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上京男子と地方局マニアの女子  作者: 白石あみの
~夏休み・良哉帰郷編~
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第129話「黒藤さんの料理」

9月7日。朝7時少し前に俺は目が覚めた。


「おはよー。」

(踊りながら)「あ、おはよう斎藤君。もう7時になったよ。」

黒藤さんはテレビに合わせてダンスを踊っていた。昨日黒藤さんと丹羽さんとの会話の中に上がっていた朝の情報番組であることはすぐに分かった。


その後俺は身支度を済ませ、朝ご飯を食べる。今日はゴミの日だからその後ゴミ出しに行く。その間に8時になったようで、テレビはバラエティー番組に切り替わっていた。いつからか母さんはその番組にハマっているという。


俺は部屋に戻り、読書をする。昨日の続きだ。


しばらく本を読むこと1時間くらい。2冊目の本を読み終わった。


(ん…?)

下の階から黒藤さんと母さんが何か盛り上がっている声が聞こえてきている。詳しい内容は聞き取れていないが、賑やかな感じなのが分かる。


(なんなんだろう?テレビでも見てるのか?)

俺が部屋に戻った時点でついていたテレビ番組は、オープニングトークが9時台に食い込むこともたまにあったりする。きっとそれを見て2人で盛り上がっているのだろうか。


(Twitter見てみよ。)

(スマホを操作する良哉)

しかしTwitterを見たところ、その番組のオープニングトークは今朝は8時半過ぎに終わっていたことが分かった。


(今やってる内容はあらかた分かったが、じゃあ何で盛り上がってるんだろう…)


俺は下の階に行くことにした。

(ドアを開ける音)

「あら良哉。どうしたの?」

「母さんに黒藤さん何しとるの?なんか微かだけど上まで声聞こえてきたんだけど。」

「あらま2階まで声聞こえとったのね。黒藤さんに料理教えとったのよ。ほら、黒藤さん高校の頃料理部入ってたこと教えてくれたから。」

「料理?」

「そんで黒藤さんに料理教えようと思ったってわけ!」

「そうなんだ。で、2人は何作ってるの?」

「来てみりゃ分かるわよ。」


母さんにそう言われた俺は、台所に移動した。

そこにはいわゆる「半殺し」にされた状態のご飯が炊飯器の釜の中に入っていた。

「するとこれは… 五平餅かな?」

俺がそう言うと、

「あたりっ!」

と黒藤さんは嬉しそうに言った。そういえば黒藤さん、帰省初日の昼に食べた五平餅をとても美味しいと言ってたっけ。

「じゃあ、2人はさっきご飯を『半殺し』にしていたってわけか。」

「そういうこと!タレも作ってたよ。潰すの結構大変だったなあ…(苦笑)」


「良哉も見ててええわ。」

と母さんは言った。

「じゃあ… うん。一緒に。」

と俺が返すと、料理が始まった。


「じゃあ、また始めよまいか。」

「はい!」

「じゃあ見ててね。」

母さんは炊飯器の釜から半殺しにされた状態のご飯を取り出し、割り箸に巻き付けていく。

(相変わらず慣れた手つきだなぁ…)


俺は思い出す。小学生の頃、母さんがよく俺に五平餅を作ってくれたことを。俺はその時のことを思い出して、懐かしい気持ちにもなっていた。


~回想・小学生時代~

「お母さんお母さん!何作ってるの?」

「五平餅よ。あんたも作ってみる?」

「うん!」

~回想終わり~


そうこうしているうちに、たれが塗られる前の状態の五平餅が1つ出来上がった。

良哉「これをしばらく乾かして、焼いて…でその後にタレを塗るんだったよね…?」

未緒「その通りよ。さあ、黒藤さんもやってごらん。」

紘深「はい!」


黒藤さんがご飯を割り箸につけ始める。思えば黒藤さんが料理をする様子を見るのは初めてだ。まだ寿司を握っている様子すら見たことなかったのに。


「えーっと…」


黒藤さんは母さんの作った五平餅を頻繁に見ながら、見よう見まねでご飯を割り箸に巻き付けていく。


そうこうしている間に、黒藤さんはたれが塗られる前の状態の五平餅を1つ作った。

「うん。初めてにしては良い形ね。」

と母さんは言う。黒藤さんには悪いが、見比べてみると確かに母さんの方が形は良い。

「ありがとうございます!」


「で次はこれを焼くんですよね。」

「ええ。でもただ単に『焼く』ってわけじゃのうて、『白焼き』にするのよ。そろそろちょうどええくらいかしらね。」

母さんによると10分くらい乾かす必要があるという。


母さんは自分が作った五平餅を、焼き魚用グリルの上に置く。焼き魚用グリルで五平餅を焼く。

「焼き魚用グリル使うの?」

「ああ。」


(五平餅を裏返す未緒)

「おっ。」

母さんは五平餅を裏返した。


そして何分かが過ぎて、五平餅が焼き上がった。

「さあ、次は黒藤さんのよ。」

「分かりました。」


次は黒藤さんが作った五平餅を焼く。

「落っこちないようにね。」

「はい…」

黒藤さんは真剣な眼差しで五平餅を焼く。


「そろそろひっくり返してもええ頃よ。」

「分かりました。えいっ!」

黒藤さんは、五平餅を裏返すことができた。

「できましたお母さん!」

「初めてにしてはどえらい上手よ。黒藤さん。」

「ありがとうございます!」


こうして、2つのタレが塗られる前の状態の五平餅ができた。


「これで次はタレを塗るのよ。」

「さっきのですね。」

「そうよ。」

「タレってこれ?」(小鍋を指さす良哉)

「そうよ。良哉それこっちに持ってこれる?」

「ああ。」


俺はタレが入った鍋を持ってきた。

「黒藤さん、やってみる?」

「はい!」

黒藤さんは五平餅にタレを塗った。その数2つ。


「できました。」

「どえらい上手に塗れとるわ。じゃあ、もう1回、今度は焦げ目がつくまで焼こまいか。」

「はい!」


タレを塗ったらまた焼く。今度はさっきとは違い焦げ目がつくまでしっかり焼く。

「どう黒藤さん?」

「…」


黒藤さんはさっき以上に真剣な眼差しで五平餅を焼いていた。


それから待つことしばらくして、

「そろそろええ頃ね。」

「そうですか?分かりました。」

(コンロの火を止める音)


五平餅が焼き上がった。

「これで完成よ。」

「わあ~とても美味しそうです。」

「さあみんなで食べましょう。良哉のもあるわよ。」

「マジで?」

「ええ。後であんたも呼ぼうと思って事前に作っといたのがあって、見本に黒藤さんにも見せたのよ。あそこにあるで、レンジで温めて食べて。」

「ああ。ありがとう。」


(レンジの音)


さて、みんなで五平餅を食べる時間だ。

一同「いただきます。」

(五平餅を食べる3人)

良哉「どう黒藤さん?自分で作った五平餅は美味しい?」

紘深「うん!私、五平餅気に入っちゃった。」

未緒「うふふ。おおきに。どえらい嬉しいわ。」


岐阜名物の五平餅を改めて気に入った様子の黒藤さん。なんだか自分は、それが嬉しい気分がした。


「ねえ母さん、俺もやっとかめに五平餅作ってみたくなったな… ご飯まだ余ってる?」

一部始終を見ていて、俺も五平餅を作りたくなってきた。俺が五平餅を作るのなんて、中学の頃の地元を知る授業の一環で作った時以来だ。

「あら良哉も作りたくなってきたの?ええわよまだご飯余っとるし。作り方はさっきわっちたちの作っとる様子見とったで分かるわよね?」

「ああ。」

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