妖精の森 IV
風呂を上がるなり、脱衣所へと入った。
さすがモーリスの爺さん、脱衣所まできちんと分けてある。これにコメントを付けるのは決して、決して!アインを覗きたいとかそういう下心からくるものではない。決してだ、大事なところだから三回言うぞ。
そんな事を頭の片隅に思いつつ、星霊魔法学校の制服を手に取ってため息をついた。贅沢を言うつもりではないが、所々に穴が開き、着れたものじゃない。
『ゲートくん?』
扉の向こうからトリーが呼び声がした。
「なんだ?」
『着替え、制服の横に置いてある服を着てね、あと、ご飯できたからね』
そして彼女は俺の返事を待たずに隣、つまりアインの脱衣所まで忙しく走っていった。『ドンッ』とドアが開く音がした...隣で。悲鳴が聞こえてくる、アインだ、どうやらトリーは着替え中のアインに構わず入ってったらしい。そして、俺に伝えた事を繰り返すも、ついでに着替えを手伝うかと聞いた。もちろん即返事で追い出されたが。って言うか彼女こんな感じだったっけ?
そんなやりとりを傍らに、俺は棚の上に置いてあったもう片方の服に手を伸ばす。
すこし古びた小麦色のV字ネックの半袖に、黒く地味な長ズボンだった。下着は自分のがあるのでこの二つで何とかしのげそうだ。この格好はどこかで見たような気もするが、まぁいいや、文句をつけてはいられない。制服からペンダントを取り出し、黒い長ズボンのポケットにしまう。
着替え終わり、モクモクと上がる湯気とともに脱衣所を出るとアインもちょうど出てきたところだ。
黒い髪を優しくタオルで拭いていて、風呂上がりですこし顔を赤らめてたアインは俺を見てニコッと笑った。ヤ...ヤベェ、可愛いって思っちまう、なんでだ、いつもの事なのに。慌てて目を逸らす。彼女は制服に似た服装をしていた。紺色のショートスカート上に白い半そで姿だった。
下から順に見上げていくと、目が留まっていけないところで止まった。学校の男たちをひゅ~ひゅ~言わせていたあそこだ。言わなくてもわかるだろ?皆まで言わせるな…。とりあえず目にやり場に困った俺は目を逸らした。
「ゲート?顔…赤いけど、のぼせた?」
彼女が困惑した顔で聞いてくる。俺が答えを模索していると救世主(トリ―)が現れた。
「お二人さ〜ん、アツいね〜ヒューヒュー」
「違うって!それよりアレだ、腹減っタナ〜!」
トリーよ、そのテンションに感謝させてくれ、なぜか気まずかった所に来てくれて、助かった。腹をさする動作をしながら俺は飯を急かす。アインは俺の反応にきょとんとしている。って言うか、いつからこんな事を考え始めるようになったんだろう、こんなに俺脳内思考であふれていたっけ。あれ?
「まぁ大した物は準備できないけどね」
「とんでもない、本当にありがとうございます、わざわざ準備していただいて」
「だから、アインちゃんは固いなぁ〜別にいいって、困った時はお互い様でしょ?」
「そうだぞアイン、お互い様、お互い様〜」
アインがギロッと睨んできたので黙る事にした、怖い、やっぱさっきのドキドキはあれだ、のぼせたんだな。多分死ぬ時もこんな感じだったんだろう、記憶ないから覚えてないけど。風呂上がりなのに冷や汗をかきながらトリーの方だけを見る事にした。
エプロン姿のトリーもいいなぁ〜と思いつつトリーについていく。ダイニングルームらしい扉の前に着くなり微かながらドア越しにいい香りが漂ってくる。
そして開いたドアの向こうで待っていたのはふわっと鼻に飛び込んでくる料理のいい匂いだった。
大きなダイニングテーブルにはスプーンとフォークが四組置かれてあり、空き皿が5個と言ったところだ。テーブルには花とぬいぐるみが一つ置いてあり、その一番奥にモーリスの爺さんがこじんまりと椅子に座っていた。足が短く、なんとも丸っこい爺さんは待ちくたびれたように言った。
「トリーよ、はよせんか、腹が空いてはふむふむできぬというではないか」
それを言うなら戦な。心の中で軽くツッコミを入れる。
あれ?
「はは...ちょっと待ってて、ほら、君達も座って」
「あっ、私たちも手伝います」
「んじゃあ俺は、お言葉に甘えて先に...」
殺意を感じた、敵襲か?いや、きっとアインが後ろで微笑んでるだけだ。命は大切にしましょう。
「なんでもないです...俺も手伝います」
というわけで俺も盛り付けを手伝わされた。
...
「では、いただきます」
盛り付けを終え、みんなが席に着いたのを確認してから、トリーは両手を合わせて言った。アインが隣で、爺さんが向かいになった、どうせならトリーが向かいに来て欲しかった。
妖精たちにも同じ習慣があるみたいだ。まぁ『ふむ』としか言っていない爺さんはともかく。あと誰のでもない一皿だけ、なぜか違うもの盛ってあるけど特に気には留めなかった。
時計を見ると日没後の八時を指していた、夕飯時にしては妥当だ。それから皿の中を覗き込む、妖精だけあってなんか緑がかっているが、光ってるかといえばそうでもなく、ただのシチューみたいだった。
「んじゃ、俺もいただくか」
「キュン」
「ん?なんか言ったか?トリー」
「ううん、何も言ってないけど?」
彼女は首を振り目をパチパチさせながら言った。
「そうか?」
気のせいか、いいや早く食わねぇと冷めてしまう。
「キュン」
まただ。
「アイン?」
「私でもないわよ、あっ、ゲート...」
アインはハッとなり俺の後ろを指差した。
「なんだよ、後ろに何かいる...わっ」
椅子から転げ落ちた俺は頭を強く打つ。
「イテテ...」
机の上のぬいぐるみ(生き物)が動いていたのだ...というかこっちを見ている。
「あはははっ、大丈夫?こめんね、ゲートくんの反応面白すぎてさ、あははっ」「ふむふむふむ、ゲートとやら、わしへの無礼が祟ったようじゃな」
俺は状況のわからないまま、床に座って目を瞠るしかなかった。最悪だ...って言うかジジィふむふむ笑うんじゃねぇ!
あれ?
...
あの不思議な生き物は妖精特有の能力で呼び出せる精霊らしい。俺がそれに気づくのが遅いからトリーはそれを面白がっていた。
みんなが夕飯を食べ終わり、トリーが皿を洗おうと立ち上がった。だがアインが先に立った、俺は謎の罪悪感に襲われる。日頃からの洗脳が効いたのか俺も立ち上がり手伝うことにした。
「あら、別にいいのにこれぐらい、でもありがとうね」
アインは怪訝そうに言う、そしてニッコリと笑って見せた。こういうときだけ彼女の微笑みは笑顔と呼べる
皿も洗い終わり、ついにこの話をする時が来た。四人...と一匹は椅子に座っていた。
(やや一名テーブルに乗っているが)
出されたお茶とその重い話題を前に顔をこわばらせていた。先に静粛を破ったのはアインだった。
「モーリスさん、トリーちゃん、助けてくださり本当に感謝しています。それで、疑うわけではありません、ですけど...妖精というのはどういうものなのか...」
「いいよ、アインちゃんのペースで、う〜ん、そうだね、まずはそこからだね。アインちゃんの話のを聞く限り、君が落ちてきた坂って言うのはもともとなかったんでしょ?」
(坂?なんのことだ?)
「あの時は本当にびっくりして、あれって思ったらもう落ちてた。家の裏にはあんなものはもともとなかったはず…」
「うん、そうだね。それはなぜだかわかる?まぁわからないよね、私もジッちゃんに昔聞いた話なんだけど......」
それからトリーはこの世界の真相を俺たちのに突き出した。今まで生きてきた世界では、到底思想像できないそんな史実を。
・・・
神話にも出てくるようにこの世界は三つの境界層に分かれている。その層ごとに一、二、一と言った順番でまた四つの空間世界に分裂している。
三つの境界層がそれぞれ、天界、下界、魔界と分かれていた。
天界は神のみが生存を許された世界、そして下界では人間と妖精が生き、魔界は悪魔といった魔物が生きている。
明確な上下関係はないけど、その四つの空間世界は本来互いに干渉のし得ないもの。
イメージにすると、綾型に広がる四つの平行世界、その中心には太古より、誰が作ったのかわからない幻想の扉、幻像門という名の扉が存在する。それは四つの世界をつなげる唯一の存在であって、幾千年以来その扉の開門を見たものはいない。
扉が作られたのも、作った者が生きていたのも歴史の記載が始まるより昔だと言う。ただその扉には明確な意図が組まれているらしい。神話によれば扉の開門に用いられる鍵は全部で二つそろえなければならないらしい。
一部失われた伝説ではこう語られている。鍵の欠片と禁断の実が結ばれるとき、その身に半神半鬼が宿り寄る。もし願いを叶えるであらば、かの約束の地まで今赴かん。さすればその身に宿す全てを実らせよう。だが…
とここで神話は途切れた。
読んでくださりありがとうございす。今回のストーリーは展開が早い気もしましたが、読者の皆様は如何でしたか?皆様が読みやすいようにと、文章の行間も少々変えてみました。過去の文章も少しずつ行間を修正しますので、ご了承ください。これからも、筆を片手に、勉強を怠らず、もっといい文章が書けるよう、頑張らせていただきます。これからもよりしくお願いします、次回投稿もお楽しみに〜




