故郷3
「美味しいな〜京介くんのごはん!ほんと東京でいろいろやってたんですねー…それに昔から頭良かったけど、まさか東大受かるほどだったなんて…今度勉強教えて下さいね?」
「でもほんと京介が戻ってきた意味がいまいちわからんのだが…まぁ嬉しいには変わりないが」
「まぁ…それはおいおい話す。言ってもまだ両親に美緒も東京にいるからたまには帰るけどな。しかしみのりもユーリも料理上手いな?みんなもいろいろ変わったよ」
「京くんに言われたら嬉しいけど…なんか悔しいよね…」
「まったくよ…まさか京ちゃんがここまでハイスペックになってるなんて思わないもの…それなのにごはんはラッピか焼き弁だなんて…」
「ハセストの焼き弁は俺の中で一番だ!自分のために料理するなんてめんどくせえ」
ハセストとは、ハセガワストアの略で箱館でチェーン展開し、目玉は炭火で焼きたての豚肉の焼き鳥にタレが絶品の焼き弁こと焼き鳥弁当を筆頭にパンを作ったりとやりたい放題のご当地コンビニである。
「はぁ…まぁ売り上げに貢献してくれるし、家も近いからうちに来なさいよ?お姉ちゃんもパパもママも喜ぶから」
「ところでみんな明日は入学式ですよね?ってことは早く終わるし授業は来週ですよね?みんなでみのりさんの家で飲みましょ!」
「いいねー!じゃあ夜はいっぱいいっぱいね!ところで京くん。美緒ちゃん元気?身体の方は…」
「だいぶ良くなったよ。まだたまに入院してるけど、昔よりはマシだ。どうしても医療は都会には勝てないからな…転校は美緒の治療のためでもあったんだ…」
京介の義妹の美緒は、昔から心臓が弱かった…たまに倒れたりする程度だったが、転校の少し前容態が急変し悪化した。
「そうだったのか…京介は知らないところでいろいろ抱えてたんだな…」
「昔は俺もガキだったし、家族の問題や病気の事は俺にもどうにも出来んかったからな」
「それより京ちゃんってバンドしてたんだよね?どんなのやってたの?私も音楽好きだし」
「私も気になるかな?京くんのバンド姿見たいなぁ?」
「ああ、最初は趣味だったんだがちょっとインディーズで売れてさ?運が良かったよ。その収入もあって今の俺があるんだが、バンド名は…バニラスカイっていうミクスチャーバンドだよ。そこでギター兼ボーカルをしてた。」
「えっ!?私好きだったんだけど!?凄いカッコ良かったのにいきなり解散して…」
「みのりんに聞かされて私も聞いてた…」
「てか絢たちライブも行きましたよね…」
「まったく…実はもっと前に再会してたとは…」
「まぁ俺も気づかんかったし…もう解散したから時効っしょ?もともと趣味だったし今はみんなそれぞれやってるよ。さぁ!飯飯!」
「「「「はぁー…」」」」
京介の発言に四人はため息を漏らす。しかしその顔は何処か嬉しそうだった。そう、また始まるのだ。彼等の物語が…抜けていたピースがはまり再び動き出した時間。これから彼等はどういう選択を迫られていくのか。その答えは誰にもわからない。