私にチートは効かない
「てぁーっ!」
奴が剣を俺に向かって振り落とす。
だが遅い。
「フン!」
俺はあっさり避けた。
「なっ!」
「驚いてる暇があるのか?」
相手の動きが止まるなら普通攻撃するだろ?
グサッ!
「ブァッ! ! 」
俺は呆然としてたヤツの心臓にナイフを突き立てた。
全く、弱すぎてつまらん。
「はぁっ、なっ、なんで、はぁっはぁ。なんでチートが効かないんだ!?」
「答える義務は無いな」
まだ生きてたのかコイツ。
まあ、ほっといても死ぬがな。
私はチート転生者を刈る天使。
異世界に溢れるチート転生者共を抹殺し元の平和な世界に戻すのが仕事だ。
はぁー、まったく神の戯れにも困ったもんだ。
むやみにチート転生者をあっちこっちの世界に送り込むから世界がメチャクチャになってしまった。
人間に力を与えたら自分の私利私欲に使うに決まってるのがお分かりにならなかったのだろうか?
お陰で五つもの世界が滅び、十もの世界が混沌とした乱世になってしまった。
やはり神へのお仕置きは『禁則事項』や『禁則事項』だけでは足りなかったか?
帰ったら追加で『禁則事項』と『禁則事項』をしとくか。
さて次の転生者を始末してくるか。
~とある世界の魔王の城~
「貴様!? 何処からこの城に入った!?」
「答える義務は私には無いな。それにしても魔王がチート転生者とは少し驚いた」
魔王まで転生者とか本当に末期だな。
「なっ! なぜそれを知ってる! 」
「だから答える義務はない。悪いが今すぐ死んでくれ」
こっちは早く帰って神にお仕置きしないといけないのでな。
「くっ! 魔王を舐めるなよ!」
そう言いながら奴は巨大な火の玉を俺に向かって放った。
「グハハハハッ、余の無限の魔力で放った魔法の威力を見て後悔するんだな!」
なるほど、奴のチートは無限の魔力か。
確かに当たったら熱そうだな、当たればな。
「フン!」
「なん……だと? 余の魔法が消えただと!?」
当たらなければ意味はない。
天使は神の代行者。
ゆえに神から借りた力は天使には無効化出来る。
「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だーっ! 」
ヤケになって火の玉を連続で放ってきたな。
意味がないのにまったく。
「フン! フン!」
「うわーっ! 来るなーっ! ボクに近づくなーっ! 」
ん?奴の口調が変わったな、これが奴の地か?
「諦めろ、これが私の仕事なんでな」
スパッ!
「へっ? 」
間抜けな奴だな、自分の首が切り落とされたことに気付かないとは。
「なっ! 身体が無い?ボクの身体どこいった!?」
やっと気付いたか? チートが無い転生者など、どいつもこいつもクズばかりだな。
「あああああっ! アンタは何者……ヒブシっ!!」
うるさかったから奴の頭を踏み潰して黙らした。
「だから何度もいってるだろ? 私に答える義務は無いと」
まっ、奴には聞こえてないだろうがな。
今頃はチート転生者専用の地獄に魂が送られてる筈だから。
さて次のチート転生を刈るか。
まったく面倒な仕事だな。
やはり神へのお仕置きは当初の十倍にするか?