表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/38

02.初戦闘

 朝になったのだろうか。

 まだ目覚ましは鳴っていないが朝日が眩しい。

 夢から覚めたんだろうな。


 え、朝日?


 確かカーテンは締め切ってるから日は入らないはず。

 眠気でまぶたが重たいが、目を開け辺りを見渡す。


 森の中だ。


「どこだ……ここ」


 声が漏れる。

 自分と辺りを見渡す。

 俺が着ている服は甚平だった。寝ていたときの格好だな。

 だがそんなことはこの状況の説明にならない。

 そして地面に転がってる剣と盾についても。

 10秒ぐらい思考が停止する、目が覚めてくる。


「はあ……」


 ゆっくりと大きくため息をし、頭を抱える。


「……いったいどうなってるんだ。なんなんだよこれ」


 小声で独り言を呟く。

 ベッドで寝ていたのに今は森の中にいる。

 そりゃ混乱するだろう。


 このままでは埒が明かないので状況の整理を始める。


 まず地面に転がっているこの剣と盾だ。これは多分あの設定のものだろう。

 だとしたらあの設定したゲームの中だと考えていいな。


 落ち着いてきた。

 あまり驚きはしない。

 異世界に来てしまった、なんて物語は現実に沢山あった。


 それに、もし自分が異世界に行けたら、と頭の中でシミュレーションは何度かしたしな。

 え、普通しないって。


 まあそれは措いておこう。

 

 とにかく、森の中なわけでここがゲームの中だと考えれば、モンスターが出るかもしれない。

 無闇に動き回らず状況を整理してから進んでいったほうがいいな。


 そうだ、ここに来る前に設定したことでもやってみるか。


 試しにタレントポイント再設定だ。

 頭の中でタレントポイント再設定と念じると、設定した内容が頭の中に出てくる。

 周りにはその設定は見えない。

 自分の頭の中で設定が繰り広げられている。


 この設定が浮かんでくるってことはやっぱりゲームの世界か、あの世界とは別の世界と考えていい。

 それに夢っぽくなく現実に近い、バーチャルリアリティともまったく別物だ。

 地面も、周りの木もバーチャルリアリティの荒々しさもなく現実のように鮮明に写っている。

 それに転がってる剣と盾もあまりいいわけが出来ない。


 やっぱり異世界か。


 そして気になったことがあった。

 ポイントが一つ余っていたんだ。

 あのとき全部使ったはずなんだけどな。


 しかし一ポイントか、どうしよう。

 そういえば限定スキルというのがあったな、それに振ってみるか。

 テレポート、サーチ、ヘイスト、ヒール、いろいろある。


 テレポートは瞬間移動スキルだろうから今は必要ないか。


 サーチは詳細を見るスキルみたいなものだろうな。

 ゲームみたいにテキストで説明してくれるわけでもなさそうだしな。

 タレントポイントみたく頭の中に浮かび上がるんだろう。


 しかしゲームの知識ってこういうとき助かるもんだな。

 これはこういうものだったなと覚えている。

 実際こういう状況になるはずないけどね。


 サーチを取ることにする。


 一ポイント消費する。残りなし。


 自分にサーチと念じてみた。


古鷹香 年齢19

職業:放浪者LV1

甚平 スリッパ 髪留め


 へー、こうやって頭の中に浮かんでくるのか。


 古鷹香はあの世界の俺の名前だ。

 読みはコタカコウだ。

 キャラクター作成もなかったし、名前も年齢もあの世界と一緒ということか。


 着ている服が装備に入るのは分かる、スリッパも、まあ装備なのかな。

 でも髪留めも装備に入るのか。

 アクセサリーみたいな感じだろう。


 なぜ髪留めがあるのかというと、俺は髪は切るのが面倒だから一年ぐらい経たないと切らないことにしている。

 だから今の髪の長さは肩ほどまである。いつもは後ろを縛っているが今は手首についている。

 それに、仕事では髪が長かろうが短かろうが関係なかったから切る必要がなかったのもある。

 別に伸ばしているわけではない。

 本当に面倒なだけだ。それに金もかかる。


 髪留めは寝るときに手首につけていたから持ってきたんだろう。

 スリッパは寝るときは足元にあったはずだけど、いつの間にか履いてここにいた。


 さすがに身ぐるみ剥がされて全裸で森の中に放り出されても困るけどさ。

 それにこの辺小石も多いから素足じゃなくて本当によかった。


 それで、このサーチは限定スキルだ、タレントポイント設定のできる俺しか使えないんだろうな。

 そしてこの放浪者が今の職業か。


 それにしても、あの性別変化は危なかったな。

 髪の長さ、多分顔もあの世界のままだったが。

 性別変化したときどう変わるのか。

 振らなくてよかった。もちろん振るつもりもなかったけどね。


 そういえば性別変更に固定は書いてなかったからいつでも変えられるのだろう。

 いや、変えないけどね。

 変えないよ。

 でも他人の性別とか変えられないかな。

 

 まあいい、それは措いといてだ。


 地面に転がっている剣と盾を手に取る。

 剣と盾にサーチを念じる。


剣 ダーインスレイフ 

効果:STR100増加 HP吸収 出血

スキル:HPドレイン


盾 イージスの盾

効果:DEF100増加

スキル:大防御


 ふむ、能力値はSTR、DEFなのか。

 剣と盾を見る限りだとSTRは攻撃力、DEFは防御力だな。


 でも確かこれ、一ポイントで取れたやつだったよね。

 しかもそれで能力値が百も増えるって、いいのか、こんな能力値で。

 そうなるとほかの武器、防具もこの能力値ぐらいあると考えていい。


 まあでもほかの設定で数少ない三十五ポイント中の三十ポイントも取られているわけだしな。

 どちらにせよチート級のアイテムなのは確かだろう。再設定できる時点で何でもありなんだろうな。


 あとなにが試していない。

 アビリティポイント再設定と職業変更か。


 アビリティポイント再設定を念じる。


STR 6+100

DEF 6+100

INT 6

VIT 6


 なるほどな、この世界はこの四つのステータスで出来ているのか。

 やはりゲームの知識は役に立つ、ある程度は理解できるぞ。


 予想通りでSTRは攻撃力、DEFは防御力。

 INTは多分魔法力かな、最後のVITは体力だろうか。


 それで再設定なんだから勿論振り分けも自由ってことだろうな。

 どうだろう、オールリセットとかできるかな。

 アビリティポイントオールリセットと念じる。


STR 1+100

DEF 1+100

INT 1

VIT 1

残り二十ポイント


 お、できた。

 なんか楽しくなってきた。いや、まだ楽しいことは起きていないんだけどね。

 なんていうのかな、設定が出来て、知らない知識を得るのが楽しいっていうんだろうか。こういうの。

 プラスの部分は装備の能力値だから弄れないみたいだ。


 今魔法は使えないだろうし、INTは一のままでいいだろう。

 STRもDEFも武器、防具の補正で多いからな。

 そうなると残りはVITか。


 あ、そういえば武器にHP吸収とか書いてあったけどHPの表示はどこにもなかったな。

 INTがあるから魔法もあるのだろうけど、MPの表示もない。

 HP、MPは存在しないのか。ゲームの世界なのに。

 どこかに表示されてないかな。


 いろいろ念じてみる。

 HP、HP表示、HP表記、残りHP、HPバー、HPゲージ、HPパラメータ。

 だめだ、でねえ。

 やっぱりHPは存在しないのか。

 ここまで設定やら能力値やら出るのにHPは出ないのか。


 まあ不満をいったところで解消されるわけでもない。

 こういう世界だと諦めるしかないだろうな、前の世界と同じことだ。


 それでアビリティの話に戻るけど、HPが存在しないとなるとVITに全部振ってよさそうだな。

 他のゲームでもVITはHP上昇だったりした。ここ世界もそうだと思っていいだろうし、なによりここでの死でどうなるのか、まだ分かっていない。

 DEFは足りているからHPが上がる可能性に掛けてVITに振ろう。

 STRとDEFはチート染みた装備のおかげで問題はない。


STR 1+100

DEF 1+100

INT 1

VIT 21

 

 設定完了っと。

 次に職業変更だな。


第一職業:放浪者LV1 第二職業:なし

 


 んー、これだけなのか。何も設定できないな。

 第二があるってことは複数セットできるのだろう。

 それに第一職業の下に空白を感じる。感じるだけなんだけどなにもない。気になるな。

 ほかに職業がないからなのだろうか。

 今は放浪者だし。

 進んでいけば分かるだろうな。


 よし、ある程度この世界のシステムが分かってきたぞ。

 タレントポイントがある限りはかなり楽ができそうだ。


 さて、次はこの森からどこにいくかだな。


 ここは森だ。あたり一面、道もない森の中だ。

 幸い川の音が聞こえている。川が近くにあるんだろうな。

 それなら川に沿って歩いていこう。

 川沿いに村か街があるのはよくある話だ。


 ほかの行く場所もないし、分からない。川を沿ってくことにする。

 実際ここで立ち止まってても何も始まらんしな。


 川沿いを歩きながら、ふと考える。


 そういえば誘ってきた友人は、この世界に来ているんだろうか。

 返事がなかったのは、この世界に来てしまって返事ができなかったから、と考えてもよさそうだけど。

 そうなると、向こうの世界にいた俺の存在は今どうなっているんだ。


 存在が消えている?

 記憶から消されている?


 現実味のない不思議なことが起こったしな。

 あのディスプレイ以外白黒の夢とか、ブラックアウトからの、URLが消えていたりとか。


 例えばこの世界に来てしまった人は、向こうの世界では存在が消されていると過程しよう。

 URLを載せた人の記憶は、URLが載せられた人だけが覚えている。

 これは自分が体験したことだし、そしてほかの連中はそいつのことを忘れていた。自分だけ知っている。

 このことは覆すことは出来ない。


 だとすると今の自分の存在はURLを載せた友人の二人だけしか知らない、ということになるだろう。


 これがすべて合ってるとすると、URLを載せた友人はこの世界に来ていると考えられる。

 ほかの過程は思いつかないし、自分もこの世界に来てしまったわけだからな。


 URLは過去ログに残り続ける限りそのままだろう、だとすると友人二人がこっちに来るのも時間の問題か。

 もし過去ログが消えれば自分もまたあの世界から存在が消える、ということだろうな。


 それにもしあいつ等がこの世界に来てしまっても大丈夫だろう。

 あいつ等もゲーマーだし、どこかで生き延びることはできるだろう。

 それにここに来る前にあの設定をするだろうしな。

 でもあいつ等、脳みそ筋肉だらけだからな、設定とか慎重にやる知性あったっけ。


 まあいいか、それにこっちにはサーチもある。名前は向こうの世界と一緒だからどこかで会えるはずだ。

 すべて合ってればの話だけどな、もしあいつ等に会えたら気は楽になりそうだ。誰もいないこの世界で生きていけるか不安ではあるからな。


 などと考えつつ三十分ぐらい歩いた。

 なにもない。

 歩けど歩けど風景が変わることはなかった。

 くそ、どうなってんだ。

 ゲームならこんな長い時間移動しないだろ、せいぜい三十秒程度で村が見えてもいいはずだ。

 オープンワールドでも三分程度で次にいけるだろ。

 それに剣と盾を持ちながら歩くのは邪魔だ。


 またしばらく歩くと、目の前にキノコ染みた化け物がいた。

 サーチを念じる。


スポア LV1


 なるほど、キノコだからスポアね。

 初モンスターだ。

 いいね、ワクワクしてくる。

 この最強装備で無双してやろう。

 いや、最強かは知らんけどね。


 ダーインスレイフを右に、イージスの盾を左に持って構える。


 スポアは此方に気がついていないのか、目の前に来ても反応がない。


 なんだこいつ。

 剣の先で突いてみる。


 それに反応したのかこちらに向かってきて体当たりしてきた。

 盾でなんとか受け止める。


 うおっと、以外と重い体当たりだな。


 スポアはもう一度を体当たりをしてくる。

 盾で防ぐ。


 なるほど、こいつはノンアクティブモンスターってところか。攻撃しなければ攻撃してこない草食系ってやつだな。


 体当たりしてくるスポアをかわし、ダーインスレイフを振り下ろす。

 スパっと切れスポアは地面に転がる。

 一撃だ。


 数秒したらスポアは結晶化し、結晶は空を舞い消滅する。

 結晶は綺麗なのにモンスターはとても醜かったな。


 近くにもう一体いたから今度は先制攻撃をする。斬るのではなく突いて倒す。

 スポアは地面に倒れ、結晶化し、結晶が舞い消滅する。

 両方とも一撃だ。


 自分にサーチを念じる。


古鷹香 年齢19

職業:放浪者LV1

ダーインスレイフ 甚平 イージスの盾 髪留め スリッパ


 まだLV1か、さすがに二体だけだと上がらないか。

 でも経験値四倍になってるんだっけ、今ので八匹分だろ、それで駄目なら何体倒さなくちゃならんのだ。

 体当たりは重かったが、痛みはない、多分DEFが上がっているからだろうな。

 そして一撃で倒せたのも装備のお蔭だろう。


 結晶化したモンスターからは金も戦利品もドロップしなかった。

 そこまで都合のいい世界でもないのか。


 だとするとこの世界でどうやって生活するのか。

 村があれば宿もあるだろう。でも金がなかったら泊まることもできないしな。

 どの世界でも金はいるだろうし、それが取れないってことは、辛いな。

 腹も減ってきたし、ため息が出る。

 思った以上に異世界も不便だと感じた。


 どうした、夢にまで見た異世界だぞ、泣けよ。


 ああ、泣きたいよ。まさかいけるとは思ってなかった異世界だ。

 下らない世界からもおさらばできたしな。

 でもさっきの戦いで生きていけるか不安になった。

 稼ぎが分からないからな。

 元の世界なら貯金があったから生活できるけど、その貯金もすべて無意味になったな、畜生。

 今更あの世界に戻る気はないけどな、この世界で生きていってやる。


 その前に街か村を探そうな。


 あ、遠くのほうに犬みたいなのがいる。野良犬だろうか。

 目があった、こっちに向かってくる。

 動物もいるんだな。

 実家でも犬を飼っていたしな。懐かしい。


 近づいてくる。近くで見ると目つきの悪い犬モドキだった。

 外見は狼に近いが犬と一緒だろう。

 久しぶりの動物だ。

 よし、お手でもさせてみるか。

 その場で屈み、剣を地面に置き、手を差し出す。


「お手」

「ガウッ」


 いてえ、手を噛まれた。躾がなってねえな。

 それにしてもギャグかよ。お手して噛まれるなんて、いや、そもそも野良犬だしな。

 いきなりお手なんて無理だろう。

 ハードルが高かったかな。


 噛まれた手から出血していた。血がポタポタと地面に流れ落ちる。

 あ、でも痛みは感じないよ。DEFが効いているのだろう。

 いたいと言ったのは反射的だ。よくあるよね。


 あー、どうすっかなこれ。この世界には消毒液とかないだろうし、このまま血を流し続けるのも危ない人みたいだし、どうやって止めよう。

 そういえば近くに川があったな、そこで血を流すか。病原菌も入ったら大変だ。


 っと、その前にこの野良犬どうするか。

 盾で身構え、剣を持ち、サーチを念じる。


ウォルフ LV3


 げっ、こいつもモンスターかよ。外見が犬に近いから倒すのも気が引けるな。


 それにスポアに比べて、素早い。

 どうやって倒すか。

 出血したところも気になる、早めにけりを付けておきたい。


 ウォルフは横に回りこんで体当たりをしてくる。

 盾で防ぎ、怯んだところをダーインスレイフで斬り込む。


 外した、いや、少し掠っただけだ。


 剣で掠ったところから出血している。

 ウォルフは出血したまま、遠吠えをした。

 そしてその場に倒れる。

 数秒後結晶化し、その場に毛皮を残した。

 毛皮にサーチを念じる。


 ウォルフの毛皮


 なるほど、ドロップアイテムはこうやって出てくるのね。

 スポアを倒してもドロップアイテムはなかったけど、ただ運がなかっただけだろう。


 そして気がついたことがもう二つある。

 さっきまで出血していたのに止まっている。傷口もなくなっている。HP吸収は傷を治すことができる、ということだろう。

 それとダーインスレイフの効果の一つ、出血も見ることができた。

 剣の先が掠っただけだけどね。


 ただスキルのHPドレインと効果のHP吸収は同時発動なのかは謎だ。

 同じ恩恵だろうから効果が重複しているのかよく分からない。

 HPもないから回復量を測定するのも難しいだろう。


 出血は文字通り血が出るということだった。

 持続ダメージ効果だろう。

 最後はなにもしてないのに倒れたからな。


 それにただの剣では出血はしないだろう。出血するとしたら、この出血の効果は意味がなくなる。

 俺がウォルフに噛まれたときの出血もそうだろう。

 ウォルフの攻撃は二種類ある。噛み付きと体当たり。噛み付きには出血効果がある。

 最後の遠吠えは気にしなくていいだろう。

 そしてスポアは体当たりだけ、と。

 大事な情報だ。どこかにメモしたいところだ。


 出血の効果はHPが分からない状況からするとかなり注意するべき点だろうな。


 ウォルフの毛皮を手に取る。重さは1kgといったところだ。

 毛皮を肩に乗せ、川の水で剣の取っ手に付いた自分の血を洗い落とす。


 再び川沿いを歩く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ