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妖精の森 IX

 自分に任せてと言って飛び出したゲート、彼の背中姿を追うことしか私にはできなかった。


 そうこう考えているうちに、そばにいつの間にかモーリスさんは立っていた。


「モーリスさん、ゲート…大丈夫でしょうか?昨日の今日で…」


 ひたすら攻めに出るゲートを、少し離れたところで私たちは見ていた。


「ふむふむ、大丈夫じゃよ。それよりお前さん、お前さんの方が魔法力は強いはずじゃが?なぜゲートのやつが決闘デュエルで戦っているのだ?」


「彼はいつもこうなのです、弱いくせに喧嘩っ早いんですよ」


 軽く笑みを浮かばせた。


「ふむ、君も苦労をしておるのう」


「慣れっこですから」


 両手を後ろに回し、私は軽く苦笑いした。


「しかし、トリーの傷は深いぞ。お前さんらが地図を欲しがるのはわかるがな、ふむ、正直トリーを説得するのは不可能に近いぞ」


 モーリスさんは私を見上げ、顔はきょとんとしていた。


「確かに、地図は欲しいです。でもそれ以上に、ゲートはトリーちゃんに伝えたいことがあるんだと思います。大丈夫です、彼なら」


 大丈夫よ、ゲートなら。なんたってゲートは、あの日の私に生きる意味を教えてくれたのだから。きっと…彼なら…


・・・


 でも、私の期待は大きく外れてしまった。トリーちゃんの魔法に捕まったゲートは今、中に浮びトリーちゃんを睨み返していた。でも、私にはわからないことがある。なぜだろう、息を苦しそうにしているゲートより、トリーちゃんの方がよっぽど辛そうだ。  


「ゲートくん?今度喧嘩を売るときは相手を選ぶことね」


枝に持ち上げられたゲートに向かって、地上でがっかりしたと言う表情をトリーは浮かべていた。


「なぁ…トリー…」


「なに?」


 遠くから聞こえたトリーちゃんの声に温度は感じられなかった…。それでも、神様と名乗っていたあの氷女に比べるとずっと暖かい、優しい声だと思った。そしてもう一つ、すごく似ていると思った、あの日の私に。


「地図…作ってくれよ」


 あいも変わらず、ゲートは食い下がる。


「しつこい…!!」


 トリーちゃんの声が裏返った。トリーちゃんの手をよく見ると、それはぐっと握り締められていて、小刻みに震えていた。それに反応したのか、枝でできた拳はさらに強く締め付けたように見えた。ゲートの顔はさらに息苦しくなる…


「なぁ!トリー…天属を持ったことがそんなに嫌か」


 そばで見ている私の心が痛むほどに、ゲートは苦しんでいるように見えた。それでも必死で言葉を紡いでいる。


「あんたにあたしの何が分かるってのよ!どうせあんたらも、あたしのこの力を利用したいだけでしょ!どいつもこいつも、善人面掲げて、用が済んだらあたしを見捨ては、気持ち悪がった!」


「だからなんだってんだよ!そいつらがしたことと、俺らを重ねんじゃねぇ!言っとくが、お前のその力、俺ら人類界じゃあ何も珍しくねぇ!自意識過剰なんだよ!」


「うるさい…!」


 二人の言い争いを眺めながら、悪い予感が込み上げる。横に並ぶモーリスさんも困った表情を浮かべ、じっと見ていた。


 そして、予感は見事的中してしまった。トリーちゃんは強く握った拳を持ち上げ、朝の少し乾いた空気を切るように、素早く振り下ろした。ゲートをつかんだ枝はそれに応え、ゲートもろとも草の生い茂った地面に叩きつけられた。


「っ…!」「ゲート!」


 思わず叫びだしてしまった、両手で口を塞ぎ、その光景を見ていることしかできなかった。


「へっ、その…程度か」


 痛みで目を細めているゲートは今なおイキがっている。強がりの笑みを浮かべながら、彼は額から血を流していた。心が痛む…


「ゲート、もう…」


 声にもならない苦痛が、引きちぎられそうな胸から湧き出る。胸が締め付けられるのがわかった。


 そんな不遜なを顔を掲げるゲートに、トリーちゃんは、無言で地面に叩きつけることで答えた。二回、三回、まるで地獄絵図のように残忍で痛ましい光景。その苦痛が永遠に続くかのように思えた。


 もう何回地面に叩きつけられたかわからなくなった。ただそれが止まったころ、緑茂った庭はゲートの血で真っ赤に染められていた。ゲートはとっくに意識を失って、巨木の手の中でぐったりとしていた。


 涙でぼやけた視線、と同時に私の足は勝手に進み出す、ゲートに向かって。そして、その苦しさが声となって飛び出した。


「ゲート!もうやめて!お願いだから、もう…」「アイン、来んな…!」


 血まみれの顔でゲートは力を振り絞って叫んだ。


「トリー…これで満足か?言っとくが、俺らが友達になったのはお前の能力でも、天属でもない。俺らはトリーって言う奴と友達になったんだよ。だから…」


 静かにゲートは言葉を紡いだ。その視線はまっすぐ、トリーちゃんのいる方向に向けられている。その先で、トリーちゃんは涙を流していた…苦しそうに、すがるようにボロボロと涙を流している。そして、ゲートは大きく息を吸って叫んだ。


「信じろ!誰がなんというと…俺たちはお前の味方だ!」

 

「なんで…そこまでするの…!頼んでもないのに」


 涙目で答えるトリーちゃん、その顔はどこか少し吹っ切れたような顔で、そして少しだけ困惑も混じっていた。


「お前自分で言ってたろ、困った時はお互い様って…それだけだ」


 トリーちゃんは固まったまま動かない。でもゲートを掴んでいた巨木は、その枝をゆっくりと下げ、地面に優しく置いて行った。ゲートは今にも閉じそうな目を必死にあけ、トリーちゃんの答えを待った。


 すると、トリーちゃんは何も言わずに地面に突っ伏して泣き出した。いつの間にかトリーちゃんの魔法は解かれている。ゲートは地面に座ったまま、なにも言わなかった。


 空から光の粒が舞い降りてくる。それは螺旋状に降下をつづけ、ゲートの目の前まで落ちてきた。それにゲートは手を差し出した、軽くそれに触れると花火のように光の粒は飛び散っていく。決闘デュエルに勝った証だ。

 

「勝った…」


 そうゲートがつぶやくのが聞こえた。そして、そのままゲートは意識を失った…

 読んでくださりありがとうございます。夏で熱くなってきた〜っと思えば、いきなり寒くなってしまって、天気の変化に気分も振り回される私。そんな中、色々と熟考した挙句、この連載はここで一旦終わりにしたいと思っています。まだまだ物語が駆け出したばかりで、この後に続く展開も考えてはいるものの。やはり、これではダメだと思ったので、身勝手ながらも、この物語はここで一旦お開きにさせて頂きます。

 

 しかし、一通でもご要望をいただければ、即座に続きを書かせて頂きます(本当ですよ)。私の自己満と言われても仕方ありませんが、読んでくださる読者の興味に沿える作品を書きたいので、どうか温かい目で見守っていただけたら幸いです。これからも倦まず弛まずと努力していき、自分の文章を、読者の楽しめるものに磨き上げられたらなと思います。次で最終回になりますが、これからも宜しくお願いします。

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