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第12話「斎藤良哉の地方局テスト」

紘深から地方のテレビ・ラジオに関する話をたくさん聞いてきた良哉。

そんな良哉はあることを思いつきます。

黒藤さんと出会ってからもうすぐ1か月。俺は様々なタイミングで黒藤さんから地方のテレビやラジオに関するいろいろな話をたくさん聞かされてきた。しばらく前に終わった人気のお昼のバラエティー番組が青森県ではずっと夕方に放送されていたこと、昭和の時代に同じ時間帯でしのぎを削っていた土曜夜の2つのお笑い番組を山口県は2時間続けて放送していたこと、宮崎県と大分県では人気のドラマが深夜に放送されたことがあるなど…

とこの他にも様々な話を聞かされてきた中で、俺は一つ気になったことがある。

「一体黒藤さんは、地方のテレビに関してどれだけのことを知っているのか。」「むしろ黒藤さんでも知らないことはあるのだろうか。」ということだ。


そこで俺は決めた。「黒藤さんに地方のテレビ・ラジオに関する簡単なテストを出して解かせてみよう。」と。


ワープロソフトもレポートを今まで書き続けてきた中で大分上達してきた自信がある。俺は夜一人インターネットや地方のテレビやラジオに関することを調べた他、SNSにいる地方局が好きな人のつぶやきを見ながらこれはいいかもと思ったことを問題にする。素人は理解するのにやや時間がかかるものも多々あった。アニメも好きな黒藤さんだ。アニメや声優さんに関する問題も盛り込むか。


とそうこうしている間に時間はもう深夜の1時前。最初は10問くらいでいいかなと思っていた問題の数も30問にまで増えてしまった。でもその甲斐あってかA4両面のそこそこのクオリティーのものが出来上がった。問題のジャンルも自由記述・穴埋め・選択・線結びとさまざまだ。

オー○ナイ○○ッポンを聴いた後、眠りにつく俺。



そしてその日の午後、黒藤さんと一緒の講義の後。

「あ、斎藤くん!おはよ。」

「おはよ。そうだ黒藤さん。」

「なぁに?」

「これさ…」

そう言って俺は黒藤さんとの距離は縮まっているしラブレターじゃないとはいえ、やはりこちらから物を渡すのはやはり抵抗がある。


「黒藤さんに解いて欲しくて、作ったんだ…」

「これ、地方のテレビ局のテスト?」

「ああ…どれだけ知ってるのかなって思ってね…」

「もしかして、私のこと試してるの~?」

からかうような口調で言った後、彼女はこう続けた。

「いいよ!今日解いて明日持ってくるね!」


黒藤さんはご機嫌な様子で次の俺はとっていない科目の講義へと向かっていった。


そして次の日。ゼミの授業の前…

「斎藤君。おはよ。」

「おはよ。」

「そうだ。これ!」

そう言って黒藤さんは、昨日俺が渡した問題用紙を出してきた。

それを受け取る俺。見た感じ全部の答案が埋まっているのは理解できた。「うん。予想通りだな。」という印象だ。

「解いてて楽しかったよ。」

と、黒藤さんは言う。相当自信がある様子だった。


次の講義の後は時間があり他にレポートの課題もないから、空き時間に答え合わせをしようと模範解答を持ってきた。次の授業を終え大学近くの近くの店で食事を済ませた俺は、さっそく大学のどこかにある室内ラウンジの個人学習スペースで答え合わせに取りかかる。

1問目も2問目も合っている。3問目。俺は驚いた。

それは「電波の相互乗り入れ」に関する問題だ。島根・鳥取と岡山・香川はそれぞれ2県で一つの放送エリアとなっていて「準広域圏」とも言われるのだが、最初から東京や名古屋を中心としている関東や東海のそれとは違って、もともと1つずつの放送エリアとした放送局がエリアをお互い隣の県にまで拡大したことによって成立したものだ。それが「電波の相互乗り入れ」なのである。3問目から6問目はそれに関する問題だ。


3問目。自由記述。島根・鳥取の相互乗り入れの日。1972年9月22日。正解。

4問目。自由記述。岡山・香川の相互乗り入れの日。1979年4月1日。正解。

5問目と6問目、それぞれの地域にある放送局がどちらに本社を置いているかという記号分類問題も正解だ。


「マジかよ…」とつぶやく俺。周囲で「塾講師のバイトか?」と俺のことを見ているであろう声がちらほら上がる中、一人答え合わせを続ける。


12問目。東海3県でも放送されているから俺も岐阜にいた時に見たことがある関西で人気の政治トークバラエティー番組について、それを放送していない都道府県は次のうちどれかという問題だ。

選択肢は山梨県・福井県・徳島県・宮崎県。どれも民放のテレビ局が1つ2つしかないところだ。そのうち黒藤さんが選んだのは福井県。

正解だ。


17問目は黒藤さんの好きなアニメの問題だ。あるトップクラスの人気を誇る女性声優がメイン出演した10個のアニメ作品について、関西での放送局の正しい組み合わせを答えろという記号問題。兵庫のみでの放送と兵庫・京都両方での放送は別々にしてある上、関西では放送されていないという選択肢も入れたおまけつきだ。(局を変えた上での再放送は含まず)

全部正解だった。

その次18問目、その同じ声優さんの出演作品のうち4つの作品のネット局の数を多い順に並べ替えよという問題や、19問目、その声優さんの憧れである四国の方出身の別の声優さんの出演作品のうち、その人の地元でも放送されたものに○をつけよという問題。この2問も正解だった。


ラジオに関する問題もそうだ。○ールナイ○○ニッ○○。それには数々の姉妹番組があるのだが、関西地方、特に大阪周辺では番組によって放送している局が違くて東海地方とは比べ物にならないくらい複雑な放送体制なのだ。その姉妹番組全ての関西での放送局を答えよという複数選択可の記号問題を全部クリアしていた。


最後の4問。テレ○大分という大分県にある放送局について、1980年春・1985年秋・1993年秋・そして今現在のそれぞれについて、各曜日夜7時から10時はそれぞれどこの系列の同時放送枠だったかを答えろという問題。曜日により8時・9時・10時でどこの同時放送かが目まぐるしく変わる編成だった時期もあり、遅れて放送する番組を入れている時間帯もあったそのテレビ局。遅れて放送する番組の枠だったところもどこの系列のものだったか答えよという難しい仕様だ。

1か所でも間違えれば即不正解となるこの4問。なんと4問とも全部正解だった。


黒藤さんは結局、30問全問正解だった。


答え合わせを終え、このことをLINEで黒藤さんに伝える俺。

しばらくして講義が終わったのか、黒藤さんからの返信が来た。

「やっぱり!」

「解いててすっごく楽しかった。」


黒藤さんには、やはり問題を解くのが楽しかったように思えた。

なんでも黒藤さんはトイレに行くことすら忘れてしまったほど問題を解くのに夢中になってしまい、20問目を解き終えたあたりでは何とは言わんが相当ヤバい状態だったため、さっきの大分県のテレビ局に関する問題を解こうと問題文を見てそれがやや時間がかかりそうなものであることを察知するや否や即トイレにダッシュしたほどだったという。そんなこともご丁寧に話さなくていいから。性別というものを考えてくれと俺は思っていた。


「私だったら、もっと専門的でマニアな人も難しいと思えちゃうくらい難しい問題作れちゃうかな。」

その返信からは、黒藤さんの自信に満ち溢れた何かを感じた。


先日の東京支社巡りのことといい、黒藤さんは地方のテレビ・ラジオに関する相当な知識を有しているに違いない。俺はそう感じていた。


その大分県にあるテレビ局にあったこと

1985年秋…某大型ニュース番組開始に伴い、22時台を中心にゴールデン・プライムタイムの大改編

1993年秋…新しいテレビ局の開局により、一日を通してかなり大々的な改編を実施。

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