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氷結されし物語 IV


「待って!ゲート!」


「なんだよ!」


「おじさんはお家で待っててって言ったはずよ」


 俺の手を引きながらアインは淡々と言った。


「んなもん知るか、あんなもん見て、じっとしてろって言われたほうが無理だろ」


「余計危険でしょ!?」


「アイン…親父は俺に嘘をついた、親父に何かあったのは間違いない。もう俺は誰も失いたくない…」


俺は目を伏せた、笑いを堪えるのが精いっぱいだ。親父を助けるのはいいが、純粋に気になるって言うのが本心だ。そしてこう言えばアインが確実に許すのも知ってた。


「はぁ」っとアインはため息をついた。


「わかった、だけど本当に危険だったら力ずくでも私はゲートを連れ戻すからね」


「とりあえず、行こう」


 俺らはさっき来た道を辿っていく。アインはいまだ割り切れない表情でいた。教会に近づくにつれ民家は少なくなっていく、さっきまでの人だかりはもうどこにもなかった。


「やけに静かだな~やっぱなんかあったんだな…ラストスパートだ、俺が一番に駆けつけてやるぜ!」


 スピードをさらに上げ、俺は目の前に見える教会に向かって駆けてゆく。


「ゲート!やっぱりただ興味本位だったのね...だまされる私も私だけど…」


 アインはため息を吐き呆れ顔で追いかける。


 アインが追いつくころ、目的地の教会にたどり着いた。周りはぐるりと雑木林で囲われている。大通りのレンガ造りの家屋をよそに、林の奥に静かに巨大な教会は佇む、まるで何事もなかったかのように。

 小さい頃からよく通う教会、見慣れた俺らは普通に感じるだろうけど。大陸中の教会の中でもこのセント.マリア.エレム教会は二大聖教会と言われているほどに有名なのだ。

 白い大理石で覆われ、白銀に輝く外壁に複雑で細やかな装飾、そしてその書庫に保管された聖書物の数々、どれも世界に無二の財宝だ。

 結界の規制線の後ろに立ち、教会を眺めていた。そして踏み込んだ、規制線の向こうに出たと思いきや、アインが目の前に立っていた。


「どうしたのゲート、入らないの?」


「いや、今入ろうとしたら出てきた、多分親父の術の何か...親父の覚醒天賦属性、確か属性名は...」


「『結界(シュランク)』よ、この現象も多分その一つね、そしてこの現象からして、多分中で起こっている事は外からは見えないようにしてあるのね」


アインは頬に手を当てながら思案顔で言った。


「じゃあどうすればいいんだ?手伝うどころか入れねぇじゃんか」


「これは多分入らないほうがいいよ、おじさんがそうまでして秘密にしていることだし…ここで待ったほうがいいわね」


 アインは深刻そうな顔つきで言い聞かせようとする。


「...それでも僕は行きたいんだ、親父がこの結界を張る意味は多分相当な事だけど、俺はもう何もできないでいるのは…ごめんなんだ」


 アインの目を見ようとはしなかった、見たくはなかった。


「はぁ、そう言うと思った、ゲートが行くならわたしも行く」


「助かる、で?どうやって入るんだ?」


「これは結界だから空間自体を移動したわけでわないの、だからわたしの感知魔法で位置はつかめるはずよ」


 アインは結界内に手を伸ばした。結界は肉眼では確認はできず、手はただかざされたようだが、きっと全身が結界を越えると、また元の位置に戻る仕組みになっているんだろう。


「そうか、頼む」


 緊張感漂う中、アインはゆっくり目を閉じ囁く。


感知(ジールフューレン)


 大気中の精霊を振動させ、アインは少しづつ周囲の生命反応を検知していく。


「いたよ、教会の右側から一人。荒れた脈拍、輪郭も多分おじさんのね...っ!!」


「どうかしたか?」


「中央からもう二つ反応がする、それも人間じゃない、見たこと...ない反応...」


「どういうことだ?」


 アインは目を開け、眉をひそめる。


「わからない、とにかく行ってみよう、幸いおじさんは結界の臨界線にいるの。施術者なら、外の様子も見えるでしょうから行ってみましょう」


 アインは親父の存在が確認できた方角に目をやる。結界の外からは何も見えない、ただの庭だが、そこに親父がいるのは確かだ。

 

俺らは小走りになり、結界を沿ってかけていった。


...


「この賭博、あなたの勝ちとおっしゃりまして?私奴(わたくしめ)も見くびられたものですね。いいでしょう、神の本気お見せになりましょうか」


「せいぜい僕を退屈にさせないことだね」


 ジョーカーは両手を後頭部に回し、顎を突き出し見下す。


 「スゥ」と白く冷たそうな息を吐く。そして(とな)った。


氷像(アイスベッセル)


瞬間、ジョーカーの周り氷像(スカイディア)が幾数十と顕れる。宙舞う土煙の中、それはさも生き返る氷の兵士かのように地面から伸び出た。どれもが命を授かったかのように、スカイディアと同調し、動き出す。


「ほぉ~面白いね、全部から同じ生命反応がするよ、どれが本物か見分けさせないって戦法だね?」


 ジョーカーは他人事のように目光らせ、氷像を見ながら感嘆する。


「お気に召して何よりですわ、平然といられるのも今のうちでしょう、氷花(ヘイルフルール)


 一斉に目を細めた氷像(スカイディア)たちは揃って左手を宙にかざす。そこから発射されたのは紛れもなく飛び交う氷の花びらだった。結界の端でをそれを見届ける私も思わず言葉を失う。


「これは綺麗だね!だけど、まさかこれを僕に当てようなんて思っていないでよね?」


「もうちろんそのつもりでございますが〜?何か~?」


 スカイディアは卑しく口元を釣り上げ、見下すようにジョーカーを睨みつける。その目は勝利への確信を物語っていた。


「僕が全部よければいいだけのこと。僕のスピードさえあれば、こんな...ッ!!」


 足を踏み出そうとしたが、動かない足元にジョーカーは目をやる。そこにはいつからか氷の手が地面から生え、ジョーカーの足をがっしりとつかんでいた。

土煙りに隠れていた足元をスカイディアは見逃さなかった。


「あなたはもう負けているのですよ、故に、御機嫌よう〜」


 スカイディアはゆっくりと開かれた左手を握りしめてゆく。 


...


 異次元すぎる戦いを眺めながら、私は思いを巡らせていた。衝撃で背中を強打したせいか、立ち上がらない体は教会の大きな壁の破片にもたれていた。


「もう一度あいつらに会いたいな...」


 ゆっくりと目を閉じた。対戦する二人のどちらが勝とうと待ち受ける運命は同じで、どっちともバッドエンドだ。


「おじさん、聞こえる?」


 そばで誰かが囁いた、聞きなれた誰かの声が。首を回し、壁越しに外を見る。そこにはアインがしゃがみこんでいた。何か見えないものを探すかのように見回して、そしてその後ろには解せない表情のゲートがいた。


私は目を疑った。幸い結界の外の変化も自分以外には見えない結界構造なので二人の化け物は戦闘で気づいてないらしい。

 私は慌ててアインとゲートに盟盾(ブルーオンブルー)をかけた。


「お前ら、ここで何をしてんだ、家で待っていろって言っただろ!?とにかく今盟盾かけてる、聴覚の遮断はは優先的に解いた」


 結界の外にいた二人は突然した声に驚いた表情を浮かべた。


「なんで小声なんだよ?」


 ゲートはのんきに聞いてきた。


「いいかお前ら、施術はあと五秒ほどだが、終わってもそこから一歩も踏み込むな、状況の説明は実際見てからのほうが早い」


「は?どういうことだよ」


「ゲート、おじさんの言うこと聞いて」


 アインは事態の深刻さを察したようだ。それから数秒で、施術は無事終わった。

 

きっとさっきまで見えていた白銀に輝く教会などなく、あるのは一面の瓦礫とあちこちに空いた穴ぼこだらけの地面だろう。そしてその中央には、空に浮かんだ蒼く輝く少女と紫のオーラを放つ少年の二人がいる。


「どうなってんだよ!親父!何があったってんだよ」


 ゲートは大声で問いかけてきた、アインもあまりの現状に言葉を失っている。


「はははっ...お父さんちょっとやらかしちまってな」


 引き攣った顔に笑顔を浮かばせようとしたが、きっとぎこちなかっただろう。痛む腕を上げ、指で頬をかいた。


「...」


 アインは言葉を発することなく、驚くというよりは冷静すぎる眼で、状況を理解しようとしていた。


「なんで笑っていられんだよ、大丈夫とか言って、ボロボロじゃんか!とにかくここから離れよう、立てないなら手ぇ貸すから!」


 そう言うとゲートは踏みだし、結界の中に入ろうとする。


「なんだよ、邪魔すんなよアイン!」


 あと一歩のところでゲートの手首を、膝まづいたアインが強くつかんだ。


「...だめ...だよ」


 ゆっくりとアインは言葉を紡ぐ。その眼は虚ろで、どこか遠くを眺めているようだった。


「あぁ!?早く親父を助けないと手遅れになるだろうが!」


 ゲートは必至にアインの手をふいほどこうとした、そしてポケットから何かが零れ落ちる。それは十字架のペンダントがついたネックレスだった。


 目を瞠った。地面に落ちてゆくペンダントは空から差し込む光で輝き、キラキラと流星のように目の前を過る。


「はっ...そういうことだったのか...」


 思わず自嘲気味な声で、短い自嘲とともに、私は肩を下す。コンマ数秒の間、世界が停滞しているように見えた、いろいろと考えを巡らせ、そして、決意した。

結界霊(シュランク)、我の奏でる神話を受け継ぐもの、我の()るものとする、声限(ウォクスリミット)


 私の声が二人以外に聞かれない天賦魔法を自分にかける。黙り込むアインの手を振り解き、ゲートは迷わず結界に踏み込もうとした。


「ゲート!待つんだ、そしてアインも、これから言うことをちゃんと...」


 心で迷いが生じる、だが、それでも続けるしかなかった。


「ちゃんと覚えておくんだ...」


 チャリンと音を立て、ペンダントは地に着いた。同刻、化け物たちの戦いは決着を迎える。


読んでくださりありがとうございます、「数をこなせば自然と書く力は身に着く!」と信じ、今回も投稿させていただきました。文章力はふざけたようにひどいかもしれませんが、一生懸命書いたので、読んでくれただけでとてもうれしいです。それとは別に、助言や、コメント、何か一言もらえるだけでも私の今後の作品に生かせると思いますが、いかがでしょうか。なので、読んでくださった皆様のご感想などをいただけると、助かりますし、何よりもモチベーションが上がるので、よろしくお願いします。

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