女神、苦悩します(頭痛はいつものことです)
「なんなの…?この荒廃した世界は」
「ここまで自然が失われた管理世界はある意味貴重」
「フロー様が自由な気質の方ですからそれが反映された結果がこれ、ということでしょうか」
三者は驚き、呆れ、感心とどれにでも取れるような曖昧な表情をしている。
ここの世界を創造した女神フローの性格を考えればこうなっていてもおかしくはない、と納得できてしまうが故のものであろう。
「多分そうだと思うけど…。ここから見える限り生物がほとんど見当たらないわね。植物すらないのだから当たり前かもしれないけど」
「異常な進化を遂げた生物がいるかもしれない」
「この環境下で生息できる動植物は他世界でも中々いませんよね…」
「……ていうか流石に世界の果てまでこれ広がっているわけじゃないわよね。信仰する者がいなければ女神の力が衰え世界そのものが形を保てないはずだし」
「マニュアル通りならそう」
「なら頑張って人探しね。正直このまま帰りたい気分だけれどこのままじゃ仕事に支障をきたしたままだものね」
深い溜息を吐きながら結界外へと足を踏み出す。
乾いた大地は生物の繁殖を許さず地平線が広がっているばかりだ。建造物どころかそもそも立体感が感じられない。
しばらくあてもなく歩を進めていたが、日が頂点に達する頃になっても進展はなかった。
「…それにしても人っ子一人見当たらないわね。こんな環境下ではそうそう出歩いているわけもないんでしょうけど」
「日差しがきつい。私にはこの環境は厳しい」
「水を司るアクア様にとっては確かに…。そうでなくても照り付ける光は尋常ではないですね」
二人の言う通り、この世界の太陽は異常な光量を放っていた。
「他の世界の太陽のことは見聞でしか知らないのだけどここまで強力な日の光が降り注ぐ世界はここだけでしょうね。というかこの世界の状態が明らかに報告と異なるのだけれど」
そもそも大多数の管理世界は第一管理世界を模倣して創られている。基本的な環境の構成等は変わらず、それは宇宙単位で模倣されるのが普通だ。
故に本来であれば太陽の光量に差が出ることはないのである。
「フローが自分の顕現に際して何らかの手を加えた可能性は十分にある」
「どのみちフローに会って問いただせばわかることね、無理しない範囲で急ぎましょう」
そう二人に言ったノーティリウスではあるが、半分ほどは自分に言い聞かせているようでもあった。
権能が制限されているとは言え女神であるノーティリウスとアクア、天使のヴェルヌにとっては多少の環境の悪さは問題にならない。
それでも精神は保護のしようがなく、異常な光に晒されているという状況に疲労を覚えるのは当然といえる。
身体に影響がないとはいえ休息を取る必要があるのも事実のため、とにかく現地の人間と接触するのが最優先であった。
「ここでじっとしていても始まらないわね。行きましょう」
ノーティリウスの言葉に二人が頷く。
頭痛を感じながらノーティリウスはぼんやりとフローを連れて帰ったら真っ先に始末書を書かせよう、と現実逃避気味に考えた。
こうして行く先はわからぬまま、3人の荒野の旅が始まる。
不定期更新で遅筆で深く考えていないから設定もあやふやな見切り発車運転ですが、よければお付き合いください。