普通などない 共通1
ウィラネス人たるもの常に高潔であれ、物乞いに施しを与えてはならぬ。
他者から略奪すること、与えられることは卑しいことだ。
相手の尊厳を奪うことなく、清廉に生きよ。
『あなたは不思議ね、ウィラネスの人って冷たいものでしょう?』
『そんなことないさ、私達は一度決めたら最後まで……』
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「大変ダー! 赤点ダー!」
「相変わらず騒々しいですね」
クラール人は学力の高さを重視する種族で、インテリジェンスの塊。
学年ビリ常習犯の私のクラス担任が彼なのは悪い意味での運命だ。
「この可愛いポーズに免じて! えっへへ……」
「……かわい子ぶっても点数はあげませんからね」
相当の馬鹿に見下すより、呆れているのが正しい。
種族の自然的な知力キャパシティーが足りてないのよ。
たとえばヴィサナス人なんて美形しか生まれず顔の良さを重視し、プライドがない種族。
そのわりに上位のクラール人に次いで学年3位から4位にくるものが多い。
遺伝子操作で生まれ、勝ち組確定な人達はずるいと思う!
私みたいな何の特徴もない普通のモブな女生徒は
卒業したら田舎のもっさい男と妥協で結婚なんだろう。
ほーんと、やんなっちゃうわ!
「神様が頭の悪い子を見たくてお造りになったんじゃなくて?」
「なんですってー!? 恵まれたお嬢様にケンカ売られる筋合いないのよ!」
よそへ行け! ヒロイン系女子のとこで盛大に当て馬やってこい!
「あー普通の男と妥協婚はやだよー」
「幼馴染の情緒が不安定すぎる」
学校が終わって村の自宅に帰ってきた。都会なら転送装置があるのだが、ここにはまだ通らない。
「あ、手紙!」
隣国ハニカムランドの女王は2年制度で一般人から公募している。これは候補の予選を通過したかしていないかの通知だ。
「おーい、タイナ」
「おっ村一番のイケメンで私の幼馴染ではないですかー」
「うわっ公衆の面前でそれはやめて! 変な目で見られてるから!」
顔と雰囲気が私好みで村でも女子にモテモテだけど、女の子である。
ちなみに彼女にはボヤンとしたお兄さんがいるけど、系統が違うから好みじゃない。
「これ兄貴の店のあまったシチュー」
「ありがと!」
「で、どんなのがタイプなのよ?」
「影があるイケメンかなー」
「つまりそれ、ウチに当てはまるってこと?
どこが影あるっぽいのかわかんないけど」
「男役の女の人に憧れる現象かな?」
「なるほど、ならさあ……」
ジャポナス領へトレインで来た。魔法禁止のハイテク機器のところらしい。
「すいませーん」
こういうとジャポナスっぽいらしい。
「どうしました?」
「オヤマの方が見たいんです」
歌舞伎と言ったほうがより意味が通じた気もする。
「山ですか?」
「いえ、人間……職業?」
「ああ、それなら向こうの角を曲がるとありますよ」
彼は背中にギターケースを背負っていた。
彼氏にしたらダメな職業の男だって婆ちゃんがいってた。
「あ、ヤバイもう帰らないと」
田舎は電車があまり通らないから、早く戻らないと帰れない。オヤマは今度の休日に改めて行こう。
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今日は休みをとり、女王候補の集まる城へやってきた。
「だから、予選を勝ち進んだ妃候補なんだってば」
でも門番が入れてくれない!