やわらかい石
演芸場の舞台で、二人組の漫才師が喋っている。
「世の中には、やわらかい石ちゅうもんがあるらしい」
「なんやそれ、どんな良い事があんねん?」
「ゴムで出来てんねん。投げて人に当たっても痛くないんや」
「石投げたらあかんわ。そして、痛くないように石投げる奴なんかおらんわ。他に良い事ないんか?」
「石の上にも三年ちゅう『ことわざ』があるやろ? 固い石の上に三年は辛いけど、やわらかい石の上なら楽やわ」
「それ、ことわざの例え話やろ。現実の世界で良い事がある訳じゃないやろ」
「焼け石に水ということわざもあるな」
「もう、ことわざはええねん」
「なんやお前、頭固いな。石頭」
「お前がやわらかい頭をしてるとでも言いたいんかい?」
「もちろんそうや。あっ! それならうちら二人揃って、やわらかい石やな」
「もうええわ」
この二人のコンビ名は、やわらかい石。いつも、同じお決まりのセリフで締めくくるらしい。