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異人

作者: 七夕ハル

 発光する庵を前に、立ちすくむ人々の群れ。庵は、燃えているわけではない。村の外れにある庵の異常に気づいたのは、1人の村人だった。村人は、夕方頃、家に帰っている途中庵がぼんやり光っているのを見た。驚いた村人は、火事だと思って、大急ぎで火消し組の元へ走った。ところが、火消し組の組長は 即座に断ずる。これは、火ではない、と。では、一体何なのか。村人たちの間で噂は、駆け巡った。ここには、1人の異人が住んでいたはずだ。その異人は、どこへ行ったのか。思い切って入ろうとする者はいなかった。人々は、怪しい光に様々な考えを持つ。ある者は、太陽が庵に落ちた。ある者は、ろうでできた家だと言い出す。その時、一匹の猫が、何食わぬ顔で、庵に入っていく。その様子を注視する村人たち。猫は、入ったきり出てこない。家の入り口より奥は、強い光で、まったく見えない。村人たちは、数人の見回りを残して、家にそれぞれ帰って行く。どんな時も、寝なければいけないのが、人間である。

 そんな状態が、一週間続いた頃、さすがに遠くから来た旅人なども、珍しがって、方々で、光る庵の話をする。話は、どんどん大きくなり、役人が、見回りにやってきたのが、庵が光りだしてから、9日経ってからだった。昼は、目立たない光ということもあって、役人はずかずかと庵に入っていく。役人たちが、見たのは、眠っている異人だった。異人は光り輝いている。あまりの光量のために、輪郭さえぼやけてみえる。役人たちは、男をどうするか、上の者にうかがいを立てに行った。当時の上役は、その異人を連れてこいと言う。だが、この異人どうやっても起きないのだ。触るにも、恐れをなして、役人は声をかけるのみ。とうとう、壷に眠ったまま、入れてしまうことにした。そして、運ぶのだ。きっちりと蓋をしてしまうと、光りは、消えてしまう。やはり、原因は、この異人だったのだ。村人たちは、安心して日常に戻る。その一方で、役人たちは、異人を壷に入れたまま都に運んでいく。

 上役は、壷を見て驚くが、すぐに中身を見ると、この男を、殿様の部屋に連れてくるように命じる。役人たちは、

諫めるが、上役は、殿様の意向だ、の一点張り。とうとう、壷ごと異人は、殿様の部屋に連れて行かれる。夜になると、殿様は、異人を見て、喜ぶ。殿様は、明るいのが、大好きだったのだ。異人は、こうして、眠ったまま、殿様の光りとなりました。

                       終

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