阜で過ごしていたのだから。

そして、夜8時半過ぎに赤羽に着いた。


「じゃあね。斎藤君。」

「うん。」


家に着いた俺。シャワーを浴びた後、LINEを立ち上げ電話をする。電話をする相手は藤堂だ。


(LINE通話の着信音)

「ああ斎藤?合宿から帰ってきたの?」

「ああ。それよりどうよ?面接どうだった。」

「うん!面接も入社試験もとても手応えあった!」

「それはよかったよ。お疲れ。」

「ああ。でさ、合宿どうだった?」

「いやー今回もいろんなとこ回ったよ。」

「どこが印象に残ってる?」

「やっぱり草津温泉かなあ。『鬼の相撲場碑』ってのがあるんだけどね、そこにあった石碑に描かれいている鬼が太鼓あったら鬼○ン○○ンの鬼かなと思うやつだったんだよ。」

「まあ今鬼に太鼓つけたら鬼○ン○○ンにしかならないと思うよwww」

「それで北条さんがその写真のタイトルに『カラダが草津の歴史になる』とかつけてさあwww」

「歴史になるとか夏のスケールを超えてるんよwww」

「だろ?www」

「で黒藤はどうだったよ?」

「まあいつも通りだったよ。高崎の観音像から群○テ○ビの送信アンテナ探したりとか。」

「またあいつ送信アンテナ探してたんかwww」

「ああ。」

「お前この間黒藤と横浜のどこかの公園行ったよね?t○kっていうの?の送信アンテナ見に行ったって黒藤から聞いたぜ。」

「黒藤さん藤堂に話してたんか…w まあそれがあったんじゃないかなあって思ってるよ。」

「そうだよなあ。」


その間も合宿についていろいろ語った。藤堂のことなので黒藤さんのことに話を持って行こうとするが。


「あそうだ藤堂。『鬼の相撲場碑』で思い出してたんだがあのカラオケであれ歌ったじゃん○7時間テレビの後。それ歌って見せてよ。」

「ええ…」

「結構笑い取ったって聞いたぜ。」

「じゃあ…」

(幸太郎の独特な歌い方の歌声)

「あっはっはっはっはっはっはwww ほ○さんそっくりじゃんwww」

「これだけお前に笑われたのは初めてだよ。」

「まあいつも黒藤さんのことで俺をイジってるのに比べたらトントンだと思うよ。」

「それならいいか…(苦笑)」


この後も俺と藤堂はいろいろと雑談をした。


「んじゃあ藤堂、また次の部活でな。」

「ああ。でも瑞寿司でバッタリ会ったりしてな。」

「なんなら明日一緒に行く?お土産もあるし。」

「マジかありがとう斎藤!」

「ああ。じゃあ明日の12時な。」

「ああ。」


(LINE通話を切る音)


そして次の日、俺は藤堂への群馬土産を瑞寿司で渡した。

大智「おおかりんとうまんじゅうか。おじさんも紘深からそれ貰ったんだよ。」

幸太郎「そうなんですかwww」

良哉「やっぱり考えることはみんな同じなのかもしれないですね。」




~さらに数日後~

(電話の着信音)

「もしもし。藤堂です。」

「すいません。藤堂幸太郎さんですか?」

「はい。そうですが。」











「ありがとうございます!是非とも御社でお世話になりたいと思います!では、4月からよろしくお願いいたしします!」

-今回設定初解禁の登場人物-

石母田いしもだ

4月に写真部に入部した1年生の男子部員。

鉄道好きの一面があり、乗り鉄と発車メロディーが専門分野。ホームにも強い。

鉄道写真については特にこだわりはない模様。

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