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第13話「不祥事パニックタイム!」

カフェテリアで一人昼食を食べる良哉のもとに紘深から一通のLINEが。

その後カフェテリアに急いでやってきた紘深は、良哉にあるネットニュースの記事を見せるのですが…

「忘れてた今日点検の日だったんだ…」

午前の授業を終え学食へ向かった俺。しかし今日は設備などの定期点検の日で学食は休業であることをすっかり忘れていた。

バイト代が入るまでまだしばらくあって個人的に節約したいと思っていた俺は、大学近くのコンビニで500円もしないカツカレーを買いそれを大学のカフェテリアで食べる。


しかし食事の最中、黒藤さんからLINEが来た。

「斎藤くん!今どこ?」

「ああ。カフェテリアだけど。」

「分かった!すぐに行く!」


文面から何やら急いでいるような感じがした。

それから5分経つか経たないうちに黒藤さんがカフェテリアに来た。

「いたいた。」

「よお。そこ座っていいよ。」

黒藤さんは俺の正面の席に座る。やはり急いでいるような感じがして、息も切れ気味だ。

「斎藤君!これ見て!」

彼女はおもむろにスマホの画面を見せてきた。ニュースサイトの画面だ。

「えっ?」

その記事を読んで俺はびっくりした。俺もよくテレビで見たことがある人気のお笑い芸人が、なんかヤバい人たちと交際していたことを理由に芸能界を引退することになり、他にも20人近くの芸人さんがそのヤバい人たちの関係者と何らかの形で関わったとして謹慎処分を受けたというのだ。

処分を受けた20人近くの芸人さんもどれもみんな俺がテレビ見たことのある人ばかりだ。東京や大阪のテレビ局が作っている全国ネットのバラエティー番組で活躍している人もいれば、そこでしばらく見かけなくなった後東海ローカルの番組でまた見るようになった人も何人かいる。


「20人近くが処分…これは大変なことになったな…」

「でしょ…?」

黒藤さんは深刻そうな顔だ。処分を受けた人の中に黒藤さんが好きな芸人さんがいたのかと思っていた矢先、彼女はこう続けた。

「これ、出ている番組を”買っている”放送局はどうなるの!?」


俺も岐阜にいた頃や黒藤さんから聞いた話である程度は知っているが、テレビの番組は地域や時間帯によって、東京などで放送されてからしばらく経ってから放送されることがある。例えていうならバレンタインデーをテーマにした企画がその地域では早くてホワイトデーの時期か、酷い時にはクリスマス近くに放送されることもある。ドラマの宣伝がおかしなことになってしまうのもザラだ。

もしその内容が放送されるまでに、その番組に出ている人が何か悪いことをして逮捕されたり、逮捕とまではいかなくとも謹慎や芸能活動自粛に追い込まれた場合、その人が少しでも出ている番組はたとえその人がメインで出ていないものだったとしてもその瞬間にパタッと放送されなくなって他の番組に変わってしまうのだ。俺も岐阜にいた頃、いつからか岐阜県内で放送されなくなった番組が急に復活したことがあって、どうしたものかと思って調べてみたらもともと放送されるはずだった番組に出ている人が変なクスリをやって警察に捕まったことを受けて、急遽番組を変える羽目になったからだったということがあった。


「ああ。これ結構大変なことになるね…出ている番組買っている放送局。」

人気の芸人さんが20人近く処分された今回の騒動。引退する人も結構な数の番組に出ている。これだと相当な地域で相当な数の番組が変わることになるだろう。

悪いこととは思わないが、黒藤さんはそれを心配しているのだろう。何とも彼女らしい心配の仕方だ。

「その通りだよね…もうこれ全国がパニックになってるよ~。」

「ああ…俺も岐阜にいた頃一度同じようなことを見たことがあるなぁ…」


カツカレーを食べ続ける前で黒藤さんはスマホをいじり続ける。すると…

「ほらやっぱり…見て…」

黒藤さんはそう言ってまた俺にスマホの画面を見せてきた。

富山県のテレビ局の番組表だ。時間は夜中の12時過ぎくらい。その12時半過ぎに放送される1時間番組の欄が、ちょっと前に話題になったお笑い芸人が司会のグルメ番組になっている。検索したところ、テレビ局ではなくどこかの制作会社が作っている番組だ。

黒藤さんによるともともとその時間は、俺もよく見ているトーク番組をやるはずの時間帯らしい。

「やっぱり、番組が変わった理由って…」

「そうだよ…」


黒藤さんはそう言ってまたスマホをいじった後、また画面を見せてくる。

「これ…!」

「うわマジかそれも…」

俺は深夜ラジオの時間と被っているためあまり見たことがないが、名古屋の放送局が作っている1時間のお笑い番組の番組ホームページだ。たしかに俺もよく知っていて、今回謹慎処分を受けた芸人さんが1人出ている。

「実はこれね…」

黒藤さんが画面を下にスクロールすると、放送地域情報の欄が出てきた。北は北海道から南は熊本まで、東海3県以外にもそこそこ多くの地域で放送されている。しかも福島と大阪では今日の夜中に放送される予定とある。


「これ、みんな番組変わるやつだよね。今夜やるはずの福島や大阪も。」

「そうでしょ…」

放送局名の部分がリンクになっているため、そこからそれぞれの放送局のホームページに飛び番組表を開く。

やっぱりだ。福島はBSでやっている旅番組、大阪は散歩番組の再放送にそれぞれ変わっている。


もしやと思った俺はスマホを取り出し、やはり今回処分を受けた人のうちの2人がコンビで司会を務めているクイズ番組を検索し、そこからそれに関する内容が述べられたインターネット百科事典の記事を開く。

俺の目当ては、そこに書いている遅れて放送する地域の放送時間のデータだ。


「うわ今夜やる地域あるじゃん。」

「なに。見せて見せて。」

黒藤さんにせがまれてスマホを見せる。彼女もその番組を知っていたようで、察しがついたようだ。

「早速見てみよう。」

「そうだな。」

といい、そのクイズ番組を今日深夜に放送する予定である青森県のテレビ局の記事を開き、そこからさらにホームページの番組表を確認する。

その番組の青森県での放送時間は深夜0時頃から。深夜の時間帯を見てみると…

「やっぱりだ…」

「そうだね…」


岐阜や東京では夜8時くらいに放送しているドキュメント的なバラエティー番組になっていた。その番組について調べたところ、青森県では時間が空いた時の穴埋めとして時々放送しているという。


「ただでさえ20人近く処分されてるじゃん… これ同じような状態なっているテレビ局いっぱいあるやつだよね…」

「そうだよね…」

黒藤さんはさらにこう続ける。

「急に番組を買ってこなきゃいけない事態になったとしても、どの番組のいつやったものを流すか決めて選ぶのもあれだし、番組が届くまでの時間ってのもあるから、本当に大変だよね…」

「うん… 番組作っている側も急に『これ買います』って注文を受けて急いで番組のデータが入ったもの…?を持ってきて、さらにそれを買うって言ってきたテレビ局に送る工程もあるわけだし…」

「こんなこともあろうかと、事前にある程度ストックしておいてあったならいいんだけどね。」

「そうだよね… ただでさえ番組作っているテレビ局の再編集作業も相当大変なのに…」


黒藤さんの言葉の感じから、番組の急な変更に追われるテレビ局の人たちの大変さを伺い知ることができた。

地方のテレビ局が好きだからか黒藤さんもその辺の苦労も分かるのだろう。俺はそう感じていた。


「さっきも言ったけど、本当に大パニックだと思うよ… 特に山梨とか福井とか宮崎とかは…」

「ああ。不祥事ってそういうリスクもあるんだな… 黒藤さんのおかげで分かった気がするよ。」

実はこの話は実際にあった出来事を参考にしているんですが、私も処分が報じられた時は、真っ先に処分を受けた方が出演している番組を遅れて放送している地域の番組表をスマホで調べまくりましたね…


あれはマジでパニックだったと、私は今でも思っています。


次回、良哉がついに紘深の部屋に足を踏み入れる!?

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