故郷2
「ただいまー!!ってまだ誰もいないか…」
私、朝比奈絢はこの春高校三年生になる。私の幼なじみのお姉さん達やお兄ちゃんにいつも付いて回っていた私は、この春から大学生になる彼女達の後を今でも追いかけている。まぁ昔ほど交流は無くなったし、私にも人並みに友達もいるし…でもあの空間が私は大好きだった…彼がいなくなるまでは。
「いきなりみんなでごはん食べようって急すぎ…ほんとお兄ちゃんは…でも久しぶりにユーリさんやみのりさんにも会える!沙耶お姉ちゃんは旅行中らしいし、2人に…2人にか…準備でもしよっかな…」
そう…2人にだ。お兄ちゃんとユーリさんとみのりさん、そしてみのりさんのお姉さんの沙耶お姉ちゃん。昔からみんなで時を刻んできたけど、その中心には彼がいた…お兄ちゃんの親友で私達の…私の大好きだった人。
「もう8年か…京介くん元気かな…最後に会いたかったなぁ…」
彼は親の都合で東京へと転校した。今思うと仕方の無い事だけど、当時の私は子供で、京介くんにひどい事を言ってしまった。今でもずっと後悔している。あの時から、私達の時は止まったままだ。
「ただいまー!絢ー?帰ってるかぁ?」
「お帰りお兄ちゃんと…ユーリさん!みのりさん!!とその人は…?」
「ったく揃いも揃って同じ反応だなお前らは…絢ちゃん、久しぶり…元気してた?」
えっ…?その呼び方は…
「あんたが変わりすぎなのよ。都会に染まっちゃってさ」
「だよね?私達は悪くないもーん」
ちょっと待って!!
「おう絢。紹介するよ。ってかいらねーか…良く知ってる人だしな」
「久しぶりだよなほんと!浅倉京介!未来大学へ進学のため帰ってきました!っておい!」
その言葉を待たずして私は彼に抱きついていた…ずっと大好きだった人は金髪になっていて…でも面影は何一つ変わってなくて…
「京介くーん…あの時はごめんなさーい!」
「おう京介!絢泣かしてタダで済むと思ってんのかコラ!お詫びに手料理振舞え!」
「さんせーい!京くんの女たらし!」
「まったく東京で何学んだんだか…」
「ったくお前ら覚えとけよ。絢ちゃんただいま。あの時は俺の方こそごめんな?」
「うん…おかえりなさい…京介くん…」
私の頭を撫でるその手そして、見上げたその顔は。
私の大好きだった、浅倉京介その人だった。