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上京男子と地方局マニアの女子  作者: 白石あみの
~夏休み・良哉帰郷編~
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第124話「出発」

それでは、「夏休み・良哉帰郷編」スタートです!

9月5日。ついに実家に帰る日を迎えた。


(ふぅ… 眠いなぁ…)

と思いながら俺は家を出る。黒藤さんとは朝5時に駅集合だ。まだ朝5時前だからか、駅までの道にある店で開いているのはコンビニだけだ。


駅に着いた俺。駅前広場では、俺の方に向けて手を振っている、キャリーケースを持った女の人がいる。そう、黒藤さんだ。


「斎藤君。おはよう。」

「おはよう。黒藤さん。待った?」

「私も今さっき着いたとこ。いやー斎藤君の実家行くの楽しみでほとんど眠れなかったよ。」

「楽しみ… それはよかったよ…」


夜眠れないほど今日が楽しみだったという黒藤さん。それを言われた俺はどんな言葉を返すべきか分からなかった。


その後俺たちは改札を通り、5時過ぎの電車に乗る。

「1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。」

ここから東京駅までは30分弱ある。朝5時という事もあって、電車はガラガラだ。


そんな黒藤さんはラジオを聴いている。もちろんいつものラジオでだ。

「黒藤さん、何聴いてるの?」

「○化○送。ついさっきまではT○S聴いてたんだけどね。」

「だってこの時間のラジオ、こういうことじゃないと聞く機会ないじゃん?」

「そうだね。まあ今はタイムフリーあるけどね…」

「でもやっぱり生で聴く方がいいじゃん?ラジオって。」


それから30分ほどで、電車は東京に着いた。

「東京。東京。ご乗車、ありがとうございます。」

東京駅に着いた俺たち。朝6時の新幹線で東京を出る俺たち。出発まではあと20分近くある。まだ朝6時前だからか、駅の中の開いている店は数えるほどしかない。


「とりあえず、(新幹線の)改札入っちゃお。」

「それもそうだな。」

俺たちは、この間2人でインターネットで予約した切符を指定席券売機で受け取った後、改札に入る。


~回想・切符の予約をした日~

「あ!ほとんど席空いてるよ!」

「そりゃ1本目だからねえ…」

「どうせならさ、2人で隣同士の席に座ろうよ!」

「お、おお…」

~回想終わり~


てなわけで、この後俺たちは名古屋まで隣同士だ。


待合室のモニターには朝のニュース番組が映っている。俺は思い出す。初めて岐阜に帰省した時、黒藤さんが東京駅までついてきた時のことを。去年帰郷した時は藤堂もついてきたっけ。


「まもなく、14番線に、のぞみ、1号、が、到着いたします。」

しばらくして駅のアナウンスが流れてきて、新幹線がホームに入線してきた。


「じゃあ、ホームに出ようか。」

「そうだね。」


ホームに上がる俺たち。ホームにはすでに新幹線に入線してきていた。

ホームに上がった俺、3年に上がる直前に一旦岐阜に帰郷してからまだおよそ半年ほどしか経っていないものの、一気に懐かしさのような気持ちに包まれる。


「いやー東海道新幹線のホームはいつ来ても懐かしい気持ちになれるよ。」

「そう?」

「だって、『実家に帰るんだー!』って気持ちになるからさ。」

「私と京都行った時はどうだった?」

「その時はなんだかちょっと不思議な感じだったなぁ…『東海道新幹線乗るんだけど今回は別のところ行くんだから』ってな気分だったよ。」


新幹線に乗り込む俺たち。俺は窓側、黒藤さんが廊下側の席だ。

黒藤さんと隣同士で新幹線に乗るなんて、一緒に京都旅行した時以来だ。

黒藤さんと隣同士の新幹線、やっぱりちょっと緊張する。


(発車メロディーの音)

「14番線、のぞみ、1号、博多行きが、発車いたします。」

ついに新幹線は東京を出る。それはつまり、黒藤さんが一緒であるといういつもとは少し違う帰郷の始まりを意味する。


その黒藤さんはというと…

(ラジオを聴いている紘深)

相変わらずラジオを聴いていた。そういえばネットで調べたことだけど、前は新幹線の中で独自の音楽とかラジオを聴くことができたという。もう終わってから久しいけれど。


品川を過ぎ、新幹線は新横浜に着いた。


その黒藤さんはラジオを聴き続けている。

「ねえ黒藤さん。神奈川入ったけど今どこ聴いてるの?」

「FMヨ○○マだよ。」

「それって、やっぱり神奈川入ったから?」

「うん。せっかく拠点?のエリア内に入ったんだから。」

「ははは。その辺のこだわりやっぱり黒藤さんらしいや。」

「そうかな?(苦笑)」


そこから名古屋までは、1時間強ノンストップだ。

(俺もラジオ聴こうかな…)


黒藤さんがラジオを聴いている脇で、俺もスマホのラジオアプリを立ち上げて、ラジオを聴いてみることにした。


平日朝のこの時間のラジオ。滅多に聴く機会がないからか、新鮮な感じがする。


すると…

(ん?)

小田原を過ぎ、新幹線はまた駅を通過している。もしやと思った俺はスマホの地図アプリを立ち上げる。

(早いもう入ったんだ。)

と思った俺。新幹線はもうすでに静岡県に入っていた。さっき通過した駅は熱海駅だろう。


(ということは…)

俺はラジオアプリを閉じる。初めて岐阜に帰郷した時、黒藤さんから言われたことを改めて思い出す。

~回想~

「そうだ斎藤君、新幹線の中でラジオを聴くなら、熱海を通過したとかで『静岡に入ったな』ってことを確認した時に一旦アプリ閉じてね。」

「ああ。でもなんで?」

「じゃないと、アプリの地域判定が東京や神奈川のままになっちゃうから。」

「分かった。」

~回想終わり~


そして、俺はまたラジオアプリを立ち上げる。

(よしっと。)

すると、地域判定がちゃんと静岡県になっていた。

(やっぱり黒藤さんの言う通りだよ。)

そう思った俺は、静岡のAMラジオ局を選局する。


「ねえ黒藤さん。静岡入ったね。」

「うん。斎藤君今ラジオ聴いてるみたいだけどどっち聴いてる?」

「S○Sラジオ。黒藤さんは?」

「私も今それ聴いてるとこ。熱海だから1557khzでね。でも○-mixもこの後聴こうかなって思ってる。」


東京も静岡も天気が非常に良く、富士山もバッチリ撮れた。思えば静岡も黒藤さんと一緒に旅行した思い出の場所。静岡駅を通過するとともに、その時の思い出が次々と蘇る。


(じゃあそろそろ軽食でも食うか… 朝早いせいか腹が減った。)

そう思った俺は、静岡のFMラジオ局の放送をBGMに事前に買っておいたパンを食べ始める。そうこうしている間に新幹線は浜松を過ぎ、ついに愛知県に入った。


豊橋駅を通過する新幹線。俺はまたラジオアプリを閉じ、また立ち上げる。地域判定は愛知県になっていた。

(いよいよ愛知に入ったんだな。)俺はそう思っていた。


そして…

「まもなく、名古屋です。東海道線・中央線・関西線と―」

名古屋駅に着いた俺たち。


「黒藤さん。忘れ物とか大丈夫?」

「うん。荷物よし、リュックよし、ラジオよしっと。」


新幹線を降りた俺たち。ここからは東海道線に乗り換えて岐阜…

と言いたいところだが、その前に俺たちには寄るところがある。

この続きは、また明日!

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