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29.

 駆け寄り根元まで移動して二連撃を加える。

 ヒールプラントは動かなくなった。


「倒したのか?」

「だにゃ、アクシスの援護にいくにゃ」

「アキラさん、長期戦なのでこれを飲んでください」

「ありがとー」


 回復薬か、俺もほしいが自動回復に任せるとしよう。


「アクシス交代だ。盾を!」

「了解! 任せたぞ」


 ケルベロスに駆け寄りダーインスレイフを突き刺し気を引き、すぐさまアクシスから盾を受け取る。


「こっちだわんこ」


 やはり盾があると落ち着くな、どんな状況でも無敵に感じる。

 深い層で敵が複数いると厳しいが、一体だけなら簡単だ。

 周りに援護してくれる人もいる。


 MP回復を待ちつつケルベロスの攻撃を防ぐ。

 その間にガルカス、ミーシャは側面に移動。アクシスは武器を取り出している。

 体勢は立て直った。


「アキラ! 攻撃しろ、回復は自分でなんとかする」

「はいよー、じゃあ任せるよ。ホーリーアロー!」


 光の矢がケルベロスに命中する。

 外傷はないが少し仰け反る、ダメージは通っているようだ。

 その隙に一斉攻撃を仕掛ける。


「ドレインブロウにゃあああ!」

「タウントスラッシュ!」

「もう一丁! ホーリーアロー!」

「タウントスラッシュ!」


 みんな格好いいな、俺そういう技ないんだよな。

 決め技……ほしいな。


 こちらが一斉にスキルを繰り出したあと、ケルベロスは咆哮する。

 気迫で押しつぶされそうなくらいすさまじい。


「な、なんだ」

「なにこれ……」

「結晶が集まってるにゃ」

「一体どういうことだ」

「まずいな」


 ケルベロスの咆哮とともに辺りから結晶が現れモンスターが構築される。

 その数四体。


 サーチでレベルを確認する。


ウォルフLV23

ウォルフLV22

ウォルフLV22

ウォルフLV22


 ケルベロスの半分以下か、あの程度なら周りに任せられる。

 とにかくこのことを伝えるべきだ。


「先にあいつらの処理をしろ、出血されたらアキラが大変になる。お前たちでもどうにかなるはずだ」

「分かったにゃ」

「了解」


 俺はケルベロスを相手にするだけだ。

 攻撃する隙はあるが、相手の反応も早い。ヘルウォルフと同じぐらいだ。

 頭が三つある分、噛み付く攻撃の数もその頭数だけで、とても面倒である。斬り落とせないものか。


 ウォルフの処理が終わったようだ。

 なんとか隙を見つつ、二、三回斬り付けることはできたが、まだまだ元気だな。

 しかしもう大体は勝利確定みたいなところもあるから、このままやれば倒せるだろう。

 既にパターン化されてきている。


 MPも回復したことで大防御からのシールドバッシュが使える。

 ケルベロスにそれらを使い仰け反らせ、アキラを除いて全員で一斉攻撃をする。

 その後に咆哮をしてくるが、タイミングを合わせてアキラの魔法攻撃でもう一度仰け反らし、咆哮を止めてウォルフの召喚を防ぐ。


 結局その後の咆哮は止められずにウォルフを召喚されるが、俺がケルベロスの攻撃に耐えつつ周りがウォルフを処理する。

 シールドバッシュから一斉攻撃をして、ホーリーアローで咆哮を止めつつまた一斉攻撃をする。

 その後もう一度咆哮されるがこれは止められない。どちらもスキルが打てるタイミングではなかったからだ。

 ウォルフが召喚されるが冷静の対処する。

 それを三往復して、ようやくケルベロスを倒す。


「ずいぶんと手間取らせやがって」

「ボスが二体いたんだし仕方がないよ」

「そうだにゃ、よくやったにゃ」

「あんなの初めてだ」

「うむ、二体いるのは初めてだな」


 ケルベロスが結晶化するのを待ちつつ、周りの落ちているドロップアイテムを拾う。

 ヒールプラントからは葉を落とした、これで二枚目か。

 ボス級アイテムが二つ、さらにケルベロスのカードを一枚。

 召還されたはウォルフを十数体倒したが、ドロップアイテムは金貨一枚すらなかった。

 なにか特別なのだろうか。


 エスケープゴート、テイパーからのドロップアイテムは中金貨のみ、合計で八枚。

 カードを売れば黒字になるのだ、なんら問題もない。


「よし、ではヒールプラントの葉は一つ貰っていくぞ。カードの換金はどうする?」

「俺がしてこよう。では戻るか」

「はーい、このまま戻っちゃうよ。ミスティックゲート!」


 転移門を潜り村に戻る。

 カードが出たからダンジョンは討伐したはずだ。

 奥に進む道も、階段もなかったからな。

 もうここに用はなくなった。

 焼肉に用意した食料以外、荷馬車に積み込んだ余った食料は商人に売る。


 テントに戻り、焼肉パーティだ。


「それじゃあ改めて、ダンジョン討伐お疲れさん」

「お疲れ様にゃ」

「お疲れ」

「お疲れ様ー」

「お疲れ」


 肉、野菜を順々に鉄板で焼いていく。


「ねー、コウはこれからどうするの?」


 アキラが尋ねてくる。

 これからか、探しに行くといっても情報がないからな。

 闇雲に探しても資金が湯水のごとく減りそうだ。


 アキラを見つけられたのは運がよかった。それにあの噂好きの冒険者と浴衣の魅力のお蔭だ。


「探しに行きたいが情報が少ない、だから各都を見て回ろうかと思う」

「そっかー、ガルカスは無事騎士になれたから都の騎士に仕えるんだよね。そういう約束だったし。それで私は今フリーになったわけ」

「そうなのか」

「世話になったな。だが心配するな、お前たちのことは決して喋らん。アキラさんもありがとうございます」


 約束か、騎士になるまでの話だったのかな。

 ガルカスのことだし俺たちの情報は伏せてくれると思うが、少しは心配だ。

 まあお堅いやつだし大丈夫だとは思うが。


 それにアキラがフリーってことか、酒場が荒れそうだな。


「そこで提案なんだけど、私もついていっていい?」


 お前なに言ってるのだ、俺の至福の時間を邪魔する気か?

 ストレスで胃に穴を空けるつもりだな?


「シルフィーで待ってろ」

「あ、やっぱり駄目? でも一人じゃ暇なんだよね」

「酒場にいけば構ってもらえるだろ。それに俺がゆっくりと寝れん」

「それならご心配なく、私は空気は読めるからね」


 どの口がいってやがる。自覚なしかこの野郎。


「別に私は構わないにゃ」

「俺も構わんぞ」


 君たちが構わなくても俺が構うのだ、駄目なのだ。


 ゲームならばクラン、ギルドの部屋を作ったりして、居場所把握とかはできたが、この世界には既にギルドは存在している。

 そういった集まりの名称を作ることはできなさそうだ。

 それこそ名乗りたいのなら自称するしかない。


 世話役のガルカスが騎士になり、別れることになったのはわかった。

 そのことを分かっていて、アキラは一人でもシルフィーに残るつもりだったのだろう。

 しかしなぜ心変わりをした、なぜついてこようとした。


 俺はミーシャたちを可愛がりたいのだ。絶対について来させんぞ。


 一応集合場所をシルフィーに指定したが、ガルカスがいないとなると、アキラがどこにいくか分かったものじゃない。

 大人しくはしてくれると思うが、安心はできない。

 安心できる状況は知っているやつが側にいることなのだが、どうするか。


 集まれる場所か。

 ここの酒場にはできれば行きたくないからな。


 都の半分以上は住宅街だし、家とか買えそうだよな。

 買えるなら買っておいてそこを拠点にできそうではあるが。


「うーむ……家って買えるのかな」

「ギルド本部で土地は管理されているぞ。そこで建てられて売れてないものなら買えるだろう」

「値段は分かるか?」

「そんなに掛からないだろう。ダンジョンを討伐すれば買える程度だ」


 そうなると大金貨数枚か、いろいろ買い物していると奴隷購入には遠のきそうだ。

 さらに言えば家をどこで買うかだろう。


 一番関わりがあるウンディーで家を買いたいと思っているがアキラはどうだろう。


「そういえば集まる場所は結局どうするのだ? シルフィーにするのか?」

「コウはどっちがいい?」

「俺はウンディーだな。あっちのが住みやすいし、なにより酒場の賑わい方が好きだ」

「へー、ウンディーか。じゃあそっちに行こう」


 簡単に移動することを決めるのだな。でもガルカスはこっちの騎士に仕えるんじゃないのか?


「ガルカスはシルフィーの騎士になるんだろ?」

「アキラさんがいるところで仕えるつもりだ。シルフィーに留まるのならシルフィーだったが、ウンディーに行くのならついていくぞ」


 腰巾着は変わらずか。それなら好都合だな。

 ならばウンディーでいいだろう。


 夕食の焼肉を食べ終えて、シルフィーの転移門広場に移動、ギルド本部でケルベロスのカードを換金する。

 大金貨三十五枚手に入った。

 それらを二等分し、俺が十八枚、アキラたちは十七枚。

 食料資金の提供により端数は貰っていく。


 現在の大金貨は四十四枚、中金貨は百五枚、小金貨は四十七枚。

 いい稼ぎっぷりだ。

 ミーシャたちの装備強化資金に回せるだろう。

 それにジルドからも奴隷を買う約束をしているから、その分も貯めなければならない。

 約束を破棄すればいいとも考えたが、この世界の事情に詳しくない現状、約束を破るのはまずいだろう。なにがまずいとはいえないが、今後取引する際に信用がなくなるのは避けるべきだ。


 上玉で大金貨百枚ってどんな富豪が買うのだ。

 多分短期間ではあるが三つもダンジョンを討伐しているというのに五十枚も貯まらない。

 アクシスを奴隷にする際、ジルドが言っていた稼いでいるなのセリフ。

 それはもっと稼ぐ方法があるということに違いないだろう。


 今はダンジョンを探して討伐し、カードを換金する道しか見えない。


「今日はもう遅いから一度宿に泊まってから、明日ウンディーに行くか」

「そうしよっか」


 宿に移動して、店主にダブルベッドで三人の泊まりはいいかと聞いたところ大丈夫だった。

 その代わり値段は中金貨四枚だったが、構わない。ベッドで一緒に寝れるなら安いぐらいだ。


 アキラたちと別れ、部屋に入る。

 ダブルベッドの大きさは三人ぐらいなら問題ない。

 もう一人入れそうなくらい大きい。


「ミーシャもアクシスもお疲れさん、明日からはしばらく戦闘もなくゆっくり過ごすはずだ」

「お疲れ様にゃー。久々のベッドだにゃ」

「お疲れだ。ベッドか、何年ぶりだろうか」


 ベッドだけで驚くなかれ、ウンディーにつけば温泉だぞ。

 ミーシャとアクシスは鎧を脱ぎ、寝巻きに着替える。

 ミーシャは恥らうことなく素っ裸になり甚平を着る、一方アクシスは体を隠しつつネグリジェを着る。


 ミーシャよ、アクシスの反応が女としては正しいと思うんだ。

 いや、生着替えが見られただけで俺は満足しているけどさ。


「もう寝るか?」

「まだいいにゃ、それより本当にこれからどうするにゃ?」

「話を聞く限り仲間を探しに行くんだろ?」

「そうなんだけどな」


 一度ウンディーに行ってから決めたほうがいいだろう。


「それはウンディーについてからだ。戦闘がなくてゆっくり過ごせるが、やることは多いだろう」


 家を買うとすると家具買ったり、掃除もあるだろう。

 考えるより起こったことを対処していこう。


「じゃあさっさと寝てウンディーにいくにゃ」

「今日の疲れを取るとしよう」

「そうだな。寝るか」


 ベッドのやわらかさに、ミーシャとアクシスの肌のやわらかさがとてもよい。

 これはテントよりもよく寝れそうだ。


 翌朝、朝の扉を叩く音もない、いい目覚めだ。

 二人に挨拶をしてウンディーにいく準備をする。

 ミーシャはさらしを巻いて甚平で、アクシスは鉄の鎧を着る。


「おはようー、もう起きてる?」

「準備もできてるぞ」

「早いね。ウンディーどうやって向かう? 私は行ったことないからゲート使えないよ」

「それなら大丈夫だ、時間も短縮して向かうぞ。この部屋にガルカスを呼んでくれ」


 全員を部屋に集める。


「なにか話か?」

「いや、ここで移動する。転移門では時間がかかるから少しでも短縮するためだ」

「なるほどな」


 理解が早くて助かる。

 ワープを念じ黒き森のダンジョンの入り口までワープをして、フィールドウォークスルーでシルフィーの転移門に向かう。

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