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眠れぬ龍の夢  作者: 森 彗子
第1章
3/101

コレクター 2

 朝を迎えてシャワーを浴びて、旅支度がほぼ終わった荷物に化粧ポーチを詰め込んで、この日のために買ったワンピースとカーディガンを着て、部屋の戸締りを燿馬と一緒に見て回った。


 インテリアの趣味は私が一任していたけれど、実家とあまり変わらないアメリカンビンテージ風のアイテムが並ぶ、中性的な空間になっている。


 二人で囲む食卓テーブルは、パパが来た時にパール調のスクエアタイルで装飾してくれて本当にオシャレで気に入っている。


 タイルに指を押し当てて、「行ってきます」と言って部屋を出発した。


 朝の空気が気持ち良くて、手を繋ぎながら坂道を下っていく。


 犬の散歩をする人や、仕事に出掛けるサラリーマンの中を、遊びに出掛ける装いの私達はいつもよりゆっくりなスピードで歩いていた。


 音もなく近付いてきていたプリウスが追い抜いていく。坂道は長く続いて、一番下まで降り切った場所に地下鉄の駅の入り口が口を開けて待っている。


 街路樹は新しい若葉色の小さな葉が生えていて、神社の境内の桜は今にも咲きそうなほどつぼみが膨らんでいた。


「もうすぐ桜の季節だね」


「そうだな。また二人で花見しようか」


 と、語り合いながら、地下鉄の駅の階段を降りていく。


 千代田線の車両が入ってくるときの風が吹き始め、キャリーバッグを持ち上げた燿馬が先を急いだ。


 履きなれないパンプスのヒールが、カツンカツンと音を立てて私をはやし立ててくる。焦って転んでも嫌だから、少しだけ慎重に階段を駆け下りて改札をデジタル定期券で通過した。


 滑り込んできた電車に入ると、春休みなのに学生も多く混じり合っていて、通勤時間帯の満員電車の出口付近で燿馬に身を守られながら、つり革の上の広告のセンセーショナルなゴシップ記事のタイトルが目に飛び込んだ。


 大手町で降りて東京駅に辿り着き、駅弁を買うために中央改札口まで歩いていく途中も沢山の人にすれ違ったり、追い越されていった。


 改札の向こう側に入っても東京駅では本当に沢山のお店が充実していて、まるで百貨店のデパ地下のようだといつも思う。


 先を急ぐ旅じゃないから、今日は初めてじっくりと見て回りながら、燿馬が食べたがっていたお弁当売り場に辿り着いて買い物をした。


 そして、新幹線の切符を買って改札を通り抜けて階段を上っていく。


 乗車する前にトイレに行っておこうと思って、私達は交代で用を済ませた。


 いよいよ新幹線に乗る。すごくわくわくしていた。


 行先は箱根温泉のさらに奥にある、真央さんのギャラリーだった。


 あそこに私の去年受賞した作品が展示されているし、他の作品も数点展示して貰っているから、とても楽しみで、北海道から取り寄せた小さなカンバスの作品はもう誰かに買って貰ったと知らせが入届いていた。


 新幹線が入ってきて、指定席の切符を買った私達は自分達の席を見つけてくつろぎ始めた。


 キヨスクでガムを買うのを忘れた私は、燿馬に荷物を任せて財布だけ持って新幹線を降りた。


 お目当てのガムを買って小走りで新幹線に戻る時、丁度窓の向こう側に燿馬がいて手を振ると、はにかんで首をぐいと動かす仕草で「はやく戻れ」と指図された。


 急ぎ足で入り口に向かっていくと、突然左腕を掴まれた。


 振り向くと同時に目の前が暗くなる。


 何が起きているのかわけもわからない内に……


 ―――私はたぶん、気絶させられていたんだと思う。



 目が覚めたのは、それから五時間後の事だった。 



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